レビュー
「話せるのに薄い」を、知的に引き上げるスピーキング本
英語は話せる。でも、会議や発表になると途端に言葉が平板になる。
単語は出るのに、論理がつながらない。そういう悩みは、フレーズ集では解決しにくいです。
『英語スピーキング・クリニック』は、通訳訓練法を土台にしながら、「お手本どおりの英語」から「クリエイティブ・スピーキング」へ移るための訓練法を提示する本として紹介されています。
「英語で自分の考えを伝え、相手と対話する」ための、いわば“知的英語力”に寄せた設計です。
構成が“診断→訓練”なので、弱点が見えやすい
目次は大きく2部構成です。
- 1 診断と治療法
- 2 スピーキング訓練
この並びが良いのは、訓練だけを押し付けないところです。
まず自分のどこが弱いのかを把握し、その弱点に対して適切なメニューを当てる。英語学習で一番遠回りなのは、弱点が分からないまま努力することなので、クリニックという名前がきちんと機能しています。
訓練テーマが「仕事の現場」に寄っている
スピーキング訓練では、具体的な場面が並びます。
- 自己紹介
- 仕事の打ち合わせ
- 得意先への電話対応
- 販売戦略会議
- 苦情の応対
- 高齢化社会のビジネス戦略
- プロジェクトの発表
- パーティでの会話
- 景気の見通し
- 国際会議での発表
このラインナップが、かなり実務的です。
雑談英語ではなく、相手に説明し、合意を取り、問題を解決する。そういう英語を求められる場面が揃っています。
特に「販売戦略会議」「苦情の応対」「国際会議での発表」あたりは、言い回しの正確さだけでなく、論理と態度まで問われます。訓練テーマとして強いと思います。
CD-ROM付属で、耳と口を同時に鍛えやすい
付属資料としてCD-ROMがある点も、スピーキング教材としてありがたいです。
話す練習は、文字だけだとテンポが崩れます。
通訳訓練法の文脈がある本なので、聞く→理解する→言い直す、という回路を鍛える意図が強いはずです。
自分の口が遅れる人ほど、音で学べる教材は効果が出やすいと思います。
「苦情の応対」や「国際会議での発表」まであるのが実践的
訓練テーマの中でも、特に難度が高いのは「苦情の応対」と「国際会議での発表」だと思います。
英語が間違っているかどうか以前に、相手の感情を受け止め、落としどころを提案し、合意を取りにいく必要があるからです。
また、「高齢化社会のビジネス戦略」「景気の見通し」のように、抽象度の高い話題が入っているのも良いです。
こういうテーマで話せるようになると、英語が“日常会話の延長”から“議論の道具”になります。
おすすめの使い方:場面を固定して、同じテーマを周回する
この本は、いろいろな場面が出てくる分、全部を一気にやると散らかります。
おすすめは、まず「自己紹介」「打ち合わせ」「発表」など、よく使う場面を1つ決めて集中的に回すことです。
同じ場面を周回すると、語彙や言い回しが“ストック”として溜まっていきます。
ストックが増えると、次の場面に移ったときも応用が効きます。場面ごとに積み上げるのが、実務スピーキングの近道だと思います。
周回するときのコツは、「短く言う→少し足す→言い換える」を繰り返すことです。
自己紹介や会議の場でも、最初から完璧に話そうとすると止まります。短い形で言える状態を先に作るほうが、結果的に伸びます。
電話対応や会議テーマは、瞬発力のチェックに使える
「得意先への電話対応」や「販売戦略会議」は、英語が遅れる人にとって良い練習題材です。
電話は表情やジェスチャーに頼れないので、言葉だけで状況を整理する必要があります。会議は、相手の意見を受けて、自分の意見を足す力が問われます。
この2つを回せるようになると、英語の出力が“独り言”から“対話”に変わります。
本書が目指す「相手と対話する力」を、手触りとして掴みやすくなるはずです。
慣れてきたら、同じ場面を別の言い方で言い直す練習もおすすめです。
こんな人におすすめ
- 英語で説明はできるが、議論になると薄く感じてしまう人
- 会議・発表・電話対応など、仕事の場面に特化して鍛えたい人
- フレーズ暗記より、通訳訓練法のような“回路づくり”で伸ばしたい人
- 自分の弱点を診断して、練習の優先順位を決めたい人
まとめ
『英語スピーキング・クリニック』は、診断と治療法で弱点を整理し、仕事の具体場面でスピーキングを鍛える、通訳訓練法ベースの教材です。
「話せるけれど浅い」を越えて、知的な対話ができる英語を目指す人向けの一冊だと思いました。