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レビュー

概要

『けっきょく、よはく。』は、デザインの印象を大きく左右する余白をテーマにしたレイアウト本です。文字、写真、図版をどう並べるか以前に、何を置かないか、どこに空きを残すかを考えることが、見やすさや洗練度を決めると教えてくれます。紙もの、バナー、SNS画像、スライド資料など、日常的な制作物へ応用しやすいのが特徴です。

この本の魅力は、理論を難しく語りすぎず、ビフォーアフターの差で「余白が効く」とはどういうことかを体感しやすい点にあります。ノンデザイナーほど、情報を詰めたほうが親切だと考えがちですが、本書はむしろ逆だと示します。情報量を減らすのではなく、受け手が情報を理解するための呼吸を作る。その考え方が一本通っています。

読みどころ

いちばん役立つのは、余白を感覚だけでなく判断基準として扱っているところです。なんとなく広く空ける、なんとなく詰めるではなく、どこを目立たせたいのか、視線をどこへ流したいのか、どこで読む人を休ませたいのかを考えて余白を取る。本書はこの順番をかなり分かりやすく見せてくれます。余白は余った空間ではなく、意図を伝えるための要素だと分かります。

また、余白を増やすことが単なるおしゃれ化ではない点も大事です。余白があると、情報のまとまりが見えやすくなり、重要な要素が浮き上がります。資料、チラシ、サムネイル、プレゼンなど、情報を「読ませる」場面では特に効きます。本書を読むと、見づらいデザインの原因が配色やフォントではなく、実は余白不足だったと気づくことが多いはずです。

さらに、本書は削る勇気を持たせてくれます。伝えたいことが多いほど、人は全部を入れたくなります。しかし、全部を並べると、結果として何も伝わらなくなることがあります。本書は、余白を確保するために要素の優先順位をつけること、主役と脇役を分けることの重要性を自然に理解させます。これはデザイン本ですが、情報整理の本としてもかなり実用的です。

類書との比較

デザイン入門書には、配色、フォント、レイアウトの基本を幅広く扱うものが多くあります。本書はその中で、余白という一点に絞って深く見せるのが特徴です。網羅性では総合入門書に譲りますが、そのぶん「なぜ素人っぽく見えるのか」「どうすると整って見えるのか」が腹落ちしやすいです。

また、グリッドやDTPの専門書ほど厳密な理論書ではありません。だからこそ、デザイン職でない人でも使いやすいです。仕事で資料を作る人、SNS画像を作る人、ちょっとした告知物を自作する人にとっては、この軽さがむしろ強みになります。

こんな人におすすめ

資料やバナーを作るたびに「なんだかごちゃつく」と感じる人におすすめです。特に、要素を足して整えようとして、逆に見づらくしてしまう人には効きます。ノンデザイナーのビジネスパーソン、広報、個人事業主、ブロガー、SNS運用担当などと相性がいいです。

本格的なタイポグラフィや印刷設計を深く学びたい人には入門的すぎるかもしれません。ただ、日常の制作物を一段きれいに見せたい人には、かなり費用対効果の高い一冊です。

感想

この本を読むと、デザインは足し算の勝負ではなく、引き算の精度だと実感します。余白を恐れて情報を詰め込むと、読み手はかえって迷います。本書は、その当たり前を具体例で見せてくれるので、読後すぐに自分の資料や画像を直したくなります。

特に良いのは、センスの話で終わらせないところです。余白をどう取るかは天性の感覚ではなく、観察と判断で改善できると分かります。デザインが苦手な人ほど、「余白を残してよい」と許可をもらえる感覚がある本です。資料や告知画像を作ったあと、どこを削れば見やすくなるかを考える癖もつきます。見やすさを上げたい人だけでなく、伝わり方を整えたい人にもすすめたい一冊です。

実務では、余白を増やすだけで会議資料はかなり読みやすくなることがあります。本書はそうした小さな改善へ直結しやすいです。デザイン職でなくても効果を感じやすいです。見た目の問題を、情報設計の問題として考え直せる点も大きいです。

デザインの本でありながら、情報をどう減らし、どう優先づけるかを考える本としても読めます。作っては詰め込み、あとで削る癖がある人には特に効きます。デザインが整うと、内容への信頼感まで上がることを実感しやすいです。

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    佐々木 健太

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