レビュー
概要
『マンガでわかる! 音楽理論』は、音楽理論を文字の説明だけで理解するのが苦手な人向けに、マンガの会話と図解で基礎を整理してくれる入門書です。著者は侘美秀俊さん。和音、音程、スケール、コード進行、リズムの考え方など、音楽理論の基本項目を、ストーリー仕立てで少しずつ理解できるように工夫されています。
音楽理論の本でつまずく原因は、言葉だけが先に出てきて、音と結びつかないことです。本書はそこをよく分かっていて、概念をいきなり定義するのではなく、「なぜこの響きになるのか」「どうしてこの進行が自然に聞こえるのか」を会話や図で見せていきます。理屈嫌いの人でも入りやすい一冊です。
読みどころ
1) 音程やコードの話が視覚的に入ってくる
音楽理論で最初に苦しくなるのは、度数、音程、三和音といった概念です。言葉だけで説明されると、頭では読めても体に残りにくい。本書はその部分を、マンガと図解でかなりやわらかくしてくれます。キャラクター同士のやり取りを通じて、「この音が重なるとこう響く」「この距離感がメジャーとマイナーを分ける」といったことを順番に理解できます。
これは初心者には大きいです。音楽理論を難しく感じるのは、概念そのものより、入り口が堅いからです。本書はその入り口を広げてくれるので、「理論は怖くない」と思わせてくれます。
2) コード進行の考え方がつかみやすい
本書の魅力は、単発の和音だけでなく、コード進行まで話が進むところです。トニック、ドミナント、サブドミナントといった役割の違いや、なぜ定番の進行が耳になじむのかが見えてくると、曲の聴こえ方が一段変わります。
作曲をしない人でも、好きな曲を聴きながら「ここで緊張して、ここで落ち着く」という構造が少し分かるようになります。逆に、弾き語りやDTMをしている人にとっては、自分でコードを並べるときの引き出しが増えます。理論がそのまま実践に返ってくる作りです。
3) 「耳で分かる」と「言葉で説明できる」の橋渡しになる
音楽をやっている人の中には、なんとなく分かるけれど説明はできない人が多いと思います。本書は、その「なんとなく」を言葉へ変える助けになります。たとえば、明るい響き、切ない響き、不安定な感じ、落ち着く感じといった感覚を、音程やコードの性質へ結びつけていけるからです。
これは、演奏と作曲の両方に役立ちます。感覚だけでなく、説明できるようになると再現しやすいからです。レッスンを受ける人、バンドで相談する人、DTMで試行錯誤する人にも効く本だと思います。
4) 理論に苦手意識がある人を置いていかない
音楽理論の入門書はたくさんありますが、本書の価値は「置いていかない」ことにあります。マンガだから簡単という意味ではなく、読者がつまずきそうな場所を先回りして、疑問を会話に埋め込んでくれるのです。そのため、独学でも読み進めやすい。
理論書で挫折した人にとっては、再挑戦の入口としてかなり優秀です。逆に、すでに理論をある程度学んでいる人には復習や教え方の参考にもなります。初心者向けでありながら、学び直しにも使える本です。
ピアノ、ギター、DTMなど、入口が違う人でも読みやすいのも利点です。特定の楽器の癖に寄りすぎず、音楽の共通言語として理論を説明してくれるので、最初の一冊として選びやすいと感じました。
こんな人におすすめ
- 音楽理論を文章だけで読むと頭に入らない人
- 作曲やDTMを始めたが、コード進行の意味が曖昧な人
- 楽器経験はあるが、理論になると苦手意識がある人
- 生徒や子どもに音楽理論をやさしく伝えたい人
- まず全体像をつかんでから本格的な理論書に進みたい人
感想
この本は、音楽理論を「試験の知識」から「音の見え方を変える道具」にしてくれる本だと感じました。理論を知ると音楽が窮屈になると思われがちですが、実際には逆で、分かるほど自由になります。本書はその最初の一歩を、とても入りやすい形で作ってくれます。
特に良いのは、マンガ表現が単なる飾りではなく、理解の補助線として機能しているところです。難しい言葉をやわらかくするだけでなく、概念のつながりを覚えやすくしてくれる。音楽理論が苦手だった人ほど、「最初にこれを読めばよかった」と感じやすい一冊です。