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レビュー

概要

『28言語で読む「星の王子さま」 世界の言語を学ぶための言語学入門』は、有名な物語を共通テキストにして、世界の言語を比較しながら言語学の考え方を学ぶ本です。変わっているのは、単に「いろいろな言葉が載っている本」ではないことです。第1部で発音、文法、単語、文字といった言語学の基本的な見方を整理し、第2部で英語、フランス語、中国語、アラビア語、日本語まで28言語の実例へ進みます。つまり、先に地図を渡してから旅へ出す構成になっています。

しかも各言語の章では、『星の王子さま』の一節を使って、逐語訳に近い形で違いが見えるように作られています。同じ内容なのに、語順が違う、冠詞の置き方が違う、文字体系そのものが違う。そうした差が一気に可視化されるので、「外国語は別の暗号ではなく、世界の切り分け方の違いでもある」と実感しやすいです。語学学習の本というより、言語多様性の面白さを体で理解するための本だと思います。

読みどころ

1. 同じ文章を比べるから違いがつかみやすい

多言語比較の本は、情報量が多いぶん抽象的になりやすいです。本書がうまいのは、『星の王子さま』という共通の土台を置いている点です。同じ場面、同じ意味内容を比べるので、どこが言語固有の違いなのかが見えやすくなります。

たとえば、語順の違いだけでもかなり面白いです。主語や動詞の位置、修飾語のかかり方、冠詞の有無、格の表し方が、言語ごとに驚くほど違います。けれど完全にバラバラなわけでもなく、共通する発想もある。その両方が一冊の中で見えてきます。

2. ただの言語カタログではなく、ちゃんと入門書

第1部では、文字を見る、発音する、読み解くという順番で、言語学の基本的な考え方を整理します。ここがあるので、初心者でも第2部の比較に入っていきやすいです。単に珍しい言語を並べる本ではなく、「何に注目すると違いが読めるのか」を先に教えてくれるのが親切です。

この順番がかなり効いています。言語の本は、専門用語が分からないと途中で観光気分の読み流しになりがちです。本書はそうなりにくく、比較の視点を少しずつ手渡してくれます。

3. 28言語それぞれに敬意がある

東京外国語大学の28専攻語を網羅しているだけあって、扱いが雑ではありません。主要言語だけを厚く扱い、その他をおまけにする感じではなく、それぞれの言語に固有の面白さがある前提で書かれています。逐語訳が付いているので、ただ眺めるだけで終わらず、どこがどう違うのかを追えます。

言語学の本を読むとき、つい英語や日本語を基準にしてしまいがちですが、本書はその癖をほどいてくれます。世界には別の標準がいくらでもあると分かるからです。

4. 語学好きと教養読書の中間にちょうどいい

専門書ほど重くなく、語学学習本ほど実用一点張りでもありません。この中間にある本は意外と少ないです。語学が好きな人なら「この言語もこんな仕組みなのか」と楽しめますし、語学はそこまで得意でなくても「人間の言葉はこんなに多様なのか」という教養として読めます。

しかも『星の王子さま』という有名な物語を使うことで、比較の負荷を下げています。文学を入り口にした言語学としてもよくできています。

類書との比較

単一言語の入門書と比べると、本書は1つの言語を深く使いこなす本ではありません。文法を順番どおり身につける教材ではなく、言語を横断して眺める本です。そのかわり、1冊で視野が広がる度合いはかなり大きいです。

また、世界の言語紹介本の中には文化紹介が中心のものもありますが、本書は文化エッセイではなく、言語そのものの構造に焦点があります。発音、文字、文法、語順といった点が比較しやすく整理されているので、読み終えたあとに他の言語本へ進みやすいです。

こんな人におすすめ

  • 外国語を勉強していて、言語そのものの違いに興味が出てきた人
  • 言語学や比較言語学に入りたいが、教科書から入るのは重い人
  • 1つの言語だけでなく、世界の言葉を並べて見てみたい人
  • 語学学習を「単語暗記」より広い視点で楽しみたい人

逆に、特定の一言語を実際に話せるようになりたい人には目的が違います。本書は運用力の本ではなく、見る目を育てる本です。

感想

この本を読んで強く残るのは、言語の違いを知ることが、そのまま世界の見え方を増やすことだという感覚でした。日本語や英語だけを見ていると、それが当たり前に思えてしまいます。けれど28言語を横に並べると、語順ひとつ、文字ひとつでも、人間が意味を組み立てる方法は驚くほど多様です。

同時に、完全に通じないバラバラさではなく、比較できる共通の軸も見えてきます。そこが言語学の面白さでした。違うのに、比べられる。その感覚が、外国語学習を少し楽にしてくれます。分からないものを丸暗記するのでなく、構造として見られるようになるからです。

『28言語で読む「星の王子さま」』は、語学好きの趣味本としても、言語学の入口本としてもよくできた一冊でした。読む前より、世界の言葉に対して敬意が増えますし、1つの言語だけを正解として見なくなります。学び直しの読書として、とても豊かな本でした。

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    大手出版社で書籍編集を10年経験後、独立してブロガーとして活動。科学論文と書籍を融合させた知識発信で注目を集める。
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