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レビュー

概要

『上司に「仕事させる」技術』は、部下が上司に振り回されないための愚痴本ではなく、上司を仕事の資源としてどう使いこなすかを考える本です。ここで言う「仕事させる」は、上司をだますとか持ち上げるという話ではありません。上司が持っている判断権、情報、人脈、調整力をうまく引き出し、チームや自分の成果を上げるための実務技術です。

日本の職場では、上司との関係を「当たり外れ」で片づけがちです。しかし本書は、その前提を崩します。相性の良し悪しはあるとしても、上司には上司の役割があり、こちらにも使い方がある。そこを整理できれば、無駄な衝突や遠回りはかなり減らせるというのが本書の軸です。部下向けのマネジメント本としては珍しく、かなり戦略的です。

読みどころ

読みどころは、上司を「感情の相手」ではなく「機能の集合」として見る発想です。上司にイライラするとき、人は人格の問題として捉えがちです。本書はそこを少し引いて見ます。この上司は決裁が速いのか、他部署調整に強いのか、情報は多いのか、方向づけは得意なのか。そうやって機能ごとに見ていくと、苦手な上司であっても、使える部分は見えてきます。ここがボス・マネジメントの肝です。

また、「相談のしかた」がかなり具体的です。単に問題を持ち込むのではなく、何に困っているのか、どこまで自分で考えたのか、上司に何を判断してほしいのかを分けて伝える。これだけで会話の質が大きく変わります。上司は忙しく、こちらの事情を最初から全部理解してくれるわけではありません。本書はその前提に立って、上司が動きやすい材料の出し方を教えてくれます。

さらに良いのは、上司対策を「迎合」にしないところです。ご機嫌を取るより、成果につながる接点を増やすことが重視されます。たとえば、報告のタイミングをそろえる、判断が必要な論点を先に出す、選択肢を持っていく、根回しが要る案件では早めに巻き込む。こうした地味な技術が積み上がると、上司との摩擦が減るだけでなく、自分の仕事も進みやすくなります。

類書との比較

上司本には、「嫌な上司への対処法」や「上司のタイプ別会話術」のような本も多いです。それらが関係のしんどさを減らす方向へ寄るのに対し、本書は成果を出すために上司をどう活用するかへ重心があります。だから、読むと受け身の気持ちがかなり減ります。「どう耐えるか」ではなく「どう動かすか」を考える本です。

また、一般的なマネジメント本は上司側の視点で書かれていますが、本書は部下側の視点から組織の動かし方を見るのが特徴です。昇進前の中堅社員やプロジェクト担当者にとって、現実的に使いやすいのはこちらだと思います。組織論の大きな話ではなく、職場の会話と段取りへ落ちてくる距離感がちょうどいいです。

こんな人におすすめ

  • 上司に振り回されている感覚が強く、仕事の進め方を立て直したい人。
  • 相談、報告、根回しの質を上げて、仕事を通しやすくしたい人。
  • 管理職の一歩手前で、組織の動き方を部下側から学びたい人。
  • 相性論ではなく、上司との関係を技術として改善したい人。

感想

この本を読むと、上司に対する見方がかなり変わります。多くの人は、上司との関係がつらいと「理解されない」「相性が悪い」で止まりがちです。でも本書は、その前に「何を判断してもらうべきか」「どういう情報を渡せば動きやすいか」を考えさせます。ここへ視点が移るだけで、感情的な消耗が減ります。

特に役に立つのは、仕事が止まる理由を「上司が悪い」で終わらせない点です。たしかに理不尽な上司はいます。ただ、それでも相談の出し方、論点の整理、タイミングの選び方で前に進む余地はある。本書はその余地を探す本です。部下の我慢を美化するのではなく、仕事を進める現実策として読むと強いです。

若手よりも、ある程度仕事を任され始めた中堅に刺さる本だと思います。自分だけで完結しない仕事が増えたとき、上司を巻き込む技術は急に重要になります。そこで感情と戦略を分けて考えられるようになるだけで、かなり働きやすくなります。

上司との関係を改善する本であると同時に、組織で成果を出すための基礎を学ぶ本でもありました。部下でいる時間が長い人ほど、一度早めに読んでおく価値があります。

特に、調整役の仕事が増えてきた人には効く一冊です。

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