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レビュー

概要

『手取り20万円 子育て家族の貯金の教科書』は、収入が多くない子育て家庭でも、本当に貯金はできるのかという切実な問いに向き合う本です。著者は家計再生コンサルタントとして知られる横山光昭さんで、数字のきれいごとではなく、生活の制約を前提にした現実的な家計改善を示してくれます。

本書のよさは、「手取り20万円」という条件をぼかさないところです。家計本の中には、平均より高めの世帯収入を前提にしたものも少なくありませんが、この本はむしろ厳しい条件だからこそ、何を守り、どこを削り、どう教育費を準備していくかを具体的に考えさせます。子育てと貯蓄の両立に自信がない家庭ほど、刺さる内容だと思います。

読みどころ

  • まず参考になるのは、教育費を「なんとなく不安な将来の出費」ではなく、具体的な数字として置いてくれる点です。教育費1000万円という重い現実や、大学入学までにいくら準備するかといった話が、抽象論ではなく行動の単位に落ちてきます。漠然と心配しているだけでは動けない人にとって、この具体性は大きいです。
  • 児童手当の扱い方や、学資保険をどう考えるかといった論点も実用的です。昔ながらの常識をそのままなぞるのではなく、低金利や家計の柔軟性も踏まえて、「本当に今の家庭に合う方法か」を考えさせてくれます。教育資金づくりでよくある思い込みを一度外せるのが本書の強みです。
  • 生活費の圧縮についても、極端な我慢を勧める感じは強くありません。むしろ、仕組みを作ること、優先順位を決めること、夫婦で共通認識を持つことが重視されます。収入が厳しい家庭ほど、単発の節約よりも再現できる仕組みが重要なので、この姿勢はかなり現実的です。
  • 「収入が少ないから貯められない」のではなく、「先に仕組みがないから残らない」という考え方も、本書の核の1つです。家計の苦しさを個人の努力不足に還元せず、設計の問題として扱ってくれるので、読んでいて前向きになれます。

類書との比較

子育て世帯向けのお金本では、制度解説が中心のものも少なくありません。本書はもっと日々の暮らしに寄った立ち位置です。手取り額を出発点として、苦しくなりやすい場所と、変えると息がしやすくなる部分をはっきり示してくれるので、机上の理論に終わりません。

また、『正しい家計管理』のような構造をつかむ本が家計の見方を整えるのに対し、本書は子育て家庭の実務に落とし込む役割が強いです。両者は競合というより補完関係にあり、本書はより生活の現場に近い一冊だと感じました。

こんな人におすすめ

  • 子どもがいるのに貯金が思うように増えない家庭
  • 教育費に備えたいが、何から手を付ければいいかわからない人
  • 共働きでも家計に余裕がないと感じている人
  • 収入の多寡より、仕組みづくりを学びたい人

感想

この本を読んで感じたのは、家計の安心感は収入額だけで決まるわけではないということでした。もちろん収入は重要ですが、それ以上に、先に確保するお金と後回しにしてはいけない支出が見えているかどうかで、日々の不安はかなり変わります。本書はその整理を助けてくれます。

教育費の話になると不安が先に立ちやすいですが、本書は怖がらせるだけで終わりません。厳しい条件でも「ここからなら変えられる」と思わせてくれるので、低収入世帯のための脅し本ではなく、実行のための本としておすすめできます。

子育て家庭の家計は、保育料、習い事、被服費、食費の増加など、細かな変化が積み重なって急に苦しくなることがあります。本書はそうした「いつのまにか膨らむ支出」を見逃しません。さらに、教育費のような大きなテーマとも接続してくれるので、目先と長期の両方を見やすいです。

また、数字の話だけでなく、夫婦でどう共有するかにも触れているのが助かります。さらに、我慢しすぎず続ける工夫まで扱っているので、節約に疲れた家庭よりも、暮らしを壊さず立て直したい家庭と相性のいい本でした。

教育費づくりは先が長いぶん、最初の設計でつまずくと立て直しに時間がかかります。その意味で本書は、収入に不安がある時期でも「今から準備できる」と思わせてくれる、現実的で心強い家計本でした。

高収入家庭向けの資産形成本を読むと置いていかれる感覚がある人でも、本書なら出発点を合わせやすいはずです。派手な成功例ではなく、生活を守りながら少しずつ貯める発想が中心なので、現実の暮らしと距離の近い一冊でした。

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    佐々木 健太

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