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レビュー

概要

『コード理論大全』は、コードネームを暗記する段階から一歩進んで、「なぜその和音がその場面で効くのか」を理解したい人向けの本です。音楽理論の入門書は、三和音やダイアトニックの説明までは親切でも、実際に作曲や編曲へ持ち込むところで急に物足りなくなることがあります。本書はその先を埋めるタイプで、基本的なコードの成り立ちから、テンション、代理コード、モーダルな発想までを、体系の中で見直せるようになっています。

コード理論が苦手な人は、単語だけが増えていく感じに疲れやすいです。maj7、sus4、テンション、オンコード、借用和音といった言葉を覚えても、曲の中でどう使うのかがつながらないと、知識が散らばったままになります。本書はそこを、「和音の名前」ではなく「響きの役割」として整理し直してくれるのが良いところです。耳では何となくわかるけれど理屈が曖昧な人にも合います。

内容とポイント

本書の価値は、和音を単体で説明して終わらないことです。たとえばテンションも、使える音の一覧を並べるだけではなく、どういう場面なら色が立つのか、どんな流れだと濁りやすいのかを考えさせます。ダイアトニックの基礎からセカンダリー・ドミナントや代理コードへ進むときも、前の内容とのつながりを意識させるので、「新しい用語が増えた」だけで終わりにくいです。

また、理論書でありながら、実作との接点を感じやすいのも良いところです。作曲、編曲、伴奏、耳コピ、アドリブなど、コード理論が必要になる場面は多いですが、本書はそうした実践で何が変わるのかを想像しやすいです。知識として正しいだけではなく、「この考え方を知っていると、進行を選ぶときの判断が変わる」という手応えを持ちやすい。理論のための理論になっていないのが強みです。

さらに、似ている概念の切り分けがしやすいのも助かります。代理コードと単なる置き換え、モーダルな色づけと機能和声の違い、テンションによる彩りと和声機能の変化など、独学だと曖昧なまま進みやすい部分を整理しやすいです。音楽理論は、わからないままでも演奏は続けられてしまうぶん、後から混乱しやすいのですが、本書はその混乱をかなりほぐしてくれます。

加えて、コード進行を耳で覚えるだけの段階から抜け出しやすいのも魅力です。よく使う進行を丸ごと覚えること自体は悪くありませんが、それだけだと曲調が変わったときに応用が利きません。本書は、なぜその進行が安定して聞こえるのか、どこで緊張が生まれ、どこで解決するのかを考える方向へ読者を押してくれます。そのため、自作曲の幅を広げたい人にも役立ちます。

この本の良さ

この本を読んでよかったのは、コード理論の「わかったつもり」を崩してくれるところです。コードを読めることと、コード進行の意味がわかることは別ですが、その差を自覚しにくい人は多いです。本書は、どこまでが基礎理解で、どこからが応用の判断なのかを見えやすくしてくれるので、自分の弱点も把握しやすくなります。

もう1つ良いのは、作曲者だけでなく演奏者にも役立つことです。伴奏を付けるとき、耳コピした進行を説明するとき、既存曲の分析をするとき、コードの理屈が少し深くわかるだけで解像度が変わります。理論書は読んで終わりになりがちですが、本書は演奏や制作に返しやすいのが魅力です。

理論を知識で終わらせず、耳と手の感覚へ戻していけるのが、本書の大きな価値だと思います。コード理論に苦手意識がある人でも、単語の暗記から始めるのではなく、響きの理由を理解する方向で読むと、かなり取り組みやすくなるはずです。

こんな人におすすめ

コード進行を丸暗記する段階から抜けたい人、作曲やアレンジで和声を意図して選びたい人、独学で理論を学んできて点と点がつながらない人に向いています。逆に、楽譜もコードネームも初めてという完全入門者には少し情報量が多いかもしれません。ただ、基礎をひと通り学んだあとに読み直すと、一気に景色が変わるタイプの本です。

「知っているコードを増やす」より、「使える判断を増やす」ことに価値を感じる人なら、かなり役立つ一冊でした。理論の整理と実践の橋渡しを同時にやってくれる本です。中級者の壁を越える助けになりますし、耳と理屈をつなぎ直す再入門にも向いています。長く手元に置いて使える本です。制作と演奏の両方に返しやすいです。

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    佐々木 健太

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