『Scratch 3.0対応版 10才からはじめるScratchプログラミング図鑑』レビュー
出版社: 創元社
出版社: 創元社
Scratchを始めた子がつまずきやすいのは、操作ではなく最初の一歩です。ブロックは置ける。でも「で、何を作る?」となる。ここで止まると、プログラミングが“向き不向き”の話にされがちなんですよね。
『10才からはじめるScratchプログラミング図鑑』は、Scratch 3.0に対応し、いろいろなプロジェクトを作りながらスキルを伸ばしていくタイプの本です。紹介文では、かんたんなゲームから、ふしぎなグラフィック、アニメーション、操作できるアート作品まで扱うとされています。すべての漢字にふりがなが付いている点も、始めやすさにつながります。
本書の強さは、目次がそのまま「今日作るものリスト」になっていることです。PARTの切り方も分かりやすく、アート、ゲーム、シミュレーション、音楽、ふしぎな世界と、表現の方向が切り替わります。
たとえば序盤には「分身のじゅつ」「恐竜のダンスパーティー」「動物レース」「変顔をかこう」といったテーマが並びます。動きや見た目はすぐ変わるので、“動かせた!”の成功体験を積みやすいのが良いです。
その後はジャンル別に深まっていきます。
こうして見ると、「ゲームを作るための本」というより、「Scratchで表現する図鑑」なんですよね。得意な子はゲームへ、絵が好きな子はアートへ、理科っぽいのが好きな子はシミュレーションへ、と入口が複数あります。
プログラミング学習でありがちな失敗は、機能の説明を読んで終わることです。「繰り返し」「条件分岐」を覚えたつもりでも、手を動かしていないと残りません。
本書はプロジェクト単位で進むので、ブロックは“作品を作るための道具”として出てきます。完成したら、動きを少し変えてみる。スピードを上げる。見た目を変える。難易度を調整する。こういう改造が自然に生まれます。実はこの「改造」こそが、理解の確認になりやすいです。
目次の最後には「次のレベル」「用語集」「索引」が用意されています。ここが地味にありがたいです。
Scratchは、慣れてくると「もっと複雑にしたい」「似た表現を別の作品でも使いたい」という欲が出ます。そのとき、プロジェクトを作って終わりではなく、言葉で引ける場所があると助かります。用語集と索引は、まさに“辞書”の役割です。困ったときにパッと戻れる場所があるだけで、学習が途切れにくくなります。
子どもがプログラミングをしていると、つい大人は正解へ誘導したくなります。でもScratchの良さは、試して失敗して直すのが早いことです。だからこそ、最初から答えを渡すより、「どこで思った通りにならなかった?」と一緒に確認するほうが伸びます。
本書のプロジェクトは、完成形があるので安心感があります。そのうえで、少しだけ改造してみると、“自分の作品”になります。たとえばレースのスピードを変える。花火の色を変える。ドラムの音を別の音にする。こういう小さな変化が、創作の手触りになります。
『10才からはじめるScratchプログラミング図鑑』は、プロジェクト名が具体的で、最初の一歩を迷わせないScratch本です。アートからゲーム、シミュレーション、音楽までジャンルが広く、子どもの「好き」から学びを伸ばせる設計になっています。Scratchを“教材”ではなく“遊び場”として使い始めたいとき、かなり頼れる一冊です。
特に「バーチャル雪景色」「フラクタルツリー」「雪の結晶」など、ちょっと理科っぽい表現が混ざっているのがいいなと思いました。プログラミングは、ゲームだけのものではありません。模様や動き、音やリズムまで、全部が題材になる。本書はその幅を、子どもにも分かる言葉で見せてくれる図鑑です。
親子で一緒に遊ぶ時間にも向きます。