『オリエント急行の殺人』レビュー
出版社: 東京創元社
¥931 Kindle価格
出版社: 東京創元社
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『オリエント急行の殺人』は、ミステリーの中でも特に有名な1作です。私はこの作品、謎解きの面白さだけではなく、読後に残る「割り切れなさ」まで含めて強いと思いました。事件の真相にたどり着いたあと、気持ちがきれいに終わらない。そこが逆に忘れにくいです。
舞台は列車という閉ざされた空間で、乗客たちは逃げ場がありません。容疑者が多く、証言も入り乱れます。私はこの“密室の群像劇”が、読む手を止めさせない構造になっていると感じました。
列車という限定された場所で、限られた人間関係の中から真相へ迫ります。情報が増えるほど整理が必要で、読者も探偵と同じ目線で考える感覚が出てきます。私は、ミステリーを読む醍醐味がちゃんと詰まっていると思いました。
この作品は、犯人当てだけで終わりません。真相が分かったとき、単純な勧善懲悪にならない。私はそこが、古典なのに現代でも読まれ続ける理由だと思いました。正しいことと、納得できることは違う。そのズレが残ります。
古典ミステリーは、言い回しや時代背景で身構える人もいると思います。でもこの作品は、会話と捜査のテンポが良く、意外とスルッと読めます。私は「名作って読みやすいんだな」と思いました。
列車内で殺人が起こり、乗客たちが疑われます。そこへ名探偵が関わり、証言を集めて推理を組み立てていく。筋としてはシンプルです。でも、証言の扱い方が巧みで、読者の視点が揺らされます。
私はこの作品、真相の驚きだけではなく、その驚きが「気持ちの問題」まで連れていくところがすごいと思いました。読み終えたあとに、誰かと話したくなるのに、軽々しく語れない。そういう余韻があります。
同じく名探偵もののミステリーでも、この作品は「舞台の限定」と「人数の多さ」が強みだと思います。限られた空間に、たくさんの視点が詰まっている。だから、どの人物の言葉にも意味がありそうに見えて、疑いが止まりません。
どんでん返しや、読後に考え込むタイプのミステリーが好きな人に合います。映画やドラマで結末を知っている人でも、原作で読むと感じ方が変わると思います。
逆に、読後にスッキリしたい人には、少し重いかもしれません。私は、軽い気分転換のときより、じっくり読みたい日に合う作品だと思いました。
私は、ミステリーを読み慣れていない人でも入りやすいと思いました。文章のテンポが良いので、名作入門にも向いています。
できればネタバレは避けて読んでほしいです。タイトルが有名すぎて、検索するとすぐ核心に触れてしまいます。私は、最後まで読み切ってから解説や考察を読むのがおすすめです。2回目の読み返しで、会話の意味が変わります。
私はこの作品、事件の派手さより、探偵の観察の細かさが効いていると思いました。限られた情報の中で、違和感を拾い、整理し、矛盾を言葉にする。そのプロセスが丁寧なので、読者も一緒に頭を使えます。
ミステリーって、真相だけ知りたいときもあります。でもこの作品は、真相へ至る道筋が面白い。だから、読み返しにも向きます。
私は読み終えたあと、次のどれかをやると余韻が深くなると思いました。
特に、読み返しで「ここでこう言っていたのか」と気づく瞬間が楽しいです。
私は、休日の午後など「最後まで読める時間」がある日に読むのがおすすめです。途中で止めても読めますが、閉鎖空間の緊張感は、流れで読んだほうが気持ちよく残ります。読み終えたあとに少し余韻を味わえる時間があると、満足度が上がります。
この作品は有名すぎて、どこかで結末を耳にしてしまった人もいると思います。それでも私は、読む価値が落ちないタイプの作品だと感じました。なぜなら、驚きが「真相そのもの」だけじゃなく、「その真相へ至る手順」と「受け止め方」にもあるからです。
読んでいると、証言の取り方、矛盾の崩し方、人物の見え方の変化が面白くて、気づけば推理の流れに乗ってしまいます。結末の知識があっても、「ここでこう誘導してくるのか」と感心できる。私は古典の強さって、ネタバレ耐性の高さにもあると思いました。
私はこの作品の読後感が重くなるのは、単に事件が残酷だからではなく、「正しい行い」を1つに決めきれないからだと思いました。法律や正義で片づけたい気持ちと、人の心が納得したい気持ちは、同じではありません。
ミステリーって、本来は答えが出るから気持ちいいジャンルです。でもこの作品は、答えが出たあとに“気持ちの問い”が残る。私はそこが、何度も語られてきた名作としての凄みだと感じました。
私は『オリエント急行の殺人』を読み終えて、「名作」と呼ばれる理由が分かりました。トリックの鮮やかさだけではなく、読者の気持ちを置き去りにしない。正しさの話に回収しない。だからこそ、ずっと残るんだと思います。
ミステリーの快感と、割り切れない余韻がセットの1冊でした。