『TOEICリスニング満点コ-チが教える 3ヶ月で英語耳を作るシャド-イング 改訂版』レビュー
著者: 谷口 恵子
出版社: プチ・レトル
¥1,782 Kindle価格
著者: 谷口 恵子
出版社: プチ・レトル
¥1,782 Kindle価格
『TOEICリスニング満点コーチが教える 3ヶ月で英語耳を作るシャドーイング 改訂版』は、英語を聞き流しているのに聞き取れるようにならない人へ向けて、原因の切り分けから練習手順までを一冊で組み立てた実践書です。版元ドットコムの書誌では、著者は英語学習コーチの谷口恵子さん、出版社はプチ・レトル。旧版を土台にしつつ、音声ダウンロードのQRコード、教材紹介の拡充、発音の書き込み例の追加など、独学しやすい形へ更新された改訂版です。
この本の軸は、いきなりシャドーイングだけを押しつけないことです。著者は、リスニングが苦手な人ほど、まず何が聞き取れないのかを分解しないかぎり伸びにくいと考えています。そのうえで、1日30分、3カ月を目安に、リスニング、ディクテーション、黙読理解、音読、リピーティング、オーバーラッピング、シャドーイングの7段階を順に踏ませていきます。単なる「練習量の根性論」ではなく、聞こえない理由に応じて回路を作り直していく本です。
第1章「なぜシャドーイングでこんなにも英語が上達するのか」では、英語学習の全体像と、なぜリスニングが英語力全体の基盤になるのかが整理されます。ここで印象に残るのは、「意識的なトレーニングなしにリスニング力は上がらない」とかなり明確に言い切っている点です。ただ英語を浴びるだけでは足りず、音を聞き分け、保持し、意味に結びつける工程を意識的に鍛える必要がある。本書はその前提を、初心者にも分かる言葉で置いてくれます。
第2章は本書の中心で、タニケイ式シャドーイングの7ステップが並びます。最初に音声を聞いて全体像をつかみ、次にディクテーションで抜ける音を可視化し、スクリプトを黙読して意味を確認し、音読、リピーティング、オーバーラッピングを経て、最後にシャドーイングへ進む。この順番が大事で、著者は最終段階だけを練習しても伸びにくいと示します。1日30分×7日間の実践スケジュールや、音声再生アプリの使い方、Q&Aまで入っているので、独学で詰まりやすい箇所にも手当てがあります。
第3章の練習教材は12回分あり、オフィス会話、電話対応、ミーティング、プレゼンテーションと、TOEICや仕事英語に近い場面で構成されています。しかも単に英文を並べるのではなく、リンキングなど単語同士の音のつながりに注目させる作りです。知っている単語なのに聞こえない理由が、語彙不足ではなく音声変化にあることは珍しくありません。本書はそのズレを埋めるために、耳で聞く、文字で確認する、口で再現する、の往復を徹底させます。
さらに良いのは、第4章以降で教材選びと周辺技術まで補っていることです。おすすめの書籍、サイト、ニュース、YouTubeチャンネル、アプリ、映画やドラマ、さらにNetflixの活用まで触れており、練習素材を一冊の外へ広げられます。第5章ではTOEIC100点アップを見据えたレベル別対策、第6章では聞き取れない原因として正しい発音の未習得、音の変化への不慣れ、英語特有の音の特徴を挙げ、3ステップの発音トレーニングまで載せています。第7章は語彙で、単語暗記の進め方やアプリ活用まで踏み込みます。つまり本書はシャドーイング本でありながら、実際にはリスニング改善の総合設計図になっています。
シャドーイング本には、教材音声とスクリプトだけを渡して練習回数で乗り切らせるものもあります。それに対して本書は、シャドーイング前の準備工程をかなり丁寧に分けています。ディクテーションやオーバーラッピングを省かず、音声変化、発音、語彙、TOEIC対策まで横断しているので、独学で挫折しやすい人ほど助けになります。とくに「シャドーイングをやっているのに上達しない」人には、順序の見直しという意味で効く本です。
この本の良さは、シャドーイングを特別な上級者訓練にしないところです。むしろ、初心者がつまずくのは当然で、その前段階を整えれば誰でも入れると考えています。だから読んでいて無理がありません。いきなり速い音声を追いかけるのではなく、書き取り、意味確認、音読、重ね読みを経てから追いかける。その設計がまっとうです。
実際、リスニングが伸びないときは、耳そのものより、音を処理する途中工程が崩れていることが多いです。本書はそこを1つずつ見える化してくれます。教材もオフィス会話や電話、会議、プレゼンと実用寄りなので、TOEICのためだけでなく、仕事で英語を使いたい人にもつながりやすいです。英語学習本は気合いをあおるものも少なくありませんが、この本は何をどの順でやればよいかを具体的に示してくれる。その堅実さが一番の価値だと感じました。