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レビュー

概要

『新クレヨンしんちゃん(1)』は、『クレヨンしんちゃん』の世界をそのまま受け継ぎつつ、オール新作で組み立て直した一冊です。野原しんのすけ、みさえ、ひろし、ひまわり、かすかべ防衛隊といったおなじみの面々が、日常の中でまた新しく騒ぎを起こします。昔の名場面をなぞる本ではなく、「まだこの家族の話は続いていく」と実感できる再始動の1巻です。

読みどころ

いちばんの見どころは、やはりしんのすけの破壊力です。大人なら飲み込んでしまうことを、そのまま口に出す。しかも悪意がないから余計に止めにくい。この作品の笑いは、子どもの無邪気さで大人の建前を崩してしまうところにあります。1巻でもその強さはまったく鈍っていません。

もう1つ良いのは、しんのすけだけでなく、みさえやひろしの疲れや見栄がちゃんと笑いの土台になっていることです。家事や仕事に追われる大人の気分を描いたうえで、それをしんのすけが一気にかき回す。だから単なる子どもギャグになりません。読む側が大人でも、共感の方向から入れます。

絵柄やテンポも重要です。ひとつひとつの話は短いのに、オチまでの運びが早い。セリフも説明しすぎません。そのため、何気ない家庭の一日、幼稚園での小競り合い、近所づきあいの妙な空気といったものが、数ページできれいに笑いへ落ちます。長編ではないからこそ、しんのすけの一撃が効きやすいです。

こんな人におすすめ

  • 『クレヨンしんちゃん』の空気感が好きで、新作でもう一度入りたい人
  • 1話完結のギャグ漫画を気軽に読みたい人
  • 家族コメディとしても大人目線で楽しめる漫画を探している人
  • 子どもの無邪気さと大人の現実がぶつかる笑いを楽しみたい人

感想

この1巻を読むと、しんのすけのギャグは昔から変わらないのに、読み手の受け取り方は年齢でかなり変わると感じます。子どもの頃はただ面白かった場面が、大人になるとみさえやひろしのしんどさ込みで見えてきます。その二重の読め方が、このシリーズの強みです。

新シリーズとしての良さは、懐かしさだけで読ませない点にもあります。キャラクターを知っている人はすぐ入れます。知らない人でも「変な子が大人の理屈を壊す家族コメディ」として十分に面白いです。大げさな再出発ではなく、いつもの生活が自然に続いている感じが心地いいです。

類書との比較

『浦安鉄筋家族』のように最初から異常なテンションで押すギャグ漫画と比べると、この作品は日常の形を残したまま笑いを作るタイプです。『ちびまる子ちゃん』よりも下品で破壊力があり、『あたしンち』よりも子どもの暴走力が強い。その中間ではなく、野原家にしかない温度があります。

家族漫画として見ると、ギャグの瞬発力だけでなく、家の中の空気まで伝わるのが強いです。リビング、玄関、幼稚園、近所の道。そういう身近な場所で事件が起きるから、笑いが自分の生活にも近い。そこが長く読まれる理由だと思います。

1話完結ギャグとしての強さ

このシリーズは一話ごとの切れ味がよく、途中から開いてもすぐ笑いに入れます。それでいて、読者が野原家の空気を知っているほど、細かいリアクションまで面白くなる。ギャグ漫画としての入口は広いです。シリーズものとしての積み重ねもちゃんと強みになっています。

しんのすけの発言は派手ですが、それに対する周囲の間や顔つきまで含めて1つのオチになっています。だから、セリフだけ抜いてもこの漫画の面白さは伝わりきりません。ページ運びのうまさや、ほんの数コマで場を作る速さがあってこその笑いです。

1巻としての役割

新シリーズの1巻として読むと、「この世界はまだ回り続ける」という確認の意味が大きいです。しんのすけは相変わらずで、周囲も相変わらず困らされる。でも、その相変わらなさがただの反復ではなく、安心感として働いています。昔読んでいた人にも、今初めて触れる人にも開いた1巻です。

また、1巻の段階で「しんちゃんの世界を知らないと入れない」という壁が低いのも大きいです。家族、幼稚園、近所という基本の場がすぐ見えるので、キャラクター関係を覚える負担が少ない。だから、懐かしさ目当ての再読にも、新規での入り口にも向いています。長寿シリーズの再始動として、かなりうまい1巻です。

大人が読み返す面白さ

子どもの頃に『クレヨンしんちゃん』を読んでいた人ほど、この新シリーズで見え方が変わると思います。笑いの中心は相変わらずしんのすけですが、今読むと、みさえが家を回している大変さや、ひろしが仕事を抱えながら父親をしている慌ただしさもよく見えます。しんのすけの一言が刺さるのは、周囲の大人がすでに余裕を失っているからです。

そのため、この漫画は子ども漫画というより、家族全体を笑う漫画として読めます。だらしなさも見栄もある大人がいて、そこへ空気を読まない子どもが突っ込む。家庭の中で起きる小さな事故を笑いに変える力があるから、長く続いてもネタが痩せません。再始動の1巻としてだけでなく、家族ギャグの入口としてもかなり優秀です。

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