レビュー
概要
『いちばんわかりやすいDTMの教科書』は、Cubaseユーザーを主な対象に、曲作りの流れを「準備→仕込み→仕上げ→応用」で整理したDTM入門書です。内容説明にある通り、“考え方とテクニックが身に付く”ことを狙い、最新の制作環境に対応した3rd Editionとして構成されています。
DTMで挫折しやすいのは、機材やソフトの情報が先に来て、曲作りの全体像が見えないことです。いきなりプラグインやミキサー画面に入ると、「結局、何からやれば1曲になるのか」がわからなくなる。本書はその迷子を避けるために、章立て自体が“制作の工程表”になっています。
目次が示す制作フロー
本書は4部構成です。
- 準備編―DTMに必要なもの(コンピューターでどうやって音楽を作る?/何が必要?)
- 仕込み編―楽器ごとの基本テク(操作法/ドラムでリズムを作る…など)
- 仕上げ編―音楽的なブラッシュアップ(ミックス/完成した音楽を発表する)
- 応用編―ワンランク上のワザ(もっと高度な制作のために) Appendix:音楽制作にまつわるQ&A
この並びは、「DTM=機材」ではなく「DTM=工程」として理解させてくれます。制作が前へ進む感じが作れるので、初心者が置いていかれにくいです。
具体的に何が身につくか(目次から読み取れること)
準備編では、DTMが「コンピューターでどうやって音楽を作るか」という全体像から入り、必要なものを整理します。ここで、制作環境の不安を減らしたうえで、仕込み編へ移ります。
仕込み編は、操作法の基礎を押さえたうえで、「ドラムでリズムを作る」といった楽器ごとの基本テクへ進みます。リズムが作れると、曲の骨格が立ちます。骨格が立つと、次に“音楽的なブラッシュアップ”としてミックスへ進める。本書は、この順番を崩しません。
仕上げ編は、音をミックスして整え、完成した音楽を発表するところまで扱います。作りっぱなしで終わらないので、「完成物を作る」感覚が残ります。応用編では、さらにワンランク上の制作へ進むための視点が用意され、AppendixのQ&Aで疑問を潰せる。入門書に必要なものが揃っています。
読みどころ
1) “準備”に時間を割くことで、途中の詰まりを減らす
DTMは、最初の準備を雑にすると、後で必ず詰まります。音が出ない、録れない、遅れる、保存が不安。そうした不安を抱えたままだと、作曲以前に気持ちが折れます。本書は準備編で、必要な機材や設定を最初に明確化し、迷いを減らします。
2) “仕込み”は楽器ごとに整理され、練習しやすい
仕込み編で、操作法を押さえたうえで、ドラムでリズムを作るなど、楽器ごとの基本へ入ります。DTMは、いきなり全部の要素を同時に扱うと破綻します。リズム、ベース、コード、メロディを分けて仕込むほうが現実的です。本書はその分け方を、章として用意してくれます。
3) “仕上げ”でミックスと発表まで含めるのが実務的
DTMは、作曲が終わっても終わりではありません。音を整え、書き出し、発表するところまでが1曲です。仕上げ編で「音をミックスしよう!」「完成した音楽を発表しよう!」と明示することで、最後の山を越えやすくしています。初心者が一番つまずく“未完成の山”を、工程として回収しているのが良いです。
4) 応用編があるから、伸びしろが残る
最初は基本で十分でも、作り続けると「もっと高度な制作」が気になってきます。本書は応用編を用意し、次のステップも見せます。入門書なのに、卒業後の道が見える構成です。
感想
この本を読んで良いと感じたのは、DTMを“画面操作の説明”で終わらせず、「1曲を完成させる流れ」として教えてくれる点です。初心者が欲しいのは、知識の量ではなく、曲が完成するまでの道順です。本書は、その道順を目次の段階で提示します。
DTMは、やることが多いからこそ、順番が命です。準備→仕込み→仕上げ→応用という工程で読み進めれば、学んだことが積み上がりやすい。Cubaseを触り始めた人が最初に読む「教科書」として、相性の良い1冊です。
読み方のコツ(1章ずつ“作品”で確かめる)
DTM入門で失敗しやすいのは、読むだけで満足してしまうことです。本書は工程がはっきりしているので、「章を読んだら、必ず短い作品で試す」読み方が合います。
- 準備編を読んだら、まずは音が出る状態を作る
- 仕込み編を読んだら、ドラムだけの8小節を作って保存する
- 仕上げ編を読んだら、短い曲でもミックスして書き出す
この“小さな完成”を積み上げると、画面操作が「知っている」から「できる」へ変わります。DTMは学習量より、完成までの回数が伸びを決める。本書はその回数を増やすのに向いています。
こんな人におすすめ
- Cubaseで曲作りを始めたが、何から手をつければいいか迷う人
- 途中で止まってしまい、最後まで1曲を完成させられない人
- ミックスや書き出しを含めて、制作を“完結”させたい人