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レビュー

概要

『ちゃんとした音楽理論書を読む前に読んでおく本 [増補版]』は、音楽理論を「体系として勉強する」前に、最低限の地図を手に入れるための入門書です。内容説明にある通り、狙いは“本格的に理論を勉強する前に、楽しく予習する”こと。理論書にありがちな記号の洪水で挫折する前に、五線・音名から、コードやケーデンスまでを1冊で見渡せるようにします。

この本がありがたいのは、理論の世界を「暗記するもの」ではなく「耳と指に紐づくもの」として扱っている点です。スケールやキーがわからないと、コードが意味不明になる。コードが曖昧だと、機能(役割)や進行が見えない。そうした“つまずきの連鎖”を、順番でほどいていきます。

目次が示す「最短ルート」

目次は、音楽理論の入口としてかなり王道です。

  1. 五線と音名
  2. 倍音と音程
  3. 音階(スケール)
  4. 調性(キー)
  5. 和音(コード)
  6. 機能とケーデンス Appendix:用語解説と索引

最初に五線と音名を置き、次に倍音と音程で“音の距離”を整理し、そこからスケールとキーへ進む。最後にコード、機能、ケーデンスへつなげる。この並びは、「理論を学びたいのに、どこから手をつければいいかわからない」人が迷いにくい導線です。

各章がつながるポイント(学ぶ順番の理由)

この本は、章ごとの内容が孤立していません。たとえば「倍音と音程」を先に置くことで、後の章の理解がスムーズになります。音程がわかると、スケールの“並び”が読める。スケールが読めると、キーが決まったときに「使いやすい音」「外れると緊張する音」の感覚が生まれる。そこからコードへ進むと、コードが単なる形ではなく、キーの中での役割として見えてきます。

最後の「機能とケーデンス」は、理論が“作曲や編曲で使える”段階です。コード進行が気持ちよく聞こえる理由を、機能(主に向かう力、離れる力)と、終止(ケーデンス)で説明できるようになる。理論の勉強が「覚える」から「説明できる」へ変わります。

読みどころ

1) 五線・音名を「読む」ことが、理論の入口になる

音楽理論は、言葉だけで理解しようとすると抽象になりがちです。五線と音名が読めるだけで、音が“位置”として見えるようになります。すると、スケールの説明が「そういうルール」から「こう並んでいる」に変わる。頭の負荷が下がります。

2) 倍音と音程で、コードの理由が見えてくる

コードの話だけを先に読むと、押さえるべき形が増えるだけで混乱しやすいです。本書は、倍音と音程を先に置きます。音程がわかると、「なぜその音を重ねるのか」の筋道が作れます。コードを“指の形”ではなく“音の関係”として捉えられるようになるのが大きいです。

3) スケール→キー→コードの順番が、理解のズレを防ぐ

スケールとキーは似た言葉ですが、混ざると一気にわからなくなります。本書はスケールを先に置き、次にキー(調性)へ進みます。キーが見えると、コードの役割(機能)が見える。機能が見えると、ケーデンスが「終わり方の型」として腹落ちする。段階的に積み上がる構造が、入門書として強いです。

4) Appendixが“辞書”として効く

用語解説と索引があるので、読み進める途中で止まっても戻れます。理論を学ぶときに一番つらいのは、「わからない言葉が増えて、どこで詰まったのかすら曖昧になる」状態です。索引があるだけで、学習の不安が減ります。

感想

この本を読んで良いと思ったのは、理論を“正しさの勉強”にしないところです。音名、音程、スケール、キー、コード、機能、ケーデンス。これらは暗記のリストに見えますが、本当は全部つながっています。本書はそのつながりを、順番で見せてくれます。

「ちゃんとした理論書」を読む前に、まずこの本で全体像を掴む。そうすると次に読む本が“外国語”ではなく“続きの話”になります。音楽理論で挫折した経験がある人ほど、最初の1冊として助けになると思います。

読み方のコツ(理解を耳へ戻す)

音楽理論の勉強は、紙の上だけで完結しません。おすすめは、各章を読んだら必ず「音で確かめる」ことです。

  • 五線と音名を読んだら、実際に音名を声に出して確認する
  • 音程を学んだら、2音を鳴らして“響きの違い”を覚える
  • スケールとキーを学んだら、同じメロディを別のキーで弾いてみる
  • コードを学んだら、同じコードでもベース音を変えてニュアンスが変わる感覚を掴む

こうして耳へ戻すと、理論が暗記になりにくいです。本書は予習の本なので、完璧な理解を目指すより、「次の理論書を読める状態」を作ることがゴールだと思います。

こんな人におすすめ

  • 音楽理論の本を開いた瞬間に、記号で挫折した経験がある人
  • コード進行を覚えても、理由がわからずモヤモヤしている人
  • スケールやキーの話が曖昧なまま、DTMや作曲をしている人

増補版のポイントとして、内容説明には「巻末に16ページにわたる用語解説と索引を追加した」とあります。理論の勉強は、分からない用語が増えた瞬間に手が止まりやすいです。索引があると、つまずいた地点へ戻れます。さらに旧版の購入者向けに、追加部分がPDFで入手できるとも書かれています。入口の本を「読み切り」で終わらせず、辞書のように使える形へ寄せているのが、この増補版の良さだと思いました。

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    佐々木 健太

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