レビュー
概要
『最新版 大人の発達障害[ASD・ADHD]シーン別解決ブック』は、ASD(アスペルガー症候群)とADHDの特性で起きやすい“生活のつまずき”を、場面別の対処として整理した実用書です。「空気が読めないと言われる」「人づき合いで摩耗する」「片づけができない」「会議が苦手」といった悩みを、具体的なシーンに落とします。
本書の大きな特徴は、解説を“知識”で終わらせないことです。知識を押さえた上で、トラブル回避へつなげます。発達特性は気合で消えません。だからこそ、仕組みを理解し、環境と行動を調整する方向へ進める内容です。
読みどころ
1) 巻頭コミックで「状態」をイメージできる
発達障害の本は、言葉が難しくなりがちです。本書は巻頭コミックで「こんな状態」を示します。自分の困りごとを説明しやすくなります。
2) ASDとADHDを分けて、場面別に解決法を並べる
ASDとADHDは困り方が違います。本書は章を分けます。さらに「人づき合い」「職場」「恋愛」「片づけ」「会議」のようにシーンで整理します。読みたいところから拾えます。
3) “自信を取り戻す”をゴールに置く
トラブルが続くと、自分を責めやすいです。本書は回避法を並べるだけではありません。失敗の再発を減らし、自信を戻す方向へ支えます。
本の具体的な内容
説明文では、ASDを「人づき合いの苦手さ」や「空気を読むのは難しい」といった困り方として扱います。ADHDは「片づけられない」「集中力が続かない」といった困り方として扱います。その上で、トラブルを解決し、自信を取り戻すための一冊だと示されています。
構成は次の通りです。
- 巻頭コミック:大人の発達障害とはこんな状態
- 第1章:大人の発達障害の正しい知識(発達障害とは、アスペルガー症候群とは、ADHDとは)
- 第2章:ASD(アスペルガー症候群)シーン別解決法(人付き合い、職場、異性とのつきあい、興味の偏り、こだわり、冗談が通じにくい など)
- 第3章:ADHD シーン別解決法(思いつきで動くが途中で挫折、会議、段取り、片づけ など)
「話を真に受ける」「冗談が通じない」など、周囲から誤解されやすいポイントが挙げられています。困り方を“性格”にせず、特性として整理する足場になります。
また、本書は「コミュニケーションが苦手」「場の雰囲気を読めない」「すぐカッとなりやすい」といった反応のクセにも触れています。ここを「性格の問題」として扱うと、自己否定が増えます。特性として扱うと、対策の余地が生まれます。
シーン別の読み方としては、困りごとを一気に全部解決しようとしないのがコツです。例えばASDの章なら、「職場で孤立する」「冗談が通じにくい」など1つに絞ります。ADHDの章なら、「会議が苦手」「段取りが苦手」など1つに絞ります。自分の“事故りやすい場面”が1つ減るだけで、毎日はだいぶラクになります。
類書との比較
当事者向けの本には、自己理解を深めるタイプがあります。本書は自己理解に加えて、場面の対処へ踏み込みます。生活の中で困りごとが頻発している人には読みやすいです。
一方で、診断や治療の話を深く知りたい人には不足するかもしれません。本書は医療の専門書ではありません。日常のトラブルを減らす“実用の整理”として受け取ると良いです。
こんな人におすすめ
- 人間関係で誤解が起きやすく、対処の型が欲しい人
- 片づけや段取りでつまずき、仕事が回らないと感じる人
- 「自分のせい」と思い込みやすく、視点を変えたい人
- 家族や職場に説明するための言葉が欲しい人
感想
発達特性の話は、当事者の自己責任にされがちです。本書は、困りごとを“場面”へ落として、調整できる領域を増やしてくれます。これは気持ちの面でも助かります。
個人的に良いと思ったのは、ASDとADHDを混ぜないところです。困り方が違うと、必要な工夫も変わります。本書は「どこで何が起きるか」を整理します。だから、改善の打ち手も選びやすいです。日常を少しずつラクにしたい人向けの一冊でした。
もう1つ良いのは、「自信を取り戻す」という目的が明確な点です。対策を学ぶ前に、まず「説明できる状態」を作ることが大事です。本書の巻頭コミックは、その入口になります。自分の困りごとを言語化できると、周囲へ相談しやすくなります。
注意点もあります。発達障害の診断や治療は、本だけで決める話ではありません。困りごとが大きいときは専門家への相談も必要です。本書は、その前後で「日常の事故」を減らすための実用書として、手元に置きやすいと思いました。