レビュー
1日の行動を、そのまま英語に置き換える発想が強い
『起きてから寝るまで英語表現1000』は、1日の「体の動き」と「心のつぶやき」を英語で言えるようにするためのフレーズ集です。内容説明の例がそのまま本質を言っています。「インスタ映えする景色」「仕事がたまってきた」「予定がかち合う」「今日は手抜きごはん」。こういう日本語は、日常で頻繁に出ます。ところが英語にすると急に詰まる。理由は単純で、授業で習う英語と生活の英語がズレているからです。
本書の良さは、生活の英語を「朝から夜まで」で整理したことです。思いつきでフレーズを覚えると、復習の軸がなくなります。軸がないと、覚えたはずの表現が抜けます。本書は朝、通勤、仕事、スマホ・PCライフ、家事、家で過ごす、健康・美容、趣味、外食・買い物、夜という10章で、復習の順番を作ります。
「独り言英語」を、習慣に落とし込むための構成
本書の使い方は明快です。まず日本語の場面を想像します。次に英語へ置き換えます。言えない表現が出ます。そこが伸びしろです。たとえば朝なら、起きる、支度する、天気を見る、出発する。通勤なら、混む、遅れる、乗り換える、座れない。仕事なら、会議、締め切り、やり直し、優先順位。こういう場面は毎日出ます。毎日出る場面は、反復しやすい。反復しやすいから身につきます。
英会話で詰まる人は、話題がないのではありません。言いたいことはあります。ただ、英語が出ません。本書は、言いたい内容を先に用意します。そのうえで英語を当てます。会話の材料が増えるので、沈黙が減ります。
10章の分け方が、そのまま復習のループになる
目次は、朝、通勤、仕事、スマホ・PCライフ、家事、家で過ごす、健康・美容、趣味、外食・買い物、夜です。ここが強い。英語表現集は、読み終えた直後は満足します。ところが翌週には忘れます。忘れる理由は、復習の場所が分からないからです。本書は「朝の表現が弱い」「仕事の言い回しが薄い」といった弱点の場所を、章で特定できます。特定できると、戻れます。
また、章の切り方が現代の生活に寄っています。スマホ・PCライフがあるので、通知、検索、オンライン会議のような行為を英語にしやすい。家事や買い物の章があるので、生活の動作も埋まります。英語は、旅行や試験のためだけの道具ではありません。生活の道具として扱うほど、伸び方が安定します。
スマホ・PCライフの章が、現代の生活に合う
目次に「スマホ・PCライフ」が入っているのも良いです。英語学習の本は、生活を古い想定で語ることがあります。ところが今の生活は、通知、検索、SNS、オンライン会議で回ります。英語もそこへ入ってきます。返信する、スクショを撮る、リンクを送る、アプリが落ちる。こういう表現が言えると、英語は机の上から生活へ降ります。
また、健康・美容、外食・買い物も実用度が高い領域です。海外旅行や出張で必要になるのは、難しい議論より生活の確認です。体調、食事、支払い、予約、道案内。ここが言えると、英語を使う不安が減ります。
類書比較:瞬間英作文より「生活の語彙」を先に埋める本
日常英会話の類書には、文型を積み上げる瞬間英作文系があります。あれは骨格作りに強いです。ただ、骨格があっても語彙が足りないと、言いたい内容が作れません。本書はその穴を埋めます。生活の場面を先に並べ、語彙と表現を当てます。結果として、文型が回り始めます。
また、旅行英会話の本は、場面が旅行に偏ります。本書は旅行にも効きます。ただ、中心は日常です。日常で回せる表現は、結果的に旅行や仕事でも使えます。学習の投資対効果が高いタイプです。
使い方:1日3分でも「同じ章を3日連続」で回す
本書は1000表現なので、最初から最後まで走ろうとすると折れます。おすすめは、章を決めて回す方法です。たとえば通勤の章だけを3日連続で見ます。すると、同じ場面で同じ語が出てきます。反復が生まれます。次に仕事の章へ移ります。章単位で区切ると、学習が続きます。
さらに効果が出やすいのは、独り言のルールを決めることです。たとえば「今やっていることを英語で言う」「次にやることを英語で言う」「気持ちを英語で言う」の3つだけにします。これだけでも、会話の材料が増えます。材料が増えると、オンライン英会話や会議で口が開きやすくなります。
こんな人におすすめ
- 英語を勉強しているのに、日常の一言が出ない人
- 英会話で沈黙しがちで、話題の材料を増やしたい人
- スキマ時間に、独り言英語で習慣化したい人
英語力は、特別な話題で伸びるのではありません。日々の行動を英語にできるかで伸びます。本書はその土台を、1日という時間軸で作ってくれるフレーズ集でした。
続けるコツは、完璧に言おうとしないことです。言えない表現が出たら、本書へ戻ります。その往復を増やすほど、日常英語が増えていきます。