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レビュー

概要

『世界一ラクチンなのに超美味しい! 魔法のてぬきごはん』は、料理のハードルを徹底的に下げながら、「手を抜いた感じがしない味」に着地させる本です。ここでいうてぬきは、味をごまかすことではありません。工程を減らし、洗い物を減らし、考える負担を減らしても、満足度は落とさない。その発想で組まれています。

著者のてぬキッチンは、難しい段取りや細かいコツを前提にしません。レンジ、包丁いらず、混ぜるだけ、1つの容器で完結するといった作りに寄せながら、ちゃんとおいしい形へ持っていくのがうまいです。料理を趣味として楽しむ本というより、疲れていても自炊を止めないための本として強いです。

読みどころ

読みどころは、「料理が面倒になる理由」を先回りして潰しているところです。材料が多い、切るのが面倒、火加減が不安、片づけが億劫。自炊が続かない理由はたいていこのあたりですが、本書はそこを減らすためのレシピ設計になっています。だから、料理本を買っても再現しなかった人ほど使いやすいです。

また、てぬき料理なのに味が単調になりにくいのも良いところです。定番調味料の組み合わせ方や、少ない材料で満足感を出す工夫があり、忙しい日に回す実用品として優秀です。レシピの派手さより、繰り返し使えるかどうかに重心があります。

さらに、本書は「今日は作りたくないけれど外食や総菜だけには寄せたくない」という日に強いです。ちゃんとした料理を作る気力はない。でも何か温かいものを食べたい。そういう時の一冊として、かなり実戦的です。

本書の重要ポイント

本書の重要ポイントは、料理を頑張りの対象にしないことです。料理が好きな人の理想形ではなく、疲れている日でも再現できる最低限の形を整える。その最低限が意外とおいしいから、続きます。この視点があるので、自炊への罪悪感を減らしやすいです。

また、料理の満足感は工程の多さと比例しないという感覚も得られます。長く煮込まなくても、細かく切らなくても、盛りつけを凝らさなくても、おいしいものは作れる。そこがわかると、自炊のハードルがかなり下がります。

本書は一人暮らしにも使えますし、家族ごはんにも応用しやすいです。レシピをそのまま作るだけでなく、「この調味料の組み合わせなら別の食材でもいける」と発展させやすいので、読み終わったあとも残ります。

もう1つ良いのは、買い物の計画まで重くならないことです。特別な食材を大量にそろえなくても回せるので、卵、豆腐、ひき肉、冷凍野菜のような定番があれば何とかなる感覚を持てます。自炊が続かない人に必要なのは献立力よりも、「これで十分」と思える型です。本書はその型をかなりわかりやすく渡してくれます。

類書との比較

時短レシピ本は多いですが、中には材料が特殊だったり、結局洗い物が多かったりして実際は手間が残るものもあります。本書はそこがかなり現実的で、面倒の種類をよくわかっていると感じます。簡単と言いながら難しくない、というのが強みです。

また、栄養管理や作り置きの厳密さで勝負する本ではありません。その代わり、「まず自炊を切らさない」ことに非常に向いています。料理が続かない人のリハビリ本としても機能します。

こんな人におすすめ

平日に料理へ気力を回しにくい人、一人暮らしで外食が増えがちな人、家事の負担を減らしたい人におすすめです。特に、料理そのものは嫌いでないものの、段取りの面倒さで手が止まりやすい人に合います。

また、育児や仕事で忙しい人にも向いています。凝った献立より、回せる日常がほしい人のための本だからです。

食費を抑えたい人にも向いています。外食や宅配へ流れる回数が減るだけでなく、余った食材を使い切る発想が身につくからです。完璧な節約本ではありません。自炊が続くこと自体、家計の安定につながると実感しやすい一冊です。冷蔵庫にある物で何とかする力も、日々かなり自然に育ちます。

感想

この本を読むと、自炊は立派にやるかゼロかの二択ではないと感じます。少ない工程でも、あたたかくておいしいものは作れる。その感覚が持てるだけで、料理への抵抗感がかなり減ります。

疲れている日の逃げ道として使えるのに、食事の満足度は落ちにくい。そこがこの本のいちばん良いところでした。料理を続けるための現実的な一冊です。

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    佐々木 健太

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