『図解即戦力 機械学習&ディ-プラ-ニングのしくみと技術がこれ1冊でしっかりわかる教科書』レビュー
出版社: 技術評論社
¥2,134 Kindle価格
出版社: 技術評論社
¥2,134 Kindle価格
『図解即戦力 機械学習&ディープラーニングのしくみと技術がこれ1冊でしっかりわかる教科書』は、AIや機械学習をこれから学ぶ人に向けて、全体像を図でつかませることに徹した入門書です。技術評論社の紹介どおり、人工知能の基礎、機械学習の基本、ワークフロー、主要アルゴリズム、ディープラーニング、開発環境までを1冊で一通り見渡せる構成になっています。数式を深く追う本ではありませんが、その代わり「機械学習とは何をしている技術か」「何が得意で、何が苦手か」「開発の流れはどうなっているか」が視覚的に整理されます。
章立ても実用的です。1章は人工知能、機械学習、ディープラーニングの違いと歴史。2章は教師あり学習、教師なし学習、強化学習、特徴量、統計と機械学習の違い。3章はデータ収集、整形、学習、評価、ハイパーパラメータ調整、相関と因果、フィードバックループ。4章では回帰分析、サポートベクターマシン、決定木、アンサンブル、ロジスティック回帰、ベイジアンモデル、k-NN、k-means、主成分分析などを扱います。5章から7章ではニューラルネットワーク、誤差逆伝播法、勾配消失、転移学習、CNN、RNN、GAN、物体検出へ進み、8章でライブラリ、フレームワーク、GPU、高速化までつなげます。入門者が迷いやすいポイントを、かなり手堅く押さえています。
本書の読みどころは、機械学習をアルゴリズムの暗記で終わらせないところです。教師あり学習、教師なし学習、強化学習の違いを言葉で覚えるだけでは、実務でどこに使うかは見えてきません。本書は各手法の位置づけを図解で見せながら、特徴量やデータ整形、評価指標、ハイパーパラメータ調整までを流れで説明します。そのため、「モデルを選ぶ」より前に「どんな問題設定で、どんなデータを整え、どう評価するか」が重要だと理解しやすいです。ここは初学者が見落としやすい部分なので、この本の価値がよく出ています。
また、3章のワークフロー説明がかなり実践的です。データの収集、整形、学習、テストデータによる検証、評価基準、チューニングという流れは、機械学習の仕事そのものです。さらに、相関と因果、フィードバックループまで扱っているので、精度を出すことだけが目的ではないとわかります。学習済みモデルが現実の運用でどう振る舞うか、どんな偏りが増幅されうるかを考える入口にもなっています。AI本でここまで触れる入門書は意外に多くありません。
ディープラーニング部分も、初心者にちょうどよい深さです。ニューラルネットワークの歴史から入り、誤差逆伝播法、最適化、勾配消失、転移学習へ進み、その先にCNN、RNN、強化学習との接続、オートエンコーダ、GAN、物体検出を置いています。つまり、「深層学習がすごいらしい」で止まらず、画像認識や自然言語処理にどうつながるかまで見える構成です。実装書のようにコードを細かく追うわけではありませんが、どの技術がどの課題に対応しているかをつかむには十分です。
『ゼロから作るDeep Learning』のような名著は、手を動かして内部の計算を理解するには非常に強いです。ただ、最初の1冊としては重く感じる人もいます。本書はそこより前の段階にいます。つまり、アルゴリズムやディープラーニングの位置関係を、図で俯瞰しながら把握したい人向けです。数式やコードに入る前の地図として使うとかなり相性がいいです。
一方で、AI全般の概説書よりは技術寄りです。単に「AIは社会を変える」という話で終わらず、特徴量、評価、最適化、フレームワーク、GPUなど、開発に必要な単語がきちんと出てきます。そのため、文系向け入門書と本格的な実装書のあいだを埋める一冊として理解するとわかりやすいです。G検定のような体系学習の入口にも使いやすいですが、試験対策専用本ほど用語の列挙には寄っていません。
機械学習を学びたいが、最初から数式やコードに入るのは不安という人に向いています。エンジニア1年目、AI関連企業への就職や転職を考えている人、企画職やマネージャーとして技術の全体像を理解したい人にも勧めやすいです。特に「教師あり学習と教師なし学習の違い」「CNNやRNNは何をしているのか」「開発プロセス全体をざっと見たい」といったニーズにはよく合います。
逆に、実際にNumPyやPyTorchでコードを書きながら深く理解したい人には、次の1冊が必要になります。ただ、その前提として全体像を誤解なく持つことは大きいです。どの本に進むべきか判断する土台としても使えます。
この本の良さは、機械学習の学習で起こりやすい「単語だけ増えて関係が見えない」という状態を防いでくれることです。AI、機械学習、ディープラーニング、教師あり学習、特徴量、評価指標、CNN、GANといった言葉は、別々に覚えるとすぐ散らばります。本書はそれらを章ごとに整理し、図でつないでくれるので、頭の中に骨組みができます。
特に、機械学習のワークフローと評価の章が入っているのがよかったです。入門書はモデル紹介だけで終わりがちですが、本書はデータ整形や検証、チューニングまで入れているため、「使える知識」へつながりやすいです。実装の詳細を学ぶ段階では別の本が必要になるとしても、その前に読む地図としてはかなり優秀です。AIを曖昧な流行語ではなく、技術のまとまりとして理解したい人に合う本だと思います。