レビュー
概要
映画研究者塚本由晴がハリウッド映画100年を講義形式で再構成した新書。サイレントからデジタル時代まで各時代の代表作と、時代背景・政治動向・産業構造を同時に取り上げ、問いかけと資料を交互に提示する。講義ノート風のメモ欄や問いを読者に投げかける構造により、単なる通史ではなく、主体的に映画と社会の関係性を再考する場として機能する。
読みどころ
- 第1章ではサイレント期からトーキーへの移行を解説。撮影技術の限界と拡張、俳優が声を得たことで変化した演技表現を、制作現場の証言とともに丁寧に追う。
- WWII以降のフィルム・ノワールを扱う章では、影を使った光の処理と社会不安、国家に対する不信がどのように画面に反映されたかを、具体的なカットとセリフを使って分析。
- CG/デジタル配信時代を扱う章では、視覚効果の進化に伴う観客の期待と、ハリウッドがグローバルな視線とどう折り合いをつけるかを、業界地図と統計で示す。
類書との比較
『ハリウッド映画の社会史』『アメリカ映画入門』は通史的・事実把握的な記述に重心を置く一方、本書は講義の形式を借りて「問い→資料→対話」の流れをつくることで、読者が自ら洞察を生むよう誘導している。講義ノート風の図表や問いかけ、映画のカット割りの読み方をワークとして提供する点が特徴だ。
こんな人におすすめ
- 映像文化と社会の関係を学びたい学生。
- ハリウッド映画を教える立場にある教育者。
- 自身で映画批評を書くことを目指す読者。
感想
講義の構成が、読んでいるときに自分がセミナーに参加しているような臨場感を生む。問われた問いに向き合いながら読むと、映画史が自分の課題に転化し、次に何を観るかを問い直すきっかけが生まれる。カットの分析を真似しながら映像を見返すと、ハリウッド映画が単に娯楽ではなく社会を語る言語だったことがリアルにわかるようになった。