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レビュー

概要

『ひとり分やる気1%ごはん』は、一人暮らしの自炊で詰まりやすい部分を正面から潰してくれるレシピ本です。料理好きかどうか以前に、仕事や学校で疲れて帰ってきて、包丁をしっかり握る気力が残らない日はあります。この本は、そういう日を前提にしています。タイトルの「やる気1%」も大げさではありません。「今日はもう凝ったことをしたくない」という生活の現実に寄り添った設計です。

著者は、TikTok を中心に簡単メシで人気を集めてきたハマごはんさん。本書でも、その強みがよく出ています。レシピ動画で伸びる人の本だけあって、判断に迷う工程が少なく、見た瞬間に「これなら作れそう」と思えるものが多いです。ひとり分前提なので、食材が余って冷蔵庫の奥で傷むとか、作りすぎて飽きるとか、一人暮らしならではの面倒もかなり減らしてくれます。

しかも本書は、単に時短レシピをいくつか集めた本ではありません。副題にある通り、500レシピという物量があるので、「今日は米を食べたい」「麺ですませたい」「おかずだけさっと作りたい」といった気分の揺れにも合わせやすいです。一人暮らしの自炊が止まる理由のひとつは、料理する体力より前に、考える体力が尽きることです。本書は選択肢の多さで、その詰まりも減らしてくれます。

読みどころ

最大の読みどころは、500レシピという量の多さより、「どこを削れば自炊が続くか」の感覚が徹底していることです。レンジで完結するもの、切るだけで形になるもの、あえるだけで一品になるものが多く、火加減や盛りつけで消耗しません。自炊本というと、つい丁寧な暮らしの教科書のようになりがちですが、本書はむしろ「一食を崩さない」ための本です。この現実感がかなり強いです。

また、一人分に特化していることの意味も大きいです。家族向けレシピ本を一人暮らしで使うと、材料の分量も食材の種類も多くなりがちで、結局続きません。本書ではその問題がかなり軽くなっています。食材を使い切りやすく、洗い物も増えにくく、工程の先読みもいらない。だから「料理が得意になる」より前に、「自炊を嫌いにならない」方向へ持っていけます。

さらに、本書は手軽なだけで終わりません。疲れた日の丼、さっと作れる麺、レンジ中心のおかず、ちょっと小腹を満たしたい1品など、生活の場面ごとに使い道を想像しやすいのがよいところです。気合いを出す休日の料理ではなく、平日の夜をどう回すかに焦点があります。だから買ってからの稼働率が高そうです。こういう本は結局、台所の近くに置いて何度も開くことになります。

個人的にうまいと思うのは、「料理をやる人」だけでなく、「食事を抜きがちな人」にも届く設計になっている点です。自炊本の多くは、作ることそれ自体を楽しめる人を暗黙の前提にしています。でも本書は、食事管理が苦手な人や、忙しさで生活リズムが崩れやすい人にも入りやすい。やる気1%という言葉が、怠けの免罪符ではなく、生活を落とさないための最低ラインとして機能しているのが重要です。

類書との比較

「やる気のいらない料理本」は他にもありますが、本書は一人暮らしへの寄せ方がかなり上手いです。大家族向けの手抜き本と違って、量がちょうどいい。食材も使い切りやすい。動画発のレシピらしく、迷いどころが少ない。そのため、料理初心者だけでなく、ある程度自炊してきた人が疲れた時の再起動本として使うのにも向いています。

また、節約本のように我慢を前面に出さない点も強みです。結果として外食やコンビニ頼みを減らせるので節約に効くのですが、出発点は「頑張らないで食べることを維持する」です。この順番だから続きます。生活改善本として見てもかなり優秀です。

一人暮らし向けの本でも、健康管理や栄養管理に寄せた本は少なくありません。それらは役立つ一方、疲れている日に開くと圧になることがあります。本書はそこまで読者に背伸びを求めません。まず食べる。しかも一人分でムダなく回す。その基礎に徹しているので、ほかの本より生活実装しやすいです。

こんな人におすすめ

一人暮らしを始めたばかりの人、料理本を買っても続かなかった人、仕事終わりに自炊が重すぎると感じている人に向いています。きちんと三食を整えたいけれど、毎回それを目標にするとしんどい。そんな人ほど、この本の温度感と相性がいいはずです。

感想

この本のよさは、自炊を意識高い行為にしないところです。毎日しっかり出汁を取ることでも、映える盛りつけをすることでもなく、「今日も一食つくれた」で十分だと思わせてくれる。そこが本当に助かります。一人暮らしでは、食事が崩れると気分も家計も一緒に崩れやすいので、この本の実務性はかなり大きいです。

特に印象に残るのは、料理のハードルを下げることで、生活全体の自己嫌悪まで減らしてくれそうな点でした。料理ができない自分を責めるより、続けられる形へ寄せればいい。本書はその発想を徹底しています。レシピ本でありながら、生活の立て直し本としてもかなり使える一冊でした。

500レシピという数字だけを見ると、情報量が多すぎて使い切れないのではないかと思うかもしれません。ですが、本書は眺めて終わる本ではなく、数ページめくっただけで今夜の一品が決まりやすい本です。だから、料理好きの趣味本というより、冷蔵庫の前で迷う時間を減らすための実用品に近い。一人暮らしで食生活を立て直したい人には、かなり頼れる一冊だと思います。

本の虫達

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    大手出版社で書籍編集を10年経験後、独立してブロガーとして活動。科学論文と書籍を融合させた知識発信で注目を集める。
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    佐々木 健太

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