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レビュー

概要

『知識ゼロからの大人のピアノ超入門』は、大人になってからピアノを始めたい人のための入門書です。著者は清水ミチコと森真奈美。子ども向けの厳格な教本とは違い、「今からでも遅くない」「気楽に付き合っていい」という前提で書かれているのが大きな特徴です。鍵盤の仕組み、姿勢、指の動かし方、楽譜の読み方、有名なメロディの入り口まで、独学の不安が強い部分を順番にほどいてくれます。

大人の初心者にとって厄介なのは、理解力はあるのに恥ずかしさや身構えが先に立ってしまうことです。本書はそこをよくわかっていて、できないことを責める空気がほとんどありません。上達を急がせるより、「まず鍵盤に触ることを日常へ戻す」ほうに重心があります。趣味として始めたい人には、この温度感がかなりありがたいです。

読みどころ

まず読みやすいのは、まったくの初心者が迷う順番に沿っているところです。いきなり両手で弾かせたり、理論を詰め込んだりせず、鍵盤の並び、指番号、音符の見方、簡単なメロディへと少しずつ進みます。「どこで止まったのか」が自分でわかりやすいので、独学で挫折しにくいです。

また、本書は「大人だからこそ理解で進める」ことを前提にしています。子ども向けの教本は繰り返しで体に覚えさせる作りですが、本書はなぜそう弾くのかをある程度言葉で説明してくれます。そのため、短時間の練習でも納得感があり、忙しい人でも続けやすいです。1日15分のような短い単位で前に進める感覚があるのは強みです。

さらに、有名なメロディを使っている点もよくできています。抽象的な練習だけではなく、「これを弾いてみたい」が早い段階で出てくるので、達成感を得やすいのです。大人の趣味は楽しさが先にないと続きません。本書はそこを軽視せず、遊び心と実用をうまく両立しています。

加えて、失敗しやすいポイントへの目配りが細かいのも助かります。指が動かない、楽譜を見ると止まる、両手になると混乱するといった大人の初心者がつまずきやすい箇所を先回りしてくれるので、独学でも「自分だけが特別に苦手なのではない」と思いやすいです。この安心感は入門書としてかなり重要です。

類書との比較

大人向けピアノ本には、コード伴奏から入る本、クラシックの基礎を丁寧に教える本、楽譜の読み方に特化した本があります。本書はその中でも「最初の一冊」としてのやさしさが際立っています。専門的な深さでは上位の教本に譲りますが、鍵盤への恐怖感をなくす力はかなり強いです。

逆に、本格的に演奏技術を磨きたい人には、この一冊だけでは足りません。フォームの細かな矯正や高度な表現まで踏み込む本ではないからです。ただ、最初の壁を越える本としては非常に優秀で、ここで苦手意識を減らしてから別の教材へ進む流れが作りやすいです。

コード弾きやジャズ寄りの入門書のように自由度を前面に出す本とは違い、本書はまず音と鍵盤に慣れることを優先しています。そのため、何から始めればいいかわからない完全初心者には特に相性がいいです。最初の教材に必要なのは選択肢の多さではなく、迷わず進める導線だとよくわかります。

こんな人におすすめ

  • 子どものころ習っておらず、大人になって初めて鍵盤に触る人
  • 一度挫折したけれど、もう一度気楽に始めたい人
  • 楽譜や音符に苦手意識がある人
  • 趣味として無理なくピアノを続けたい人

感想

この本を読んで感じたのは、大人の初心者に必要なのは才能の確認ではなく、安心して始められる入口だということです。本書はそこを外していません。弾けないことを恥ずかしがらせず、少しずつ手を動かす気持ちを取り戻させてくれます。だから、読後に「自分にもできそうだ」と思いやすいです。

また、ピアノを技術だけでなく生活の楽しみとして捉えているのも良いところでした。完璧に弾けることより、少しずつ音が形になっていく喜びを大事にしているので、仕事や家事の合間に続ける趣味として現実的です。上達の速さを競わず、長く付き合える楽器として紹介している姿勢に好感が持てます。

大人になってから始めることには気後れがありますが、本書はその気持ちをかなり軽くしてくれます。高い壁を見せるのではなく、低い一歩を用意してくれる本です。独学の最初の一冊として、かなり勧めやすいピアノ入門書でした。

「昔からやっていた人の趣味」という空気をやわらげてくれる点でも、この本は親切です。今から始めてもいいし、好きな曲を少しずつ弾ければ十分楽しいという前提があるので、完璧主義で止まりがちな人ほど助けられると思います。再挑戦の入口としても使いやすい一冊でした。

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    佐々木 健太

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