レビュー

概要

『「和」の行事えほん 2 秋と冬の巻』は、秋から冬にかけての伝統行事を、由来と意味をセットで紹介する絵本です。行事は「やるもの」でもありますが、「知るもの」でもあります。知ることで、やり方の優先順位が変わる。本書はその体験を、子ども向けに翻訳してくれます。

この巻は、9月から2月までの季節を扱います。目次も、9月、10月、11月、12月、1月、2月という並びで月ごとに整理されています。内容紹介の中では、お彼岸や七五三、さらにお正月の行事あれこれが挙げられていて、秋冬の「定番だけど説明が難しいところ」を丁寧に拾ってくれます。由来を押さえると、単なる予定ではなく、季節の節目として立ち上がります。

読みどころ

1) 「お彼岸」や「七五三」を、説明できる言葉にしてくれる

子どもに聞かれて困る行事ほど、家庭では曖昧なまま流されます。本書は、行事の意味を、子どもの目線の言葉へ変換します。 だから「どうして?」にも答えやすくなります。

答えを丸暗記するというより、話の骨組みが手に入る感覚です。親子の会話の助走として役に立ちます。

2) 行事を「季節の楽しみ」に戻す

秋冬の行事は、予定が多いぶん作業になりがちです。本書がいいのは、行事をこなす目的ではなく、季節を楽しむ目的で読めるところです。

由来がわかると、行事の手触りが変わります。「やらなきゃ」から「味わいたい」へ。ここが、忙しい家庭ほど効くポイントだと思います。

3) お正月の「なぜ?」が、日常会話に落ちる

お正月は、やることが多い行事です。飾り、あいさつ、食べもの。どれも「昔からそうだから」で片づけられがちです。本書は、お正月を「行事あれこれ」として扱い、疑問を置き去りにしません。

やり方の正解を押しつけるより、意味の道筋を作ってくれる。だから、家庭の事情に合わせて「今年はここだけやろう」と決めやすくなります。

4) 2冊そろえると、暦の見え方が変わる

春夏巻と秋冬巻を並べると、行事が点ではなく線になります。1年が「なんとなく過ぎる」から、「節目で区切られる」に変わる。子どもにとっては、季節の理解が深まります。

行事をやるかどうかとは別に、知っているだけで季節は豊かになります。そういう知識の持ち方を教えてくれるのが、シリーズとしての強さです。

月ごとに読めるのが助かる

この巻は9月から2月までが対象なので、秋の始まりから冬の終わりまでをひと続きで眺められます。月ごとにめくれると、予定表と一緒に行事を考えやすいです。「今月は何がある?」が自然に会話になります。

行事は、やることを増やすほど負担も増えます。でも本書がくれるのは、作業ではなく意味です。お彼岸、七五三、お正月。毎年のように触れる行事でも、意味がわかると、家庭の過ごし方が少し変わります。全部はできなくても「ここだけは楽しもう」と決めやすくなるのが、実際のところ一番ありがたいです。

読み聞かせのコツ

行事の絵本は、読んだ瞬間より、日常へ戻ったあとで効いてきます。おすすめは、直前ではなく、事前に読んでおくことです。 そうすると、買い物や会話の中で「あの行事の話」を自然に思い出せます。

七五三なら、意味を先に知っておけます。 お彼岸なら、「何を大事にしてきた行事か」を子どもの言葉で話せます。 お正月も、行事あれこれが“作業”になりそうなとき、意味のほうへ戻れます。 本書は、そういう戻り道を作ってくれる絵本です。

類書との比較

年中行事の本には、百科事典のように情報を詰め込むタイプがあります。調べたいときには便利ですが、日常の読み聞かせには向きにくいこともあります。

本書は、絵本の読みやすさを保ったまま、由来の部分を落とし込んでいます。網羅性より、「説明できる」状態を作ることが目的に近い。だから家庭の棚に置きやすいです。行事を生活に馴染ませたい人には、類書より相性がいいと思います。

また、月ごとの並びがあるので、暦に沿って読み進められます。「今月は何がある?」という問いに、そのまま応答できる形です。調べる本ではなく、季節を一緒に歩く本。そこが、使い勝手の差になります。

こんな人におすすめ

  • 秋冬の行事を、子どもと一緒に楽しみたい人
  • お彼岸や七五三の意味を、やさしく説明したい人
  • 図鑑より先に、絵本で季節の導入をしたい人

感想

秋から冬は、行事の数も気持ちの波も大きい季節です。だからこそ「意味」を知ると、慌ただしさが少し落ち着きます。本書は、行事を知識として整理しつつ、楽しみに戻してくれます。

子ども向けの本なのに、大人が読み返したくなるのもポイントです。説明できないものは、楽しみにくい。説明できると、楽しめる。季節の過ごし方を、静かに変えてくれる絵本でした。

お彼岸や七五三、お正月のように「毎年来るのに、ちゃんと説明したことがない」行事ほど、この本が効きます。季節の行事を、義務ではなく楽しみとして手元に戻したいときは、頼りになる1冊です。

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