レビュー
概要
数学の「図形」は、苦手になると一気に遠くなる分野だと思う。式の計算と違って、頭の中のイメージが曖昧なまま進むと、どこでつまずいているかが自分でも分からなくなるからだ。
『ニュートン超図解新書 最強に面白い 数学 図形編』は、その曖昧さを図解でほどくことに徹した入門書だと感じた。定義や性質を、文章よりも絵で先に掴ませる。だから「分かったつもり」を作りにくい。
読みどころ
1) 図形を「暗記」ではなく「見取り図」で理解できる
図形の勉強がつらいのは、公式や定理が単発で出てくるからだ。でも本来は、図形はつながっている。相似、合同、円、三角比。全部が一本の道でつながる。
本書は、そのつながりを図で見せる。関係が見えると、暗記の量は減る。理解が増える。
2) 苦手な人ほど助かる「具体→抽象」の順番
図形は、抽象から入ると滑る。先に具体例が必要になる。本書は、まず具体の図があり、そこから性質を抜き出す構成になっているので、入口で折れにくい。
中学〜高校の図形が苦手だった人でも、「そういうことだったのか」と腑に落ちる瞬間が作りやすい。
3) 大人の学び直しにも相性が良い
大人が数学を学び直すとき、最大の敵は「時間」だと思う。まとまった時間が取りにくい。だから、短時間で見取り図を作れる本の価値が上がる。
本書は、図版中心で読みやすい分、スキマ時間で進みやすい。最初に全体を眺め、次に気になった章だけ戻る、という使い方ができる。
読後に効くミニ実践(図形が得意になる手順)
読むだけで終わらせないなら、次の3ステップが手堅い。
- 図を手で描く:きれいでなくていい。描くと、条件が可視化される
- 一言で説明する:「なぜそうなる?」を、言葉にしてみる
- 類題を1問だけ解く:解けないなら、どの条件が分からないかを書く
この3つを回すと、図形は「眺めるもの」から「扱えるもの」に変わっていく。
図形でつまずきやすいポイント(ここを点検すると早い)
図形が苦手なとき、原因はセンスではなく「どこで詰まっているか」の見誤りであることが多い。私は次の3点を点検すると、復習の効率が上がると思う。
- 条件の読み落とし:直角・平行・等しい長さなど、図に書き込めているか
- 補助線の発想:図形を「知っている形」に分解できているか(相似・合同の形)
- 言葉への変換:図の情報を「式」や「関係」に置き換えられているか
本書は、特に1と2(図に戻る作業)を助けてくれる。だから、最初に読む図形の本として相性が良い。
さらに言うと、図形は「できない問題」を分類すると伸びやすい。条件が読めていないのか、道具(相似・円の性質など)が選べていないのか、計算が詰まっているのか。分類ができれば、次に何を復習すべきかが決まる。本書は分類のための見取り図を作る役割としても使える。
類書との比較
図形学習は、媒体の役割を分けたほうが伸びやすい。
- 教科書:定義と定理の正確な形を押さえる
- 問題集:手を動かして、解法の引き出しを増やす
- 本書(図解入門):イメージの土台を作り、迷子を減らす
本書は「図形の地図」を短時間で作る役割が強い。だから、これを読んだあとに問題集へ入ると、演習がただの作業になりにくい。
次に読むなら(伸ばす順番)
図形を本当に得意にしたいなら、次の順番が手堅い。
- 本書で見取り図を作る(何が何につながるか)
- 教科書や参考書で定理を言葉で確認する(定義を曖昧にしない)
- 問題集で「再現」する(自力で解ける形にする)
特に大人の学び直しでは、2と3が抜けやすい。本書は入口として強いが、最後は手を動かした量がものを言う。
もう1つだけコツを書くなら、図形は「同じ図を別の言葉で言い直す」と伸びやすい。例えば三角形なら、角度で見る、辺の比で見る、円と接続して見る。視点が増えるほど、補助線の候補も増える。本書の図解は、その視点の増やし方のヒントになる。
こんな人におすすめ
- 図形が苦手で、どこから復習すればいいか分からない人
- 中学・高校数学を学び直したい社会人
- 受験や資格で図形の土台を固めたい人
注意点
図解中心で入口としては優しい一方で、厳密な証明や発展問題の演習量は多くない。理解が進んだら、問題集や教科書で手を動かして補うのが良い。
また、図形は「理解できた気がする」が起きやすい分野でもある。読後は、必ず1問だけでいいので解いてみると、学びが定着しやすい。
感想
図形が苦手なとき、必要なのは根性より「視点」だと思う。本書はその視点を、図で一気に渡してくれる。読み終えると、図形が少しだけ怖くなくなる。
最初の一冊としてちょうど良い。ここで地図を作ってから、演習に入ると伸びやすいはずだ。