レビュー

概要

清水建二とすずきひろしのコンビが、語源×イラストという二重構造で英単語を解く「英単語の語源図鑑」シリーズの第1弾。287ページに及ぶ本書は、ad-, con-, de-, pre- という接頭辞、語幹、接尾辞を順に追いながら、その意味と紐づいた代表例をページに並べていく。1語ごとに1枚のイラストと大きく書かれた語源解説がついており、語源を一種類ずつ見ることで、芋づる式に語彙が広がる仕組みになっている。著者は「100の語源で1万語を習得できる」として、語彙は記憶するのではなく構造で読み解くべきだと説く。英語の語根を「漢字の部首」に見立て、語源を知ることでまずは意味の心臓部を押さえ、発音や派生も自動的に「芋づる」できるようになると読ませる。

紙面はまるで研究所のホワイトボードのように、「語源」「例」「イメージ」の三列が丁寧に並び、右ページには日本語で補足された語根メモが付箋のように貼られている。作者が提示する「語源の指針」は、まさに英単語の構造を“見取り図”にしたものだ。

読みどころ

  • 第1章のad-、con-の章では、ペンギンが横断歩道を渡るようなかわいらしいイラストとともに、adjacent, adapt, addict, addendum が並ぶ。「前方へ」という接頭辞がもたらす意味の色合いを視覚で確認し、文章のあとに例文を読むと、語源と語の使い分けが一度に体験できる。清水氏が「語源を手元に置くと、辞書が開けなくても英語の精度が上がる」と語るように、単語が実際の視覚的シーンに結びつく瞬間が繰り返される。
  • 中盤の語根セクションでは、phon(音)、scrib/script(書く)、mit/miss(送る)などが、エピソード付きで展開される。語根の上に、接尾辞のルールも綴られており、like-ly-looking, read-able, act-ion のような派生をショートストーリーに仕立ててくれる。イラストで主語を描き、矢印で接尾辞の「装飾」を示す構図が多用されていて、語義を追っていくと、まるで英語を一枚の絵にトレースしていくように感覚が変わってくる。
  • 巻末には「使える語源リスト」と「単語の活用トレーニング」が差し込まれており、左ページに語源、右ページにフラッシュカード形式の問いかけがある。たとえば「trans-」では「transport」「transmit」「transparent」を並べ、横に「動詞・名詞の使い分け」を親しみやすい4コマと共に描いてある。この見開きは、習った語源を実践的に想起するトレーニングとして使える。

類書との比較

『桜井俊氏の語源で覚える英単語』が「語源そのものを解説する文献的な手法」だとすると、本書は「目で見て記憶する」動線を意識している。欄外で補足語源まで追いかける『語源でわかる英単語』は深掘り型だが、かんき出版の『続 英単語の語源図鑑』シリーズと合わせると、本書はいわばファーストステップを担当する。『語源からリズムで覚える単語帳』のように音の反復を求める教材と違い、図鑑的なページをめくるだけで視覚と連動する点がユニークだ。親しみやすく、1冊で読者自身が「芋づるの経路」を体験できる点で、単語カードよりも「語源の接続詞」を感じさせる。

こんな人におすすめ

  • 「1万語」の壁にぶつかって単語学習を挫折してきた学習者。
  • 語源をビジュアル化して、語義のイメージを補強したい英語教師。
  • ビジネスの英語で「なぜこの単語だけ通じるのか」を整理したい社会人。
  • 親子で英語を身につけたい家庭で、カード替わりに使いたい保護者。

感想

「見るだけで語彙が増える」という副題は大げさに聞こえるが、語源を知ると、知らなかった単語を見たときにも「この語根があるからきっとこういう意味だ」と推測できるようになる。図鑑的な1ページに1語をパッケージし、接頭辞/語根/接尾辞をそれぞれ色分けして見せてくれるため、記憶のフックも作りやすい。実際、連続するページで、affection→affect→affectiveと展開する様子を眺めると、以前はバラバラだった単語が「揺れる色」で繋がっていく。本文のテンポも軽快で、短時間の読書でも「語源の穴」が埋まっていく感覚があり、語彙力が即座に増えた気分になる。本書を読み終えて、「あの単語って何の語源だったっけ」と周囲の言葉を観察するクセがついた。音読ではなく「視て、記して、つながる」経験を求める人にとっては、長く使える1冊になりうる。

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    佐々木 健太

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