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レビュー

概要

『「レベルアップ」のゲームデザイン ―実戦で使えるゲーム作りのテクニック』は、ゲームづくりを「おもしろさの勘」で済ませず、企画からレベルデザイン、HUD、バトル、敵、パワーアップ、マルチプレイヤー、カットシーンまで分解して考えるための本です。著者の Scott Rogers は『ゴッド・オブ・ウォー』などに関わってきた現役のゲームデザイナーで、本書も理論書というより、現場で使える判断集として書かれています。

この本の面白さは、章立てそのものがゲームのレベル構造を模していることです。LEVEL 1 でゲーム業界の基礎に入り、LEVEL 2 でアイデア、LEVEL 3 でストーリー、LEVEL 4 でゲームデザインドキュメントへ進み、その後に 3つのC、HUD、レベルデザイン、バトル、敵、メカニクス、パワーアップ、マルチプレイヤーへ展開していく。読者自身が「レベルアップ」しながら学ぶ設計になっています。

読みどころ

第一の読みどころは、初期章の実務性です。LEVEL 2 では、アイデアをどこで得るか、ゲーマーが求めているものは何か、「おもしろい」という曖昧な言葉をどう扱うか、ブレインストーミング、スランプの克服法まで入ります。LEVEL 4 では、ワンシートのドキュメント、テンページャー、GDD の書き方、ゲーム進行、ビートチャートが扱われます。つまり本書は、ゲーム内の仕様だけではなく、企画を人に伝える工程も含めてデザインだと考えています。

第二の読みどころは、LEVEL 5 から 7 の「3つのC」です。CHARACTER、CAMERA、CONTROL をゲーム体験の中心に置く整理は非常にわかりやすいです。キャラクターの性格、移動、ジャンプ、よじ登り、水中移動、仲間の扱い。カメラ視点の選択、一人称と三人称、2.5D、トップダウン、トンネルビジョン、マルチプレイヤーのカメラ。さらに操作方法では、キャラクター依存か画面依存か、入力デバイスとの相性まで考えます。プレイヤーが実際に触る感覚の設計に強い本だとよくわかります。

第三の読みどころは、LEVEL 8 以降の具体性です。HUD では体力ゲージ、照準、弾薬、マップ、ポップアップ、QTE、フォントまで細かく扱います。LEVEL 9 のレベルデザインでは「ディズニーランドが教えてくれた」設計や、ビートチャート、再利用、トレーニングレベルの置き方が出てきます。LEVEL 10 と 11 ではバトルと敵キャラクター、ボス戦の作り方に入り、LEVEL 13 ではパワーアップ、LEVEL 14 では MMORPG を含むマルチプレイヤーへ進みます。広いのに、どの章もゲームを作るときの具体的な悩みに接続しています。

本の具体的な内容

本書を読んでまず感じるのは、ゲームデザインがストーリーや世界観の話だけではないということです。LEVEL 4 のドキュメント章が象徴的で、1ページの企画概要から10ページ程度の企画書、さらに詳細な GDD へと、抽象度の違う資料をどう作るかが示されます。ここで、頭の中にあるアイデアをチームで共有可能な形に落とすことが、デザインそのものなのだとわかります。

また、LEVEL 5 から 7 の 3C は、本書の背骨です。キャラクターが魅力的でも、カメラが不快なら台無しになる。カメラがよくても、操作が気持ちよくなければ離脱される。この当たり前を、豊富な小見出しで細かく分解しているので、ゲーム体験をどこで損ねやすいかが見えます。特にカメラ章と操作章は、プレイヤーのストレス源を設計段階で減らす発想に満ちています。

さらに、本書はレベルデザインやバトルに進んでも、プレイヤー心理から離れません。LEVEL 9 のビートチャートやトレーニングレベルの話、LEVEL 10 の「死は何のためにあるのか」、LEVEL 11 のボス戦設計、LEVEL 13 のパワーアップなど、全部が達成感と学習曲線に関わっています。ゲームシステムの構造を語っているようでいて、常に「プレイヤーは何を感じるか」が軸にあります。そこが強いです。

類書との比較

ゲームデザイン本には、理論を抽象的に語る本と、特定ジャンルのノウハウに寄せた本があります。本書はその中間にあります。理論だけで終わらず、かといってチェックリスト集にもなりません。3C、HUD、レベル、バトル、敵、ドキュメントという単位で、実践判断へ変換できる形に整理されています。現場寄りのオライリー本として、かなり長く参照できる1冊です。

こんな人におすすめ

ゲームデザイナー志望の人にまず向いています。企画職、レベルデザイナー、インディー開発者、教育ゲームを作る人にも役立ちます。実装コードより、プレイヤー体験の設計を学びたい人との相性がよいです。逆に、Unity や Unreal の具体的な操作手順を学びたい人には別の本が必要ですが、その前に読む価値は高いです。

感想

この本の良さは、ゲームを「面白くする魔法の法則」として語らないことでした。むしろ、面白さを支える膨大な判断の積み重ねを見せてくれます。キャラクターはどう動くか。カメラはどこを見るか。HUD はどこまで出すか。敵は何を学ばせるか。ボス戦は何を試すか。こうした問いの数だけ、ゲーム体験は具体的になります。

特に印象に残ったのは、ディズニーランドを引き合いに出すレベルデザインの発想と、3C の整理でした。空間設計と操作感がプレイヤーの集中をどれだけ左右するかが、抽象論ではなく腹落ちします。ゲームを作る人の本ですが、インタラクションを設計するすべての人にとって学びがある本です。

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