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レビュー

概要

『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に働くための本』は、仕事の場面で起きがちな「わかっているのになぜかできない」を、具体的な工夫でほどいていく実用書です。出版社内容情報では、発達障害の特徴として「同時並行作業が苦手」「段取りが取れない」「ケアレスミス」「コミュニケーションが苦手」などが挙げられ、それが仕事の達成を阻害している、と整理されます。そこで本書は、職場での“困りごと”に焦点を絞り、解決のアイデアを提示する構成です。

目次は6章で、テーマが非常に明快です。第1章は先延ばし・集中力(「先延ばし癖」を何とかしたい)、第2章は段取りと時間管理(スケジュール・業務管理)、第3章はケアレスミス、第4章は物忘れ(メモ取り)、第5章は片づけ(仕事・情報・ものの整理)、第6章は人付き合い(報連相・コミュニケーション)。困りごとを“症状の説明”で終わらせず、仕事に落とすところまで持っていくのが狙いだと分かります。

読みどころ

1) 「悩み→原因→解決アイデア」の順で、行動に変えやすい

内容説明の通り、本書は発達障害で起きがちな悩みを出し、その原因を整理し、具体的な解決アイデアへつなぐ手順です。ここが大事で、悩みの正体が「性格」や「根性」にすり替わりにくい。

たとえば先延ばしは、怠けではなく、着手のハードルが高すぎたり、タスクが塊のままだったりして起きます。段取りが苦手なのは、頭の中で同時に扱う情報量が多すぎるから、ということもある。原因が言語化されると、対策を選びやすくなります。

2) 第1〜2章の「先延ばし」「段取り」は、仕事の土台を立て直す章

仕事が崩れるとき、最初に崩れるのは“時間”です。先延ばしが続くと締切が迫り、焦りでミスが増え、さらに自己評価が下がる。本書が第1章で先延ばしと集中力を扱い、第2章でスケジュール・業務管理・時間管理へ進むのは、現実的だと感じました。

ここで「自分は時間管理が苦手だから終わり」ではなく、仕組みのほうを変える発想が出てきます。仕事術の本ですが、メンタルの守りにもつながる章立てです。

3) 第3〜5章は、“ミス”と“忘れ”と“散らかり”を分解している

ケアレスミス、物忘れ、片づけられない。これらは職場での評価に直結しやすく、本人もしんどい領域です。本書は第3章でミス、第4章でメモ取り、第5章で整理、とテーマを分けます。

分けてくれることで、「ミスは減ったけど、情報の整理が追いつかない」「メモは取れるけど、見返せない」など、次の課題が見つけやすい。全部を一気に直そうとせず、改善を積み上げられる設計です。

4) 第6章の「報連相・コミュニケーション」が、職場の摩擦を減らす

職場の困りごとは、作業だけでなく人間関係でも増幅します。本書は最後に「職場・仕事の人付き合い」を置き、報連相やコミュニケーションを扱います。ここが入ることで、作業面の工夫が“周囲との連携”までつながります。

コミュニケーションが苦手な人ほど、「言わなくても分かるだろう」と「言うのが怖い」の間で揺れます。報連相を“勇気”ではなく“手順”として扱う視点は、実務的に助かります。

5) 章を“症状別”ではなく“困りごと別”に読めるので、挫折しにくい

発達障害関連の本を読むとき、知識が増えるほど「結局どうすればいいの?」となることがあります。本書は「先延ばし」「段取り」「ミス」「物忘れ」「片づけ」「人付き合い」と、困りごとをそのまま章にしているので、いま一番困っているところから読み始められます。

全部を完璧にするのではなく、まず1章分だけ工夫を増やす。次に、同じ工夫を習慣にする。その小さな積み上げができる設計になっているのが、続けやすさにつながります。

類書との比較

発達障害に関する本は、特性の説明に厚い本、診断や制度に寄った本、支援者向けの本など幅があります。本書は「職場でどう回すか」に焦点があり、章立てもタスク処理に直結しています。施設での実例をベースにしていると、内容説明でも触れられている通り、机上の理想より“現場でよくあるつまずき”に寄った読み心地です。

一方で、困りごとが重い場合は、本の工夫だけで解決しないこともあります。診断や治療、合理的配慮の相談などは、医療・支援機関や職場の制度と併用したほうが安心です。本書はその前提のうえで「今日からできる工夫」を増やす一冊だと捉えると、役割がはっきりします。

こんな人におすすめ

  • 先延ばしや段取りで仕事が詰まり、自己嫌悪になりやすい人
  • ケアレスミスや物忘れを、仕組みで減らしたい人
  • 片づけや情報整理で、常に探し物をしてしまう人
  • 報連相が苦手で、職場の摩擦を減らしたい人

感想

この本は、発達障害の話を「分かってほしい」で終わらせず、「どうすれば回るか」に落としてくれるのが良いところだと感じました。先延ばし、段取り、ミス、メモ、整理、報連相。どれも仕事の“詰まりポイント”なので、章ごとに1つずつ試していくと成果が見えやすいです。

特に、できない理由を丁寧に分解したうえで、工夫の選択肢を増やしてくれるのが救いになります。頑張り方を変える、というより、仕事が回るように環境と手順を調整する。その感覚を持ちたい人に向く一冊でした。

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    大手出版社で書籍編集を10年経験後、独立してブロガーとして活動。科学論文と書籍を融合させた知識発信で注目を集める。
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    佐々木 健太

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