レビュー
概要
『例題で学ぶ 英語コロケーション』は、単語を単体で覚えるだけでは不自然な英語から抜け出せない人に向けて、語と語の自然な結びつきを例題形式で身につける本です。英語学習でつまずきやすいのは、単語や文法を知っていても「どう組み合わせると自然に聞こえるか」が分からない点ですが、本書はそこを正面から扱います。
コロケーションという言葉は少し専門的に見えますが、要するに「よく一緒に使われる語の組み合わせ」です。日本語でも「強い雨」とはあまり言わず「激しい雨」と言うことがあります。英語にも自然な組み合わせがあります。本書の強みは、その感覚を辞書のように眺めるだけで終わらせず、例題を解きながら身につけられる点です。
英語学習本の中には、表現を大量に並べるものもあります。ただ、実際に使えるようになるには、見た知識を自分の頭の中で何度も取り出せる形に変えなければなりません。本書はそこを意識していて、ただの暗記帳ではなく、読者が実際に反応しながら進める教材になっています。
読みどころ
読みどころの1つ目は、自然な英語と不自然な英語の差が、語彙力不足ではなく組み合わせの感覚にあると実感できることです。英語学習がある程度進むと、「単語は知っているのに作文がぎこちない」「意味は通るのに英語らしくない」と感じる場面が増えます。本書はその原因を、単語の選択そのものよりも、どの語とどの語が結びつくかの感覚不足として整理してくれます。
2つ目は、例題中心なので、受け身で読んで終わりになりにくいことです。コロケーション系の本は辞典型だと便利な一方で、必要なときに引いて終わってしまいがちです。本書は例題で確認しながら進むため、自分ならどの語を置くかを考える時間が生まれます。この「少し立ち止まって選ぶ」工程があるだけで、記憶への残り方がかなり変わります。
3つ目は、スピーキングとライティングの両方に効くことです。英作文で自然な表現が出てこない人にも役立ちますし、会話で不自然な直訳を減らしたい人にも向いています。たとえば、動詞と名詞の相性、前置詞の選び方、よく使われる言い回しのまとまりを意識するだけで、英語の見え方は大きく変わります。
また、本書は「知識を増やす」より「既に知っている単語を使える形にする」方向へ学習を向けてくれます。英語学習では、新しい単語や難しい表現を増やすことに意識が向きがちですが、実務や試験で差が出るのは、基本語を自然に組み合わせられるかどうかです。この本を読むと、学習の重点をどこへ置くべきかがかなり明確になります。
類書との比較
英語コロケーションの本には、辞書型、一覧型、問題集型があります。その中で本書は、問題集型に寄りつつ、必要な説明はきちんと補ってくれるバランスのよさがあります。調べ物に強い辞典ほど網羅的ではありませんが、最初の一冊としてはむしろその絞り込みが読みやすさにつながっています。
英語上級者向けの洋書教材は、例文量や実例の多さで優れていますが、日本語で学習の要点をつかみたい人には少し入りにくいことがあります。本書は、日本人学習者がどこで不自然になりやすいかを踏まえた説明なので、独学でも迷いにくいです。特に、英語学習をやり直している社会人には相性がいいと感じます。
単語帳や文法書と比べると、派手さはありません。しかし、英語を「分かる」から「使える」に進めるには、この地味な部分の積み上げが欠かせません。コロケーションを押さえることで、作文、会話、読解の解像度が同時に上がるので、学習効率という意味ではかなり投資対効果の高い一冊です。
こんな人におすすめ
おすすめなのは、英語を長く学んでいるのに、いまひとつ自然な表現が出てこない人です。TOEIC や受験英語で一定の知識がある人ほど、「なぜか伝わるけれど英語らしくない」という壁にぶつかります。本書は、そうした中級者の停滞をほどくのに向いています。
仕事で英語メールや会話を使う人にもおすすめです。難しい単語を覚える前に、基本語の自然な使い方を押さえる方が、実務では効きます。短い文でも自然に見せたい人、英語の細かな違和感を減らしたい人にはかなり実用的です。
逆に、英語をまったく初めて学ぶ人には少し早いかもしれません。ただ、中学英語の基礎があるなら十分読めますし、英語学習を再開した人の立て直し用としてはとても使いやすいです。
感想
この本のよさは、英語を不自然にしている原因を、単純な語彙不足のせいにしないところでした。英語学習が長くなると、覚える量が足りないのだと思い込みがちですが、実際には、知っている単語同士のつながり方を意識するだけでかなり改善します。本書はそのことを、押しつけがましくなく体感させてくれます。
また、例題形式なので、読むだけで賢くなった気分になって終わらないのもよかったです。少し考え、選び、確認する流れがあるため、学んだ内容が手元に残ります。英語学習本はたくさんありますが、「知識の穴」ではなく「使い方の穴」を埋めてくれる本は意外と多くありません。
英語を自然にしたい人、話すときのぎこちなさを減らしたい人、作文にもう一段深みを出したい人にとって、本書はかなり頼れる一冊です。派手な近道を示す本ではありませんが、基礎の質を確実に上げてくれます。積み上げ型の学習を信じられる人には、特に相性がいいと思います。