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レビュー

概要

『大事な存在の死にどう向き合うか、砂漠で毎日考えている』は、UAEの砂漠で多くの動物と暮らしてきた著者が、看取りと喪失の経験を写真と文章で綴ったフォトエッセイです。死生観を一般論で語る本ではなく、後悔、罪悪感、揺れ、再出発といった具体的な感情を丁寧に言語化しているのが特徴です。

この本が特別なのは、悲しみを「乗り越えるべき課題」として急がせない点にあります。答えの出ない問いを抱えたまま生きることを肯定し、読者に静かな余白を残してくれます。

読みどころ

第一の読みどころは、写真と言葉の距離感です。写真が感情を押しつけず、文章が過度に説明しないため、読者は自分の記憶と経験を重ねながら読めます。フォトエッセイとして完成度が高いです。

第二に、喪失後の罪悪感を隠さない誠実さ。「あの時別の選択をしていれば」という感情を未熟さとして切り捨てず、ケアした側が抱える痛みとして丁寧に扱います。喪失を経験した読者ほど救われる記述が多いです。

第三に、再び誰かを大切にすることへの葛藤が描かれる点。悲しみと新しい出会いは両立できるのかという難しい問いに、断定的な答えは出しません。その曖昧さを許容する姿勢が本書の価値です。

類書との比較

喪失ケア本には実用的な対処法を提示するものも多いですが、本書は処方箋を急ぎません。方法論より、感情を置いておく場所を作る本です。即効性は低く見えて、長期的な支えになるタイプです。

また、ペットロスの体験談に近い内容を持ちながら、家族や人間関係の喪失にも読み替えやすい普遍性があります。対象を限定しすぎないため、多くの読者に届きます。

こんな人におすすめ

  • 喪失体験の後で気持ちを整理できない人
  • 看取りの後悔や罪悪感を抱えている人
  • 写真と言葉の両方で心を整えたい読者
  • すぐ前向きになることに疲れている人

逆に、短期で気持ちを切り替える実践書を求める人には合わない可能性があります。本書はゆっくり効く本です。

感想

この本を読んで感じたのは、悲しみは終わらせる対象ではなく、持ち運ぶ対象なのかもしれないということでした。忘れることを目標にすると苦しくなりますが、抱え方を学ぶと少し生きやすくなる。本書はその抱え方に静かに寄り添ってくれます。

また、喪失を語る文章としての強さも印象的でした。強い言葉で読者を動かすのではなく、具体の積み重ねで届かせる。だからこそ読後の余韻が長い。大切な存在を失った経験がある人に、時間をかけて読んでほしい一冊です。

実践ポイント

読後に試しやすいのは、「事実」「感情」「今できること」を3行で書くメモです。自己否定のループに入ったとき、この分離だけで気持ちが少し整理されます。

さらに、誰かと喪失を共有するときは助言より先に感情を受け止める姿勢を意識すると関係が穏やかになります。本書が教えてくれるのは、悲しみを消す技術ではなく、悲しみと共に暮らす技術でした。

追加レビュー

喪失を扱う本では、読者を早く立ち直らせようとする圧力がしばしば見られます。本書が信頼できるのは、その圧力をほとんど持たないことです。悲しみの速度は人それぞれで、整い方にも個人差がある。その前提を崩さないため、読者は安心して自分の感情に向き合えます。

また、看取りの経験を「正解の手順」に還元しない点も重要でした。現実のケアは常に不確実で、後悔が残ることもある。だからこそ、後悔を抱えながらどう生きるかという問いが現実的に響きます。喪失の本としてだけでなく、ケアする人の孤独を理解する本としても価値が高いです。

読書ノート

喪失の記録は、感情を整理する速度を他人と比べないことが重要です。本書の読み方としては、印象に残った場面を「事実」「感情」「今できるケア」に分けて書き出す方法が効果的でした。悲しみを消すことではなく、扱える形にする。そうした視点があるだけで、読後の時間が少し穏やかになります。静かに寄り添う本として長く手元に置きたい一冊です。

読むタイミングは選ぶ本ですが、その分だけ刺さるときの深さがあります。悲しみを急いで処理しない姿勢は、喪失に向き合う読者にとって大きな支えになります。感情を丁寧に扱いたいときに再読したい一冊です。

悲しみを急いで整える必要はないと教えてくれる点で、喪失を経験した読者にとって実用的な支えになります。心の速度を尊重する文章だからこそ、長く手元に残る一冊でした。

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    佐々木 健太

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