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レビュー

概要

『クレヨンしんちゃん』の原点を振り返りつつ現代の文脈で再構成した愛蔵版シリーズの第1巻。野原しんのすけが年中組で巻き起こす騒動と、その家族・近所・教育現場を通じて社会風刺・ユーモア・日常の切なさを同時に描く。今作では、しんのすけの衝動的な一言に周囲がたじろぐ一方で、母みさえや父ひろしの自分の内心とのギャップが丁寧に描かれ、子どもと大人の価値観がゆらぐ構造が読み取れる。

読みどころ

  • 第1話の「ひろしの逆襲」では、しんのすけの高笑いに対抗するため父が緻密な怒りのメモを作る場面が描かれ、現代の家計や働き方の息苦しさを笑いで浮き彫りにする。
  • 第4話ではしんのすけが保育園の先生に「ここから逃げたい」とつぶやき、先生の過労と子どもたちのエネルギーの量を数コマで比較。親が寝る間も惜しまず働く姿と子どもの無邪気さの対比が胸に残る。
  • コミカルな絵柄の中に細やかな体温が入っていて、ペン一本で躍動するキャラクターの線が緻密な構成を支えている。

類書との比較

『おぼっちゃまくん』『こちら葛飾区亀有公園前派出所』がシニカルな都市派ギャグを展開するのに対し、本作は家族の中に潜むズレの機微を一筆の中で描き出す。類書がギャグのスピードとデフォルメに重心を置くのに対し、しんのすけは間の取り方や小さな表情でコマ間のエモーションを伝えており、読者が何度もページをめくって繊細な滋味を味わいたくなる。

こんな人におすすめ

  • 子どもの世界を覗きながら、大人の疲労感も抱えて読むおとな読者。
  • 終わらない家族の騒動を、不器用だけれど温かいまなざしで受け止めたい人。
  • 日本の育児漫画における日常と社会風刺のバランスを学びたいマンガ研究者。

感想

しんのすけが「お絵かき」を振り下ろすときの筆圧と、後ろでみさえがため息をつく静けさのコントラストに、漫画家の手の込みようが見える。しんのすけの暴走と同じくらい、ひろしの「早く帰りたい」という心の声が刺さる。リビングでしんのすけが母に抱きつくシーンでは、下品なギャグが止まる瞬間に家族の愛が立ち現れる。新しいクレヨンしんちゃんが、時代の空気を取り入れながらも普遍の家族像を支えていることを再認識した。

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    佐々木 健太

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