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レビュー

概要

『セルフ・コンパッション[新訳版]』は、セルフ・コンパッション(自分への思いやり)を、学術的な知見とエクササイズで身につけていく本です。内容説明では、実証研究の先駆者である著者が自身の体験や学術的な知見をもとに分かりやすく解説し、随所のエクササイズに取り組みながらページをめくることで自然と身につく、とされています。

「疲れたあなた」を労わるバイブルが新訳版で登場、という文脈もあり、変化の速いストレスが多い環境で、自己批判を強めやすい人に向けた一冊です。

読みどころ

1) 5部構成で、理解→実践→生活へ繋ぐ

目次は、第1部「なぜセルフ・コンパッションなのか?」から始まり、第2部で核となる構成要素、第3部で恩恵、第4部で人間関係、第5部で喜びへ進みます。

第1部には「セルフ・コンパッションを見つける」「愚行はおしまいにする」。ここで“自分を痛めつける癖”に気づきます。第2部では「自分に優しくする」「誰しも経験することだと知る」など、要素に分けて学べるようになっています。

2) 「自尊感情ゲームをやめる」の言葉が刺さる(第3部)

第3部には「感情面のレジリエンス」「自尊感情ゲームをやめる」などが入ります。自尊感情は上がると気持ちいいけれど、下がったときに一気に苦しくなる。セルフ・コンパッションは、点数を上げる話ではなく、転んだときに戻れる話です。

3) 人間関係と育児まで扱うので、現場で迷いにくい(第4部)

第4部には「他者への思いやり」「セルフ・コンパッションを実践する育児」など。自分に優しくするのが難しいのは、人間関係の摩擦の中です。そこへ踏み込む章があると、「結局、現実はどうするの?」という疑問が置き去りになりません。

4) 「セルフ・アプリシエーション」で受け取り直す(第5部)

第5部には「蛹から蝶へ」「自分の真価を認める―セルフ・アプリシエーション」があります。セルフ・コンパッションは、落ち込んだ自分をなだめるだけではなく、回復したあとに“自分の価値を扱い直す”ところまで含みます。

自己批判が強い人は、良いことがあっても受け取りにくいことがあります。だから、最後に「認める」「感謝する」へ戻ってくる構成は、甘い締めではなく、回復の仕上げとして機能します。

進め方のおすすめ

この本は、全部を一気に読むより「読んだ範囲を少し試す」読み方が向きます。第1部を読んだら、自己批判の言葉を書き出してみる。第2部を読んだら、その言葉に対して「優しさ」「共通の人間性」「マインドフルネス」のうち、どれを足すとバランスが取れるかを考える。

途中で止まっても、目次が「回復の道筋」になっているので、自分がどこまで来たかが見失いにくいです。

エクササイズをやるときは、完璧にやろうとしない方が続きます。短時間でもいいので、読みながら手を動かしてみる。うまくできたかどうかではなく、「いまの自分にどう響いたか」を記録する。それだけでも、自己批判の自動運転が少し緩みます。

第5部まで進むと、落ち込んだ自分を慰めるだけでなく、回復した自分をきちんと受け取る話になります。そこまで含めて「自分に優しくする力」だと感じました。

読むだけでなく、試して残すことが大切です。

旧版を読んだことがある人へ

同じテーマの本を以前読んだことがある人でも、新訳版は「今の自分に届く言葉」と出会い直す機会になると思います。セルフケアは、正しい理屈を知るより、厳しい状況で思い出せる言葉を持っているかが大事だからです。

この本は、随所にエクササイズを置くことで、読みながら自分の反応を素材にしていきます。読み物として消費せず、手を動かして確かめる。そこに新訳版としての価値があると感じました。

類書との比較

セルフケアの本は、励ましの言葉が中心で終わることがあります。本書は、構成要素で分解し、エクササイズを通して“身につける”方向へ寄せています。読んで気分が上がるというより、読むほどに戻り方が分かるタイプです。

こんな人におすすめ

  • 自分に厳しすぎて回復に時間がかかる人
  • ミスや失敗を長く引きずってしまう人
  • 自己肯定感の話に疲れてしまった人
  • 実践と理解をセットで進めたい人

感想

この本を読んで良かったのは、「優しくすること」が精神論ではなく、再現できるスキルとして扱われていたことです。つらいときに優しくしよう、というだけでは難しい。でも要素を分けて、エクササイズで練習する形なら、少しずつ身につきます。

セルフ・コンパッションは、自分を特別扱いすることではなく、「誰でもつらい」「だから手当てをする」という当たり前を自分にも適用することです。読後は、自分の中の言葉が少し柔らかくなる。そんな感覚がありました。

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    大手出版社で書籍編集を10年経験後、独立してブロガーとして活動。科学論文と書籍を融合させた知識発信で注目を集める。
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    佐々木 健太

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