レビュー
概要
『OzaShinの誰でもわかる 音楽理論入門』は、音楽理論に苦手意識がある人へ向けた、段階型の入門書です。YouTubeで人気の講座をベースにしているため、説明は「つまずく点」から逆算されています。先生キャラ「わおん」が、生徒キャラ「おんぷ」に教える会話形式で進むので、教科書のような硬さがありません。
もう1つの特徴は、譜例をQRコードで聴ける点です。理論は文字だけだと抽象になります。実際の音とセットで理解できるのは、初心者にとって大きい助けです。
構成は基礎編・応用編・発展編の3章立てです。基礎と応用については、扱うトピックが具体的に列挙されていて、学べる範囲が見えやすい作りになっています。
読みどころ
1) 基礎編が「楽譜の読み方」からコード理論へ橋をかける
基礎編では、音価、拍子、音名、音部記号、調号と臨時記号といった、譜面を読むための道具から始まります。ここを飛ばすと、スケールやコードを学んでも頭に入ってきません。順番が良いです。
そのうえで、音程、メジャースケール、マイナースケールへ進みます。スケールが分かると、ダイアトニックコードが見えてきます。コード進行の“材料”が整う流れです。
さらに、セブンスとメジャーセブンス、コード名の法則、転回形、ケーデンス、代理コードへと続きます。ここまで来ると、単にコードを押さえるだけでなく、「なぜその流れが気持ちよく聞こえるのか」を言葉で説明できるようになります。
2) 応用編で「よく出る理論」を実戦の語彙にする
応用編は、トライトーン、ドミナントモーション、ディグリーネーム、ツーファイブワン、dim7コード、裏コード、sus4、分数コードなどが並びます。いずれも、作曲やアレンジの現場で頻出する要素です。
たとえばツーファイブワンは、進行の定番です。ドミナントモーションは緊張と解決の感覚を説明します。裏コードやトライトーンは、響きを変えたいときの選択肢です。sus4や分数コードは、押さえ方と響きの関係を理解するのに役立ちます。
ここを“用語暗記”で終わらせず、実際の音で確認できるのが本書の強みです。QRコードで聴くと、理論が一気に現実になります。
3) 会話形式が「分かったつもり」を減らす
理論書を読んでいると、途中で分かった気になります。ただ、手元で音にすると再現できない。本書は生徒役の疑問が差し込まれるので、「分かったつもり」で進みにくい。質問と回答で理解が補強されます。
加えて、初心者がつまずくのは「言葉の意味」より「音の結びつき」です。コード名やスケール名を覚えても、音として聞き分けられないと使えません。本書は譜例を聴けるので、耳と理屈がつながりやすい。独学での最短ルートになりやすいと感じました。
類書との比較
音楽理論の入門書には、体系的で網羅的なものもあります。そうした本は辞書として強い一方で、初心者は途中で止まりやすい。本書は、必要な要素を段階で積み上げつつ、会話形式と音源で負荷を下げます。独学者に合う作りです。
また、基礎編のトピックが広いのもポイントです。譜面の読み方からコード名の法則、転回形までを一冊でつなげるので、学びの断絶が起きにくいと感じます。
こんな人におすすめ
- 楽器を始めたが、理論が分からずコードの丸暗記になっている人
- 作曲や編曲に挑戦したいが、スケールとコードの関係が曖昧な人
- 教科書的な説明が苦手で、音を聴きながら理解したい人
感想
この本を読んで良いと感じたのは、理論を「音で分かる状態」に持っていく工夫が多い点です。会話形式で疑問が先回りされ、QRコードで響きが確認できる。結果として、理論が頭の中の記号で終わりません。
基礎編の最後にあるケーデンスや代理コードまで辿り着くと、コード進行が“理由のある動き”に変わります。応用編の裏コードやdim7も、使い所が見えると武器になります。独学で理論を学び直したい人にとって、入り口として丁度よい一冊です。
練習のコツ(本書を「使える知識」にする)
音楽理論は、読んだだけだと定着しません。本書を読みながら、次のように小さく練習を挟むと理解が早いです。
- リズム:拍子を声に出し、手拍子で音価を体に入れる
- スケール:メジャー/マイナーを指板や鍵盤で弾き、音程の距離を確認する
- コード:ダイアトニックコードを作り、転回形で響きがどう変わるかを聴く
応用編へ進んだら、ツーファイブワンを何度も聴いて「緊張→解決」の感覚を掴むのが近道です。sus4や分数コードも、押さえ方を変えながら響きを確認すると理解が進みます。理屈を追いかけるより、音を先に身体へ入れる。本書はその学び方と相性が良い入門書だと思います。