レビュー
概要
『メイクがなんとなく変なので友達の美容部員にコツを全部聞いてみた』は、メイクが下手だと感じている人に向けて、「どこが変なのか」を言語化してくれる本です。著者の吉川景都が、友人で美容部員のBAパンダに素朴な疑問をぶつける対話形式で進むため、教科書っぽい堅さがありません。平行眉がしっくりこない、ファンデが午後に崩れる、アイラインが浮く、チークの位置がわからない。そうした日常の小さな違和感が、そのまま入口になります。
本書の良さは、流行のメイクを押しつけないことです。「今っぽい顔」を目指すより、今の自分の顔でどこを整えると見え方が変わるかを説明します。だから、若い人のための美容本というより、自己流のまま何年も来てしまった大人が立て直す本としても優秀です。
読みどころ
読みどころの第一は、メイクの失敗を「センスの問題」にしないところです。眉が変、アイシャドウが見えない、顔色が悪く見える。こうした悩みに対して、本書は色、位置、量、順番のどこが原因かを分けて考えます。そのため、読者は「自分はメイクが向いていない」と落ち込むのではなく、「この工程を直せばいい」と考えやすくなります。
ベースメイクの説明も実用的です。下地、ファンデ、パウダーの役割が整理されていて、厚塗りになる理由や崩れやすい原因がわかりやすいです。さらに、手で塗るのか、スポンジを使うのか、どこで引き算するのかまで具体的なので、朝のメイクをすぐ見直せます。とくに「頑張っているのに清潔感が出ない」と感じる人には効く内容です。
目元、頬、口元のつながりを一緒に見る発想も良いです。アイメイクだけ直しても、顔全体のバランスが崩れることはあります。本書は一部位だけを孤立させません。眉、チーク、リップの位置関係まで含めて考えるので、顔全体のまとまりが出やすくなります。自己流メイクの「なんとなく変」をほどく本としてかなり完成度が高いです。
道具の扱い方までちゃんと触れているのも助かります。ブラシ、スポンジ、指、ビューラーなど、何をどの工程で使うかが曖昧だと、同じコスメでも仕上がりが安定しません。本書はその細部を雑に流さないので、コスメを買い足す前にやれる改善が見つかります。美容本なのに節約本としても役立つ感覚があります。
類書との比較
一般的な美容本は、手順を順番に見せることが多く、見本どおりにやれば完成するように見えます。けれど現実には、顔立ちや肌質、普段使う道具で結果は変わります。本書はそこを前提に、「なぜその人のメイクが変に見えるのか」を原因から解いていきます。ここが大きな違いです。
また、SNSの短い美容テクは即効性がありますが、自分の顔で再現できるかは別問題です。本書は会話形式で疑問を1つずつ解きほぐすので、情報が頭に残りやすいです。美容初心者だけでなく、情報過多で迷子になった人にも向いています。
年齢や生活の変化でメイクが急に合わなくなった人にも相性がいいです。学生の頃のやり方をそのまま続けていると、肌質や顔立ちの変化にうまく追いつけないことがあります。本書はそこを責めず、今の自分に合わせた調整として説明してくれるので、学び直しの入り口として使いやすいです。
デパートのコスメカウンターが苦手な人にも役立ちます。聞きたいことはあるのに、何を質問すればよいかがわからない人は多いです。本書を読んでおくと、自分の悩みを言葉にしやすくなり、店頭でも迷いにくくなります。
こんな人におすすめ
- メイクのどこが微妙なのか自分で言語化できない人
- 朝のメイクを短時間で整えたい人
- 自己流メイクを一度きちんと見直したい人
- 流行より、自分に似合う整え方を知りたい人
感想
この本を読んで感じたのは、メイクの悩みは技術不足より「何がズレているかわからないこと」にあるということです。本書はそこをかなり親切に扱います。会話のテンポが軽く、恥ずかしさを煽らないので、美容本に苦手意識がある人でも読みやすいです。
特に良かったのは、友達に見てもらうような視点が本の中へ持ち込まれていることです。自分一人では気づかない癖を、人に指摘される感覚で読めます。メイクをゼロから学びたい人にも、長く自己流で来た人にも勧めやすい、実用性の高い一冊でした。
朝の支度で毎回モヤモヤしている人ほど、この本の価値がわかると思います。劇的な変身より、「今日はちゃんと整って見える」という再現性を取り戻す本だからです。まずはメイクで困りにくくなる。その段階を支えてくれる一冊でした。
美容に詳しくなくても読めるのも大きな利点です。専門用語を増やして圧倒するのではなく、手元で試しながら理解できるように進みます。メイクを好きになる前の不安を減らしてくれる、生活者寄りの美容本でした。