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レビュー

概要

『「忘れっぽい」「すぐ怒る」「他人の影響をうけやすい」etc. ADHDコンプレックスのための「脳番地トレーニング」』は、加藤俊徳が提唱する「脳番地」の考え方を使って、ADHD傾向による困りごとを整理し、毎日の行動を立て直していく本だ。忘れ物、先延ばし、感情の爆発、過集中、人間関係のしんどさなどを、性格の欠陥ではなく脳の使い方の偏りとして捉え直す。ここが本書の出発点になっている。

タイトルにある「ADHDコンプレックス」は、診断の有無にかかわらず、ADHD的な困難を抱えながら自分を責め続けてしまう状態を指す。単に症状を説明するだけではなく、日常の困りごとをどのように観察し、どの回路をどう補えば楽になるかを示すので、読者は「自分はダメだ」という感覚から少し離れやすくなる。

読みどころ

読みどころは、ADHDの悩みを「気合いで直す話」にしないところだ。忘れっぽいなら記憶の補助をどう設計するか、衝動的なら行動の前にどう間をつくるか、感情が大きく揺れるなら何をトリガーとして把握するか、といった形で、困りごと別に具体的な対処へ落としていく。抽象論が少なく、「今日からどう工夫するか」が見えやすい。

また、脳番地という比喩がわかりやすい。脳の機能を地図のように考えることで、「自分は全部ダメだ」と丸ごと否定しにくくなる。ここは比較的得意だが、ここは疲れやすい、ここは補助が必要だ、という見方ができるようになるので、自己理解の輪郭がはっきりする。発達特性の本を読むと責められている気持ちになる人でも、本書は入りやすい。

さらに、本人だけでなく家族や職場の人が読んでも役立つ。ADHD傾向のある人は、怠けているのでも、反省が足りないのでもなく、負荷のかかりやすいポイントが偏っている場合がある。本書はそこを具体的に説明するので、周囲の理解を少し進めやすい。対人トラブルの火種を減らす実務書としても読める。

完全に特性を消すことを目指す本ではなく、困りごとと付き合う方法を増やす本であるのも重要だ。できないことをなくすより、できる形をつくる。そうした発想の転換が、この本のいちばん実用的なところだと思う。

実際、予定管理、持ち物管理、感情のクールダウン、作業の分割など、よくあるつまずきを生活の場面ごとに見直せるのが使いやすい。読むと「全部を一度に直す」のではなく、「よく崩れる一点を補う」ほうが現実的だとわかる。挫折しにくい改善の考え方としても優秀だ。

類書との比較

ADHD本には、診断の説明に比重を置くものと、整理術や時間管理術に寄せるものがある。本書はその中間にあって、脳の特徴の説明と、生活上の工夫の両方をつないでいるのが特徴だ。理論だけでも、テクニック集だけでもない。そのため、なぜその工夫が必要なのかを理解しながら実践しやすい。

また、一般的な自己管理本だと「メモを取る」「早く寝る」「環境を整える」で終わりがちだが、本書はそれがなぜ難しいのかも前提に置く。だから、自己管理本で何度も挫折してきた人ほど、本書の説明に救われる可能性がある。

こんな人におすすめ

  • ADHDと診断された人
  • 診断はなくても、忘れ物や衝動性で自己否定が強い人
  • 家族や同僚の特性を理解したい人
  • 根性論ではなく、具体的な補い方を知りたい人

感想

この本を読んで良かったのは、困りごとを「自分の意志が弱い」で終わらせないことだ。忘れっぽさも、怒りっぽさも、他人に影響されやすいことも、背景を分けて見られるようになるだけで対処の仕方が変わる。そうすると、自分を責める時間が少し減る。

発達特性に関する本のなかでも、本書は比較的「明日から使える」寄りだと思う。診断の知識を増やすためだけではなく、暮らしの詰まりを減らすための本として使いやすい。本人はもちろん、周囲の理解を進めるためにも読まれる価値がある一冊だ。

診断名をめぐる不安が強い人にも、本書は入り口としてちょうどいい。特性の説明だけに閉じず、毎日の困りごとをどう軽くするかに話が戻ってくるからだ。自己否定を減らしつつ、現実的な工夫へつなげたい人に向いた実用書だと思う。

家事、仕事、対人関係のすべてで「うまくいかない理由」が少し見えるようになるだけでも、この本の価値は大きい。苦手をなくす本ではなく、困り方に合わせて道具や環境を整える本として読むと、かなり使い勝手がいい。

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    佐々木 健太

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