レビュー
概要
『アフターデジタル2』は前作の思想をUXと自由(自律性)という視点で再出発させたもので、デジタル化が進む社会において「人間と技術の自由な協調」を再定義する。普及している定量的な数値と実証から一歩踏み込んで、人間の感性・倫理・自由意思がテクノロジーとどう折り合いをつけなければならないかを詰める。対話形式で読み進められる章構成になっており、UXリサーチから政策レベルの制度設計までを横断しながら、「自由とは何か」という問いを更新し続けている。
読みどころ
- 対話形式の構造: 実際の企業プロジェクトで見たUXの歪みを対話形式で提示し、読者自身が問いかけられるように構成。距離感のある理論ではなく、「あなたならどうする?」と責任を持たせる。
- 自由の4要素: 自律性・感受性・つながり・参与の4要素でデジタル体験を分析し、それぞれが技術的仕組みとどう結びつくかを多数のUXケースを通じて整理する。
- 民主的な意思決定: UXと自由を設計する場面でのステークホルダー間の権限の分配や意見集約のプロセスを取り上げ、調整コストを下げる実務的な設計哲学を提示。
類書との比較
佐藤航陽の前作『アフターデジタル』が「テクノロジーの連携」そのものを提示していたのに対し、本書はその実装の場に存在する“人の自由”を軸にし、UXの実践と政策の間を橋渡しする。「デザイン思考」系の書籍は個々のユーザー体験にフォーカスする一方、ここでは自由の前提としての社会的合意までを視野に入れている点で、組織横断的なリーダーシップにつながる。
こんな人におすすめ
コーポレートカルチャーの再設計に関わるリーダー、プロダクトやサービス企画で法制度との調整を求められる人、デジタル時代に組織の自由度を守りたいと考える人材にとって、実務と哲学のバランスがよい反芻材料になる。
感想
「自由」をビジネスの意思決定に組み込むという視点が、動画や体験の深みだけでなく、構造的な UX 設計をも改善する。リーダーの視点でテクノロジーを扱う本は多いが、自由と UX を同時に考えるメタ視点を持つ本は少ない。現場で使える示唆と、社会を構成する自由の議論を融合させた点で足場のしっかりした一冊だった。