レビュー
概要
『そうです、私が美容バカです。』は、美容に「効くかもしれない」と聞けば何でも試してしまうタイプの著者が、実際にやってみて良かったこと、怖かったこと、笑えることを、コミック形式でまとめた1冊です。題材はスキンケアやダイエットだけではありません。白髪、薄毛、睡眠、息のニオイ、メンタルの揺れなど、年齢と一緒に現れやすい“地味に刺さる悩み”が並びます。
内容の芯は、派手な美容テクニックではなく「自分の自尊心を回復するための手段として、美容をどう使うか」にあります。美容は、誰かに褒められるための競争にもなるし、自己嫌悪を増やす落とし穴にもなる。その両方を知っている人が、笑いにしながら“自分の面倒を見る方法”を掘り当てていく漫画だと感じました。
収録エピソードが具体的で、読後に行動が残る
本書は全16話構成で、各話が「問題→試行錯誤→現実の結論」という流れで進みます。エピソードの並びが、そのまま“美容の悩みの地図”になっているのが良いです。特に印象に残るのは、次のような話題です。
- 薬局で買える「スキンケア三種の神器」で、安く済ませる選択肢を作る
- 「ここさえ痩せてれば全身が細く見える部位」を見つけ、努力の焦点を絞る
- 白髪と薄毛の悩みを「みんなの悩み」として扱い、孤立感を薄める
- お尻と二の腕がツルツルになる漢方、という“攻めすぎない手段”を試す
- タルミをごまかす究極の方法という、現実の小技で乗り切る視点を持つ
- 史上最強のアンチエイジングとして「切開リフト」体験記(前・中・後編)に踏み込み、コストと痛みとダウンタイムを含めて語る
- 特別収録として、顎(あご)の脂肪吸引の体験も描かれる
ここまで振り幅があるのに、読後に残るのは「美容は自分を大事にするための道具」というシンプルな結論です。高価な手段が出てきても、無理に推さない。むしろ、やるなら“代償込みで選べ”というメッセージが前に出ます。
エピソード名が示す「悩みの順番」
本書の面白さは、タイトル(エピソード名)だけでも、著者が何に悩み、何にぶつかってきたかが見えるところです。たとえば、第1話は「美に目覚めし女」。入口は、自己肯定感を上げたいという素直な願いです。
そこから第2話「美容のいちばんの敵」へ進むと、敵は年齢だけではないとわかります。睡眠不足、ストレス、忙しさ、そして“自分の雑さ”も敵になる。第3話「真実をうつす鏡」では、見たくない現実(肌、体型、姿勢)と向き合うシーンが想像できます。
さらに第4話「正しく守ろう、用法用量」では、やりすぎの落とし穴が出てきます。美容は熱心になるほど、過剰に手を入れて逆効果になる。ここを笑いに変えられるのが、著者の強さです。
中盤には、第5話「ここさえ痩(や)せてれば…」のように努力の焦点を絞る回があり、第6話は肌荒れ問題、第7話は生理のときの顔面問題と、日常の体調の波へ話が移ります。第8話「吐息(といき)美人」や第9話「よく眠れる人は美しい」は、美容が“生活の整え”へ回収されていく流れとして読めます。
そして第10話「イケメン効果で髪の毛ツヤッツヤ!?」のような、少し照れくさいけれど現実的な視点も出てくる。終盤の切開リフト編(第11〜13話)は、ここまでの“生活美容”から一転して、外科的な選択の重さを描きます。その落差があるからこそ、「美容は誰のため?」という問いが最後に効いてきます。
読みどころ
1) 「効いた/効かなかった」を、笑いで整理する
美容の情報は多すぎて、真面目な人ほど疲れます。本書はそこを、失敗も含めて笑える形にしてくれます。結果として、情報の洪水から一歩引ける。読者が「次に何を試すか」ではなく、「何をやめるか」「何を続けるか」を考えやすくなります。
2) “年齢の悩み”を隠さず、むしろネタにする
目元、髪、睡眠、生理のときの顔面の問題など、恥ずかしくて言いにくい話題がそのまま出てきます。ここを隠さないから、「自分だけじゃない」という安心が生まれる。美容の本でありながら、孤独の本になっていないのが良いです。
3) 最後に「美容は誰のため?」へ戻ってくる
終盤には「美容は誰のため?」という問いが出てきます。これが効きます。美容の目的が、承認欲求だけになると苦しくなる。逆に、自分の回復や整え直しのために使えると、軽くなる。この軸があるから、試行錯誤の話が単なる体験談で終わりません。
感想
この本を読んで良かったのは、美容が「気合い」でも「贅沢」でもなく、生活の調整として描かれている点です。安く済ませる回もあるし、怖いけれど踏み込む回もある。どちらも“自分の現実”の中で選ぶ。だから、美容を頑張れない自分を責める方向へ行きにくいです。
美容は、ときに自尊心を削ります。でも同時に、自尊心を回復させる最短ルートにもなる。本書はその両面を、笑いと具体で示します。美容に疲れた人ほど、「1回、整理しよう」と思える1冊です。
読み方のコツ(「足す」より「やめる」を拾う)
美容本を読むと、行動が増えがちです。スキンケアを増やす、サプリを増やす、メイク工程を増やす。でも本書の強みは、「やめてよかった」や「ここだけ押さえればいい」という発想にあります。
だからおすすめは、まず“自分が今やっている美容”を頭に置きながら読むことです。そして、エピソードの中で「それ、やめてもいいんだ」と思えた箇所に印をつける。結果として、手順が減って気持ちが軽くなります。美容を頑張るための本というより、美容の負担を減らすための本として読むと、効き目が出やすいです。
こんな人におすすめ
- 美容情報に振り回されて、疲れている人
- 高い施術の話を、代償込みで現実的に知りたい人
- 自分を整える手段として、美容を捉え直したい人