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レビュー

概要

『グロービスMBAクリティカル・シンキング』は、論理的に話すための本というより、論点を見極めて正しく考えるための土台を作る本です。会議でうまく発言したい、説得力のある資料を書きたい、問題解決の精度を上げたいとき、結局必要なのは「何を考えるべきか」を外さないことです。本書はそこをかなり丁寧に教えてくれます。

タイトルにMBAとありますが、経営幹部向けの難解な教科書ではありません。観察、論点設定、仮説、因果、検証、結論という流れを、ビジネスの現場でどう使うかに寄せて整理しています。だから、資料作成、企画、営業提案、上司との相談、どの場面にもつながります。思考力の本は抽象論で終わりやすいですが、本書はかなり実務向きです。

読みどころ

最初に効くのは、「考える」ことを曖昧な能力で終わらせず、論点を定める技術として扱っている点です。本書では、そもそも何が問いなのかを外すと、どれだけ頭を使っても意味が薄くなると繰り返します。売上が落ちたときに、価格が問題なのか、顧客層が変わったのか、競合が強くなったのかを分けて考える。ここが整理されるだけで、議論の無駄がかなり減ります。

次に役立つのが、因果関係の見方です。仕事では「たぶんこうだろう」で話が進みやすいですが、本書はそこにかなり厳しいです。事実と解釈を分ける、相関と因果を混同しない、前提を疑う、代替仮説を置く。こうした基本をケースで何度も確認させるので、読み終える頃には「なんとなく納得した案」への警戒心が強まります。これは実務でかなり大きいです。

また、結論を出す技術だけでなく、結論に至る途中の構造化を重視しているのも本書の強みです。思いついたことを順番に並べるのではなく、論点を束ね、切り分け、優先順位をつける。MECEのような言葉だけ知っていても仕事は進みませんが、本書はそれをどう使うかまで落としています。資料や会議で「話が散る」人ほど役立つと思います。

さらに、クリティカル・シンキングを人を論破する技術にしないところも良いです。本書が目指しているのは、相手をやり込めることではなく、問題を正確に捉え、よりよい意思決定に近づくことです。この姿勢があるので、若手の思考訓練だけでなく、チームの議論の質を上げる本としても使えます。

加えて、フレームワークの名前を覚えて終わりにしないのも本書の強さです。切り口を増やすために型を使うのであって、型どおりに話したから正しいわけではない。その当たり前を何度も確認させるので、ロジカルシンキングを表面的な作法で終わらせずに済みます。

類書との比較

思考法の本には、発想を広げる本と、ロジックを整える本があります。本書は後者ですが、単なるロジックの型紹介では終わりません。実際のビジネスケースに落としているので、現場でどう使うかが見えやすいです。『イシューからはじめよ』が何に答えるべきかを研ぎ澄ます本だとすると、本書はその問いをどう捌き、どう議論し、どう伝えるかまで含めて鍛える本です。

また、プレゼン本が「どう見せるか」に寄るのに対し、本書は「そもそも何を言うべきか」に戻してくれます。見せ方の前に考え方を整えたい人にはこちらの方が効きます。

こんな人におすすめ

会議で意見はあるのに、うまく整理して話せない人におすすめです。企画職、営業、コンサル、管理職だけでなく、仕事で何かを説明し判断する役割がある人ならかなり使えます。

また、ロジカルシンキング本を何冊か読んだけれど、現場でうまく使えなかった人にも向いています。本書は知識の確認ではなく、使う場面のイメージが持ちやすいからです。思考の土台を固め直したい人向けの定番だと思います。

若手育成の担当者にもおすすめです。資料の赤入れや会議のフィードバックが感覚論になりやすい場面で、どこが論点のズレなのか、どこが検証不足なのかを共通言語で話しやすくなります。

感想

この本を読んでよかったのは、「頭がいい人は結論を早く出す人」ではなく、「問いを雑に扱わない人」なのだと整理できたことです。仕事で迷うときは、情報不足よりも論点のズレで苦しくなることが多いです。本書はそこをかなりはっきり見せてくれます。議論で勝つためではなく、判断を外しにくくするための本として、長く手元に置ける一冊でした。

一度読んで終わりではなく、会議や資料作成で詰まったときに戻る使い方が合います。考えが散っている自覚がある人ほど、再読するたびに効く本です。

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    佐々木 健太

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