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レビュー

概要

本書は、「いつでも会社を辞められる」と思える力=どこでも稼げる力を、8人の実践者の知恵から学ぶ内容です。転職、リストラ、起業など、人生のイベントは予測しにくい。だからこそ、会社に残る場合も離れる場合も、自分で選べる状態を作っておくことが大事だ、という問題意識がベースになっています。

構成はオムニバス形式で、章ごとにテーマと執筆者が分かれています。キャリアをデザインする(安藤美冬)、人脈をつくる(中村貞裕)、「企画」をつくる(山本由樹)、お金について考える(和泉昭子)、マーケティングとは?(村尾佳子)、自分サイズのビジネスを立ち上げる(楠本修二郎)、人を雇って仕事をする(坂野尚子)、起業とはどういうことか(藤田晋)。同じゴールを、複数の角度から照らす作りです。

読みどころ

1) 「辞める/辞めない」ではなく、「選べる状態」を作る

この本が刺さるのは、会社を辞めることを正義にしないところです。辞めてもいいし、辞めなくてもいい。ただし、辞められない状態はしんどい。ここを出発点にすると、「いまの仕事を続ける」選択も前向きになります。

そのために必要なのが、キャリア術、人脈術、企画術、お金術、マーケティング術、起業術。出版社内容情報でも、この分解がはっきり提示されています。漠然と不安なときほど、「どの能力が足りない不安なのか」を分けて考えられるのが助かります。

2) キャリア編:自分の働き方を設計する

Chapter1は「キャリアをデザインする」。ここでは、スキルの棚卸しや、自分が力を発揮しやすい環境の言語化を扱います。肩書に縛られず働く、という言葉は軽く聞こえますが、実際には「何で価値を出すか」を決めないと成立しません。キャリアの章は、その土台づくりとして読めます。

3) 人脈・企画・お金:稼ぐ前に必要な「つながり」と「組み立て」

人脈術(Chapter2)は、名刺の数ではなく、仕事が生まれる関係をどう作るかの話に寄ります。企画術(Chapter3)は、「企画=アイデア」ではなく、相手に伝わり、動く形に整える技術。お金術(Chapter4)は、稼ぐ前に“守り”を整える感覚を渡してくれます。

この3つは、会社員でもすぐ使える領域です。いきなり起業しなくても、社内外のプロジェクトで効く。だから、読み始めるハードルは低いと思います。

4) マーケティングと起業:自分の価値を外に届ける

Chapter5の「マーケティングとは?」は、稼ぐ力を「発信力」だけにしないための章です。価値を作り、届け、選ばれる仕組みを考える。その視点が入ると、SNSのフォロワー数に振り回されにくくなります。

後半は起業術が続き、特に「人を雇って仕事をする」「起業とはどういうことか」といった章で、夢だけではない現実が見えてきます。自由の裏側にある責任や、組織を作る難しさに触れることで、起業を“逃げ道”にしない読み方ができます。

5) 8人の“違い”が、そのまま選択肢になる

オムニバス形式の良さは、正解が1つに固定されないことです。ノマド的な働き方に寄った話がある一方で、組織を作って人を雇い、事業を伸ばす話もある。自分に合うのはどのルートか、逆に「これは今の自分には無理がある」と線引きする判断材料にもなります。

また、同じテーマでも、キャリア・人脈・企画・お金・マーケティング・起業で見えている景色が違うので、「稼ぐ力」を多面的に捉え直せます。1人の成功談だと憧れで終わりがちですが、8人分あると、現実のパーツとして持ち帰りやすいです。

類書との比較

独立・起業本は、「会社を辞めよう」「好きで稼ごう」と背中を押すタイプが多い印象です。本書は、辞めるかどうかより、「どこでも稼げる力」をパーツに分解して鍛える方向。しかも、1人の成功談に寄りすぎず、8人分の視点を並べているので、読者が自分に合うヒントを拾いやすいです。

また、キャリア・人脈・企画・お金・マーケティング・起業が一冊の中でつながるので、「次に何を伸ばすか」を考えやすい。行動の優先順位づけに使えるところが、実務本としての強みだと感じました。

こんな人におすすめ

  • 今の会社を続けたいが、「この先も大丈夫?」と不安がある人
  • いつか独立したいが、何から準備すべきか分からない人
  • 企画・お金・人脈など、稼ぐ力を分解して鍛えたい人
  • 成功談より、具体的な仕事術として読みたい人

感想

この本を読んで良かったのは、働き方の話が「勇気」だけで終わらないことでした。辞める決断は派手ですが、日常で積む準備は地味。でも、その地味な準備があるから、選べるようになる。本書は、その準備をテーマ別に見える化してくれます。

オムニバス形式なので、自分の課題に近い章から読めるのも助かります。キャリアに迷うなら1章。お金が不安なら4章。起業に憧れがあるなら後半。いまの自分の場所から読み始められる、現実的な“仕事の教科書”だと感じました。

読み終えたあとに残るのは、「辞める/辞めない」の二択ではなく、「次の半年で何を積むか」という視点でした。たとえば、企画の型を1つ増やす、人に頼れる関係を作る、固定費を見直す。そういう小さな積み上げが、いつか選択肢を増やす。本書はその積み上げを、章立てで後押ししてくれる一冊だと思います。

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    佐々木 健太

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