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レビュー

概要

『精神科医Tomyの自分を大切にする習慣』は、仕事や人間関係で気力が削られやすい人に向けて、「自分を後回しにしすぎないための考え方」をやわらかく教えてくれる本です。著者は精神科医Tomyさんで、本文は一方的な説教ではなく、漫画も交えながら「こういうとき、心はどう消耗していくのか」「どう守ればいいのか」を整理してくれます。

自己肯定感の本というと、前向きになろう、もっと自分を好きになろうと抽象的に励ますものもありますが、本書はもう少し具体的です。他人の期待に振り回される、怒りや不安が抜けない、休んでも罪悪感がある、頼るのが苦手、といった日常的な悩みを前提にして、少しずつ心の負担を軽くする方向へ導いてくれます。疲れているときにも読みやすい温度感がある本です。

読みどころ

  • 良いのは、「自分を大切にする」をわがままや自己中心と混同しないところです。本書は、自分を守ることを、他人を切ることではなく、限界を見失わないこととして説明します。そのため、真面目な人ほど陥りやすい「優しくしたいのに苦しい」「頑張りたいのに動けない」という矛盾に言葉が与えられます。
  • 怒り、不安、悲しみの扱い方も丁寧です。感情を消す方法ではなく、まず気づいて、少し距離を置いて、傷が深くなる前に整えるという順番で話が進むので、実際の生活に落とし込みやすいです。精神科医の本らしく、感情を責めるのではなく、疲れた心の反応として扱ってくれるのが読みやすい理由だと思います。
  • 漫画の存在も効いています。言葉だけでは重くなりがちなテーマが、しろちゃんのやわらかい絵によって少し受け取りやすくなっていて、読んでいて身構えません。メンタル本に必要なのは情報量だけでなく、読み進められるやさしさだと感じますが、本書はそこがうまいです。
  • もう1つの強みは、特別なことを増やしすぎない点です。大きな人生改革ではなく、考え方の置き換え、休み方の見直し、他人との距離の取り方など、すぐ試せる単位で話が進みます。調子が落ちているときは「今すぐ全部変える」は逆に負担なので、この小ささが助かります。
  • 本書で繰り返し語られるのは、「自分を守る境界線」を持つことです。嫌なことを全部我慢する、期待に全部応える、休むと申し訳ないと思う、といった反応は真面目な人ほどやりがちですが、本書はその状態を美徳として持ち上げません。相手に合わせ続けた結果、自分の機嫌や体調が壊れてしまっては長く人にも優しくできないという、当たり前だけれど忘れやすい視点が何度も確認されます。

類書との比較

精神科医Tomyさんの本には、一瞬で気持ちを軽くするタイプの言葉集もありますが、本書はそれより少し生活寄りです。名言を読む本というより、自分を守る習慣をどう作るかを考える本であり、読むだけで終わりにくい実用性があります。

また、自己啓発色の強いメンタル本が「もっと前向きに」と背中を押しすぎるのに対して、本書はまず消耗を止める発想を重視します。頑張るための本というより、折れないための本として相性がいいです。

こんな人におすすめ

  • 人間関係で気疲れしやすい人
  • 頑張りすぎて休み方がわからなくなっている人
  • 自己肯定感の本は重すぎると感じる人
  • やさしく読めるメンタルケア本を探している人

感想

この本を読んで感じたのは、自分を大切にするとは「自分を甘やかすこと」ではなく、「自分を雑に扱わないこと」なのだということでした。疲れたときに自分を責める癖がある人ほど、この本の言葉は効くと思います。立ち上がるための根性論ではなく、まず傷を広げないための本として信頼できます。

メンタル本を読む気力すらあまりないときでも手に取りやすいのも良いところです。重い理屈ではなく、でも軽すぎる慰めでもない。仕事や家庭で知らないうちに消耗している人にとって、心の守り方を学ぶ最初の一冊としてすすめやすい本でした。

特に、元気なときに読むと「少しやさしすぎる本かな」と見える部分が、疲れているときにはそのまま支えになるはずです。心が弱っている人に必要なのは、正しい理論より先に、自分を責める流れを止める言葉であることが多いからです。自分を奮い立たせる本ではなく、自分との付き合い方を少し丁寧に戻す本として、長く手元に置きやすい一冊でした。

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    佐々木 健太

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