レビュー
概要
幼児期の心の成長を「だいすき」という声がけの中で描き出す、優しい絵本。主人公の女の子と家族の日常、雨の日の散歩や夜の寝かしつけ、普段は無言のやさしさを細かく描き、声を出せない場面でも「視線」と「間」の描写で安心感を伝える。繰り返される「ず-っとずっとだいすきだよ」というフレーズは、言葉を知らない子どもでもリズムとして口ずさめるように工夫されており、毎ページの背景に流れる暮らしの細部に共感が生まれる構成。
読みどころ
- 第1章にあたる「朝のルーティン」では、家族が目覚めから朝食までの時間を小さな枠で描き、兄妹のちょっとした争いが「だいすき」の言葉で収まる様子を細かに描写。それぞれのキャラクターが何度もお互いの手を取る描写が、気持ちのキャッチボールを視覚化して見せる。
- 中盤には「おさんぽ」パートがあり、雨上がりの道を歩きながら共有する景色や匂いをシャドウで描き、赤ちゃんの感覚に寄り添う。「水たまりを飛び越える」「てるてる坊主を作る」といった遊びを通じて、親子の身体的な触れ合いが小さなコマで丁寧に刻まれている。
- 終盤では「夜の寝かしつけ」を取り上げ、月や星を見上げる場面で「ず-っとずっと」が星の光となって部屋を満たす表現を採用。わずかな言葉と息遣い、ぬくもりの描写により、読後の安心感が高まるような構成になっている。
類書との比較
『だるまさんの さがしもの』や『おやすみロジャー』が動きや音の真似を促す絵本であるのに対し、本書は「だいすき」という言葉を常に流して情緒的な距離を埋めるアプローチを取っている。類書が物語の転換を重視するのに比べ、こちらは日常の静かな繰り返しを丁寧に描き、言葉のリズムと絵の静けさで信頼関係を組み立てていく。とくに『おおきなかぶ』のように「みんなで力を合わせる」構図よりも、個々の感覚を尊重する場面が多く、個室化した現代の家庭にも馴染むアプローチと言える。
こんな人におすすめ
- 幼児を寝かしつけるときに穏やかなトーンを探している保護者。
- 言葉を覚え始めた子どもと一緒に「だいすき」の語感を楽しみたい人。
- 幼児教育・保育の場で親密な関係性の構築を支える絵本を探す保育者。
感想
中盤の雨上がりのページを読みながら、子どもと一緒に水たまりを飛び越える真似をした。絵の中の言葉ではなく、静かな線の中にある柔らかな息づかいがジワジワと心の中に入ってきて、気づいたら「ず-っとずっと」と声が出ていた。寝かしつけのシーンでは、月に寄り添う描写がとても丁寧で、子どもが自分の心まで見せてくれる瞬間を引き出すような構図に感動した。絵本の中のやさしいリズムが、毎晩の読み聞かせで自分と向き合う時間を与えてくれる。長く繰り返し読みたくなる一冊だと思う。