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レビュー

概要

『伝わるデザインの基本 増補改訂3版』は、プレゼン資料、レポート、ポスター、社内文書など、「内容はあるのに見づらい」資料をどう直すかに特化した実用書です。著者の高橋佑磨さんと片山なつさんは、研究発表の資料作成に必要なデザインノウハウを普及する活動を続けてきた人たちで、本書もデザイナー向けではなく、日常的にPowerPointやWordで資料を作る人に向けて書かれています。

本書の価値は、センスの話をしないところにあります。配色の才能やおしゃれな感覚がなくても、余白、整列、強調、フォント、図表の見せ方にはルールがある。そのルールを守るだけで、資料はかなり読みやすくなるという立場です。つまり、「デザインが苦手だから無理」という人の逃げ道をふさぐ本でもあります。

資料作成の本は世の中に多いですが、この本は学術資料からビジネスプレゼンまで視野が広いです。単に見栄えをよくするのではなく、相手に誤読させない、要点を迷わせない、読ませたい順番で視線を動かすという、本来の目的に立ち返らせてくれます。

読みどころ

  • まず役立つのは、何が「伝わりにくさ」の原因なのかを分解してくれる点です。文字が多い、情報の優先順位が見えない、図表が詰まりすぎている、色に意味がない。こうしたありがちな失敗を、BeforeとAfterの差で見せてくれるので、自分の資料の悪い癖にも気づきやすいです。

  • フォント、余白、整列の扱いが丁寧なのも良いところです。デザイン本というと派手な配色や装飾に目が向きがちですが、本書はむしろ土台を重視します。行間や字間、見出しの大きさ、情報ブロックの距離感がそろうだけで、読み手の負荷は大きく下がります。その変化がよくわかります。

  • 図表やスライドの説明も実践的です。グラフの強調点をどう絞るか、アイコンや色をどこまで使うか、1枚のスライドに何を載せすぎないかといった判断基準があるので、資料レビューをするときの共通言語としても使えます。作る人だけでなく、直す人にも向いた本です。

  • 研究発表寄りの知見がベースにあるので、学会発表、社内報告、企画書など、分野をまたいで応用しやすいのも強みです。見た目の「かっこよさ」ではなく、誤解されずに伝えるための設計が一貫しているので、長く使える基本書だと思います。

類書との比較

ノンデザイナー向けの本はたくさんありますが、本書は「資料作成」という用途にかなり寄っています。チラシやWebデザインまで広く触れる本と違って、発表資料やレポートで実際に困る論点へ集中しているので、仕事や学業にそのまま返しやすいです。

一方で、感性を広げるアート寄りのデザイン本ではありません。発想を刺激するより、失敗を減らすことに軸があります。そのぶん、デザインに苦手意識がある人ほど相性がよく、「まず崩れない資料を作る」ための一冊として強いです。

こんな人におすすめ

プレゼン資料を作る人、研究発表やレポートを書く学生、社内文書をレビューする管理職に向いています。特に「内容はあるのに、伝わりにくいと言われる」人にとっては、改善の手がかりが非常に多い本です。

感想

この本を読んでよかったのは、資料の良し悪しを感覚ではなく言葉で説明できるようになることでした。以前は「なんとなく見づらい」としか言えなかったものが、余白が足りない、見出しの階層が弱い、情報量が多すぎると分解して指摘できるようになります。それだけで資料の直し方がかなり変わります。

センスに頼らず、ルールで資料を良くしたい人にはかなり頼れる本です。作る前に読むのもいいですが、すでに使っているスライドを横に置きながら読むと、効き方がもっとはっきりします。資料作成を仕事の基礎スキルとして底上げしたい人に勧めやすい一冊です。

特に便利なのは、「自分では見慣れてしまった資料」を見直すときです。作り手は内容を知っているぶん、どこが読みにくいかに気づきにくいのですが、本書のルールに沿って点検すると、読み手がどこで迷うかがかなり見えます。発表や会議の前に一度通しておくだけでも、資料の事故は減らしやすいです。

見た目を飾るための本ではなく、伝達コストを下げるための本という印象でした。資料作成に苦手意識がある人ほど、「デザインは才能ではなく配慮の技術だ」と実感しやすい一冊です。

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    高橋 啓介

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    佐々木 健太

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