『男子高校生の日常 1巻 (デジタル版ガンガンコミックスONLINE)』レビュー
著者: 山内泰延
出版社: スクウェア・エニックス
¥700 Kindle価格
著者: 山内泰延
出版社: スクウェア・エニックス
¥700 Kindle価格
『男子高校生の日常』1巻は、男子校に通う高校生たちのどうでもいい会話、見栄、悪ふざけを全力で描くギャグ漫画です。大事件は起きません。魔法も超能力もありません。あるのは、放課後の教室、河原、文化祭準備、通学路といったごくありふれた場所と、そこで無駄にテンションだけ高い男子たちのやり取りです。
でも、その「何も起きなさ」が本作の武器になっています。マントを羽織って中二病ごっこをしたり、妹のスカートを見つけてどう扱うかで無駄に揉めたり、女子との会話を脳内で盛大にシミュレーションしたり。どれも本質的にはくだらないのに、本人たちは真剣だから面白い。高校時代の時間の無駄遣いそのものを笑いに変えた作品です。
この1巻を読んでいると、男子高校生の時間には「何の役にも立たない会話」に全力を出せる贅沢があったのだと気づかされます。モテるためでも、成績を上げるためでもなく、ただ今その場が面白いから続ける会話。その無意味さを真正面から肯定しているところが、この漫画のいちばん気持ちいい部分です。
しかも、そのくだらなさは決して雑に描かれていません。ボケの置き方、ツッコミの間、話が脱線するタイミングまでかなり計算されていて、会話劇として精度が高い。だから、読む側は「高校生ってしょうもないな」と笑いながら、同時に「このテンポはなかなか作れない」と感心もします。何度読んでも別の場面でまた笑える、再読向きの1巻です。
『日常』のようなシュール系ギャグや、『あそびあそばせ』のようなテンション高めの会話劇が好きな人は相性がいいと思います。ただ、本作はそれらよりも「実際にいそうな男子高校生のしょうもなさ」に寄せているのが特徴です。世界が変だから笑うというより、普通の世界で普通の男子が無駄に盛り上がるから笑える。
そのため、派手な設定ギャグより、会話の間やノリの持続で笑わせる作品が好きな人に向いています。大声で笑う回もあれば、じわじわ来る回もあるバランスが魅力です。
しかも、くだらなさの質が回ごとに少し違うので飽きません。純粋にボケ倒す回もあれば、妙に詩的な空気を出してから落とす回もある。短編の積み重ねなのに単調にならず、「次はどんな角度で無駄なことをするのか」を期待して読めるのが1巻の強さです。
1巻を読むと、「高校生の会話って、なんであんなにどうでもいいことを全力で面白がれたんだろう」と思い出します。本作は、そのどうでもよさを切り捨てず、むしろ宝物みたいに拾って笑いへ変えている。だから単なるギャグ漫画としてだけでなく、青春の無駄な時間を描く作品としても妙に味わいがあります。
読み終わる頃には、派手な名場面より、「なんであの会話あんなに面白かったんだろう」という変な余韻が残ります。笑いの質としては大ネタより小ネタの積み重ねですが、それがむしろ強い。何度でも少しずつ読み返したくなる1巻です。
男子校という閉じた空間だからこその変な連帯感や、外から見れば一瞬で終わる出来事を延々と膨らませる感覚もよく出ています。肩の力を抜いて読めるのに、会話劇としての技術は高い。気分転換に読む1冊としてかなり優秀です。
笑いの方向が古びにくく、今読み返してもちゃんとくだらなくて面白いところも、この作品の価値だと思います。