レビュー
概要
『くっついた』は、ページをめくるたびに「くっついた!」が繰り返される、赤ちゃん向けの絵本です。出版社内容情報にもある通り、最後は赤ちゃんのほっぺたをはさんで、お父さんもお母さんも一緒にくっついた!という締め方になっています。
読了がゴールではなく、読み終わりで自然にスキンシップが起きる。読むというより、一緒に反応して、笑って、くっつく時間を作る本です。
読みどころ
1) 反復が、赤ちゃんの「次」を引き出す
この絵本の主役は「くっついた!」の反復です。繰り返しがあると、次に何が来るかを赤ちゃんが予測しやすくなる。予測できると楽しい。楽しいから、もう1回になる。
読み聞かせで困るのは、赤ちゃんの集中が続かないことです。本書は集中を引っ張るのではなく、短い波を何度も作ってくれます。だから、読み手の負担も軽くなります。
2) 「くっついた!」が、スキンシップの合図になる
ページをめくった瞬間に「くっついた!」と言えるので、読み聞かせがそのままスキンシップの合図になります。絵本の中だけで終わらせず、その場でほっぺたや手をくっつける。そうすると、絵本の時間が一気にあたたかくなります。
3) 大人が照れずにできる「遊び」になっている
子ども向けの遊びって、慣れていないと照れます。でもこの絵本は、やることが明確です。めくる、言う、くっつく。ルールが簡単なので、遊びに不慣れな大人でも入りやすいと思います。
読み方のコツ
同じ言葉の繰り返しだからこそ、読み方で楽しさが増えます。
- 「くっついた!」の前で少し間を作る
- 声の大きさを変える
- 指で絵をなぞってから言葉を出す
- 最後はほっぺたでくっつく
短い絵本なので、寝る前に1冊だけ読む、朝のバタバタした時間に気持ちを整える、という使い方もしやすいです。
「読む」を超えて、家族の合図になる
出版社内容情報に「ニッコリ笑顔をさそう絵本」とある通り、この絵本は気分の切り替えに使いやすいです。たとえば、寝る前に1冊だけ読んで、最後はほっぺたでくっつく。泣いてしまったときに、ページをめくって「くっついた!」で抱っこする。そうやって、絵本が家族の合図になります。
赤ちゃん絵本は冊数が増えると、結局どれを読むか迷いがちです。でも『くっついた』は短いので、「迷ったらこれ」にしやすい。毎日の中でくり返し使われることで、赤ちゃんにとっても安心の型になっていくと思います。
月齢が上がっても使える
赤ちゃんのころは反応が少なくても、繰り返しの絵本は“蓄積”が効きます。少し大きくなると、次のページを待ったり、「くっついた!」のところで体を寄せてきたりする。反応が育つ過程を楽しめるのも、この絵本の魅力だと思います。
大人側の気持ちも、ふっとゆるむ
赤ちゃん絵本は「赤ちゃんのため」に選びがちですが、『くっついた』は大人の気持ちにも効くと思います。短い言葉で、同じリズムをくり返す。最後はほっぺたをはさんでくっつく。ここまで来ると、読み聞かせというより、呼吸の深さが戻るような時間になります。
日中は慌ただしくて、つい「早くして」が増える。でも、絵本の時間だけは「くっついた!」で終われる。そういう小さな成功が残るのは、この本の良さだと感じました。
類書との比較
反復系の赤ちゃん絵本は多いですが、本書は反復が“触れ合い”へ直結する点が特徴です。言葉遊びで終わらず、読み終わったあとに体が動く。
文章が短いぶん、声のトーンや間を変える余地があります。同じ「くっついた!」でも、ささやく、強めに言う、間を作る。そういうアレンジができるので、読み手側も飽きにくいです。
こんな人におすすめ
- 0〜2歳くらいの読み聞かせで迷っている人
- 絵本の時間をスキンシップに繋げたい人
- 短くて反応が返ってくる絵本がほしい人
- 親子で一緒に笑える定番を探している人
感想
この絵本を読んで感じたのは、「言葉が少ないからこそ、関係が濃くなる」ということでした。読み聞かせの主役は、絵本そのものではなく、一緒にいる時間。『くっついた』は、その時間をシンプルに、楽しく、確実に作ってくれます。
読み終わったあとに、現実のほっぺたがくっつく。笑顔が残る。赤ちゃん絵本の良さがきれいに詰まった1冊だと思いました。
「今日うまくいかなかったな」という日でも、この絵本は短いので、最後までたどり着けます。そして最後は必ずくっつける。読み聞かせが“達成感”になるのが、この絵本の優しさだと感じました。
短いのに、気持ちがちゃんと動く。だから何度でも読み返したくなります。
読み返すたびに、家族の合図が増えていく絵本だと思いました。
ずっと手元に置きたいです。