レビュー
概要
『大人気レストラン然の膳の世界一美味しいカンタン薬膳ごはん』は、薬膳を「特別な食材」ではなく、「いつもの献立の組み合わせ」で実現するレシピ本です。タイトルの通り、難しい工程や聞き慣れない材料に寄せません。むしろ、普段の料理にひと工夫を足して、体の調子を整える方向へ導きます。
本書の核は、第1章で繰り返し出てくる「組み合わせ」です。たとえば、なぜとんかつにキャベツが添えられるのか。そこに薬膳の視点を重ねます。また、みそ汁にレモン汁を数滴足すだけで成立する「足すだけ薬膳ごはん」も紹介されます。こうした具体例が、薬膳を一気に日常へ引き寄せます。
本書の具体的な中身
構成は4章です。
- 第1章は、組み合わせのひと工夫で作る薬膳ごはんです。とんかつとキャベツの関係や、みそ汁にレモン汁を数滴足す話が出ます。まず「考え方」を体感できます。
- 第2章は、作り置きできる「かける薬膳」です。ツナとパセリのそぼろふりかけや、雑穀キヌアとごまのカレーふりかけなどが並びます。忙しい人に効きます。
- 第3章は、薬膳ごはんのアイデアレシピ50です。主菜からデザートまで幅広く、組み合わせのコツがレシピで身につきます。
- 第4章は、薬膳を「病気にならない体をつくる健康ごはん」として捉え直します。陰陽五行説にも触れ、考え方の背景を補います。
収録は60品とされており、作例の量も十分です。読みものとしても、献立の引き出しとしても使えます。
読みどころ
1) 薬膳が「足し算」で始められます
薬膳という言葉に構える人は多いと思います。ですが本書は、ゼロから作り替えるのではなく、既存の献立に「足す」発想です。みそ汁にレモン汁を足すような小さな変更なら、買い物も増えません。続けやすさの設計が上手いです。
2) 作り置きの章が、実用性を底上げします
体に良い食事は、結局「続くかどうか」で決まります。第2章のふりかけや作り置きは、継続を助けます。ツナとパセリのそぼろふりかけ、雑穀キヌアとごまのカレーふりかけなど、かけるだけで一品の方向性が変わります。忙しい日ほど効きます。
3) レシピが「主菜からデザートまで」広いです
薬膳の本は、スープや粥に偏りやすい印象があります。本書は主菜も扱い、デザートまで含めて提案します。組み合わせのコツが複数の場面で反復されるので、読んで終わりになりにくいです。
使い方の提案
本書を買って一番損をするのは、レシピを眺めて終わることです。おすすめは、次の順番です。
1つ目は、第1章の「足すだけ薬膳」をまず1つだけ試します。みそ汁にレモン汁を数滴足すような、失敗しにくいものが良いです。2つ目は、第2章から作り置きを1つ作り、冷蔵庫に置きます。これだけで、平日の勝率が上がります。3つ目は、第3章から「いつもの主菜」を1つ選び、組み合わせの理由をメモします。理由が残ると応用が効きます。
家庭に落とすコツ
薬膳を家庭へ落とすときに迷いが出やすいのは、「何を買い足すか」です。本書はそこを、買い足しより組み合わせで解きます。だから、冷蔵庫の中身から始められます。
たとえば、主菜を決めたら、付け合わせと汁物を「補う役」として考えます。とんかつにキャベツが添えられる話は、その見本です。先に主菜を決め、次に相性の良い添え物を足す。この順番を覚えるだけで、献立の作り方が変わります。
陰陽五行の使いどころ
第4章では陰陽五行説にも触れます。ここは、丸暗記するより「ヒント集」として使うのが良いです。体調が揺れるときは、食事を全部変えるより、まず一品だけ方向を変える方が続きます。陰陽五行は、その一品を選ぶための手がかりになります。
具体的な献立の組み立て例
本書の読み方をそのまま献立にすると、次のように組み立てやすくなります。
- 今日は揚げ物を食べたいので、付け合わせはたっぷりの野菜にします。汁物はみそ汁にします。仕上げにレモン汁を数滴足してみます。
- 仕事が忙しい週は、作り置きの「かける薬膳」を先に作ります。ふりかけやそぼろがあるだけで、主菜の自由度が上がります。
ここまで具体に落とせると、薬膳が特別なイベントではなく、日常の選択になります。
こんな人におすすめ
- 薬膳に興味はあるが、専門食材や難しい工程は避けたい人
- 体調を整える食事を続けたいが、毎日凝った料理はできない人
- 作り置きを使って、平日の食事を楽にしたい人
- 献立のマンネリを、組み合わせの工夫で崩したい人
感想
この本を読んで良かったのは、薬膳を「思想」ではなく「台所の技術」にしてくれた点です。とんかつとキャベツのような、日常の定番に意味を見つけると、献立が学びになります。さらに、レモン汁を数滴足す話のように、行動へ落ちる工夫が多いです。
薬膳は、気合いの世界に見えがちです。ですが本書は、気合いより再現性へ寄せています。小さな足し算を積み重ねたい人にとって、かなり使える一冊です。