レビュー
概要
リモートワーク(テレワーク)で起きる「困った」を、実務レベルでまとめて解決していくガイドです。会議・ツール・時間管理・自宅環境・コミュニケーション・健康管理・家族との距離感まで、範囲がとにかく広い。
リモートワークは、制度を導入しただけでは回りません。働き手の生活に入り込むからこそ、細かい摩擦が積み上がる。本書はその摩擦を“よくある場面”単位で言語化し、現場で使える形に落とし込んでくれます。
読みどころ
- 「時間の使い方」「自宅の作業環境」「基本のコミュニケーション」「オンライン会議のコツ」など、リモートワークの土台を順番に固めていく流れが分かりやすいです。
- 家族・子ども・近所との付き合い方まで扱うので、在宅が長期戦になったときの“生活の詰まり”に目が向きます。
- 体調管理や気分転換の章があるのが良い。仕事術だけでなく、持続させるためのコンディションに踏み込みます。
本の具体的な内容
目次はおおむね、(1)リモートワークの基本、(2)時間管理、(3)自宅の作業環境、(4)コミュニケーション、(5)オンライン会議、(6)リモートワーカーが知っておくべきこと、(7)家族・子ども・近所との関係、(8)気分転換と健康管理、という構成です。
扱うトピックの粒度が細かく、たとえば「休憩できずにダラダラ仕事をしてしまう」「メールやチャットが多すぎて疲れる」「オンライン会議の背景をどうする」「荷物が届いたときどうする」といった、現場の“あるある”まで視界に入ります。制度や理想論だけでは拾えない部分に手が届くのが、本書の良さだと思います。
読みながらおすすめしたいのは、「いま詰まっている場所」を1つ決めて、その章だけ先に読むことです。本書は網羅的なので、最初から全部を完璧にやろうとすると疲れます。逆に、困りごとに合わせてピンポイントで読むと、すぐ改善につながります。
たとえば次のように切り分けると読みやすいです。
- 時間が溶ける/終業の区切りがない → 時間管理の章(始業・終業の儀式、休憩の作り方、タスクの置き方)
- 家だと集中できない → 作業環境の章(机・椅子・照明・音、視界の整理、作業場所の固定)
- 連絡が多すぎて疲れる → コミュニケーションの章(チャットの使い分け、返信の期待値、情報の置き場所)
- 会議がしんどい/長い → オンライン会議の章(進行、発言の設計、カメラ、背景、議事の残し方)
- 同居家族に気を遣う → 家族・近所の章(生活音、子どもの対応、互いの時間の守り方)
- 体調が崩れる/気分が落ちる → 健康管理の章(運動不足、ストレス、気分転換の選択肢)
こうして見ると、リモートワークの課題は「仕事」だけではなく、生活の中に分散していると分かります。本書はそこを逃げずに拾ってくれるので、在宅が合わないと感じている人ほど、“合う形”に寄せるヒントが手に入ります。
類書との比較
ツールの使い方だけに寄った本や、マネジメント論に寄った本と比べると、本書は「働く個人の実務」にかなり寄っています。だから、管理職向けの制度設計の本として読むというより、現場が自走するための手引きとして強いです。
一方で、企業の制度設計や評価制度を深掘りしたい場合は、別の専門書を併読すると補完できます。本書は“大全”として、まず困りごとを潰して回るタイプです。
こんな人におすすめ
- 急にリモートワークになり、生活と仕事の境目がぐちゃぐちゃになった人
- 在宅が長期化して、集中力・体調・コミュニケーションがじわじわ崩れてきた人
- 家族と同居しながら働いていて、摩擦を減らしたい人
- チームのオンライン会議や連絡の基本を整えたい人
感想
リモートワークのしんどさって、派手な問題より、地味なストレスの積み重ねなんだと思います。会議のやりにくさ、連絡のズレ、机や椅子の違和感、休憩できない感じ、家族への気まずさ。そういう“小さな詰まり”を放置すると、いつの間にか疲れが限界になる。
本書は、その詰まりを一つずつ解消するための観点をくれるので、「結局、何を直せばラクになる?」が見えます。読み終わったあとに、まず自宅の作業環境と時間の区切り方から整えたくなるはずです。
リモートワークを“特別な働き方”として構えるより、生活の中に溶かし込む。そのための実用的なガイドとして、手元に置いておく価値がある一冊でした。
個人的には、オンとオフの切り替えに悩む人ほど向いていると思います。家は職場ではないし、職場でもない場所で働くことになる。だから、区切り(始業前の準備、終業の片付け、休憩のルール)を自分で作らないと、ずっと“半分仕事”の状態になってしまう。本書は、その区切りをどう作るかを、生活の事情まで含めて考えさせてくれました。
リモートワークに慣れた人でも、忙しい時期ほど基本が崩れます。そんなときに「ここから立て直そう」と戻れるチェックリストとして、読み返せるタイプの本です。