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レビュー

概要

『先延ばしをやめる本』は、「気合が足りないから動けない」という精神論でなく、なぜ人は手をつけられないのかを分解していく本です。和田秀樹さんは、先延ばしを単なる怠けではなく、完璧主義、不安、優先順位の混乱、疲労、決断の先送りといった要因の組み合わせとして見ています。そのため、本書は自分を責める本ではなく、動けなくなる仕組みを理解してほどく本になっています。

特徴的なのは、原因の分析に偏りすぎず、すぐ動ける単位まで話を落としていることです。大きな目標を掲げるのでなく、「今この場で何ならできるか」を小さく切り分ける。先延ばしを直すというより、先延ばしが起きにくい手順を作る本だと感じました。

読みどころ

読みどころは、先延ばしをタイプ別に見ている点です。全部を同じ「やる気不足」でまとめないので、自分がどこで止まるのかを見つけやすい。失敗したくないから着手できないのか、やることが大きすぎて現実味がないのか、疲れすぎて判断力が落ちているのか。原因が違えば対処も変わる、という当たり前の話を丁寧に言葉にしています。

また、「すぐ始める」ことを大げさに扱わないのもいいところです。本書では、最初の一歩をとにかく小さくする発想が繰り返し出てきます。資料作成ならまずファイルを開く、片づけなら机の上の1枚だけ動かす、勉強なら5分だけ座る。こうした小さな着手が、気分を待たずに行動する現実的な方法として描かれています。

さらに、不安との付き合い方にも踏み込んでいます。先延ばしは時間管理の失敗である前に、感情処理の失敗でもある。だから、予定表だけ整えても動けない人がいる。本書はそこを前提にしているので、「予定は立てるのに守れない」という人にも刺さりやすいです。

そして、本書は先延ばしを完全になくすことより、「再発しても立て直せる状態」を目指しているように読めます。ここが現実的です。人は忙しい時期や落ち込んだ時期にまた崩れます。その前提で、どう戻るかを考える本なので、読後に変な敗北感が残りません。

類書との比較

時間術の本は、予定管理や優先順位づけの技法に寄ることが多いです。それに対して本書は、時間の使い方より前に「なぜ着手できないか」を見に行きます。だから、手帳術を試しても続かなかった人ほど意味があります。

また、習慣化の本と比べても、本書は少し手前にあります。良い習慣を作る以前に、そもそもスタートできない人へ向けた本です。習慣本の前段として読むと役割がはっきりします。

こんな人におすすめ

完璧主義で着手が遅れる人、やることが多いとフリーズする人、予定を立てても実行で止まる人におすすめです。特に「また先延ばしした」と毎回自分を責めてしまう人には相性がいいです。

逆に、仕事術のテクニックだけ大量に知りたい人には少し地味かもしれません。本書の良さは派手な裏技ではなく、動けない自分の扱い方を現実的に覚えられるところにあります。

また、周囲からは真面目に見えるのに、締切直前で崩れてしまう人にも向いています。外から見えにくい先延ばしほど、自分でも理由を説明しにくいからです。本書はその見えにくい部分を言葉にしてくれます。

感想

この本を読んで良かったのは、先延ばしを「性格の欠陥」から切り離して考えやすくなったことです。動けないときは、気合を足すより、作業を細かくする、疲れを取る、不安の正体を言葉にする。その方が現実的です。責めるより整える、という姿勢が一貫していて、読後の圧迫感がありません。

また、本書は「すぐ役に立つ」タイプの本です。読みながらその場で試せることが多く、次の日まで熱を持ち越さなくてもいい。先延ばし本は読むだけで満足しやすいですが、本書はそこを越えて、行動のサイズを落とすという基本を体に入れてくれます。

劇的に人生が変わるというより、毎日の着手抵抗を少しずつ減らしてくれる本です。仕事、勉強、家事のどれでも、最初の一歩が重い人にはかなり実用的な一冊でした。

読んでいて特に良かったのは、「できない自分」の分析が冷静なことです。責める言葉ではなく、原因を分けて見る言葉が多いので、読むこと自体が少し立て直しになる。先延ばしに悩む人は、気分が落ちているときほど本を開きにくいものですが、この本はそういう日にこそ読みやすい温度感でした。

小さな行動へ落とす、という話は一見地味です。ただ、その地味さこそが効くのだと分かります。大改造ではなく、着手の摩擦を減らす。その積み重ねで生活を戻していく本として信頼できました。

やる気のある日に読む本というより、何もしたくない日に開ける本だと思います。そこで読める温度感と、読んだあとに本当に少し動ける実用性が両立している。先延ばし本としてかなり誠実でした。

根性論に疲れた人ほど、一度読んでおく価値があります。動けない理由を責めるのでなくほどいていく本として、かなり使い勝手がいい一冊でした。

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