レビュー
概要
『ふしぎ駄菓子屋 銭天堂 吉凶通り1』は、「願いが叶う(かもしれない)駄菓子」をめぐる短編連作の児童書シリーズです。買いに来るのは、悩みや欲望を抱えた子ども(ときどき大人)。店主・紅子が差し出す駄菓子は、願いを叶える代わりに、使い方を間違えるとしっかり“代償”が返ってきます。
このシリーズの面白さは、説教臭くならずに「選択」と「結果」を描くことです。読後に残るのは「悪い子が罰を受ける」ではなく、「自分ならどうする?」という問い。教育的な題材としても扱いやすい一方で、純粋に物語として読めます。
読みどころ
1) 子どもの“欲望”を否定せずに扱う
子どもの願いは、素直で、ちょっとズルくて、でも切実です。たとえば「うまくなりたい」「注目されたい」「嫌われたくない」。大人が正論で潰すと、子どもは本音を隠します。
『銭天堂』は、欲望を否定せずに、物語として外に出してくれます。ここが親子読書に向いています。感想が出やすいからです。
2) 因果関係を追う練習になる
1話ごとに「何が原因で」「どう行動して」「どうなったか」が明確です。読解が苦手な子でも、筋を追いやすい。
親子で読むなら、読み終わった後にこの1問だけで十分です。
- 「一番最初の選択、どこだった?」
この問いは、反省会ではなく思考の練習になります。
3) “一話完結”で続けやすい
子どもの読書が続かない最大の理由は、途中で止まると再開コストが上がるからです。『銭天堂』は短編連作なので、読み切りの達成感が作りやすい。読書習慣の入口として優秀です。
類書との比較
教訓型の児童書は「正しさ」を押し出しがちですが、『銭天堂』は“正しさ”より“選択の結果”で語ります。これが効きます。子どもは説教を嫌がりますが、物語の結果なら受け取りやすい。
また、怖すぎない不思議さがあるので、ホラーが苦手な子でも読みやすい。一方で「うまい話には裏がある」感覚はしっかり残ります。
こんな子・こんな家庭におすすめ
- 読書が続かない(長編が苦手)な子
- 感想を言うのが苦手な子(問いが立てやすい)
- 欲望や嫉妬など“扱いにくい感情”を話題にしたい家庭
- 親が説教せずに、考えるきっかけを作りたい家庭
親子での活用法(教育っぽくしすぎない)
おすすめは「正解を言わない」読み方です。
- まずは普通に読む(途中で講義しない)
- 読後に質問を1つだけする
- 「自分なら、どのタイミングで止められたと思う?」
- 答えに評価をつけず、「そう思った理由」を聞く
こうすると、物語が“家庭の会話”に変わります。教育的価値は、後から勝手についてきます。
読書が続く家庭の「回し方」
『銭天堂』のような短編は、習慣づくりにも向きます。続けたい場合は、負荷を上げないのがコツです。
- 1回の読書を10分で切る(途中で止めてもOK)
- 週末にまとめ読みをしない(“特別イベント”にしない)
- 本棚の取りやすい場所に置く(探す手間をゼロにする)
継続は内容より、設計で決まることが多いです。
注意点:怖がりな子には“味付け”を調整する
『銭天堂』は基本的に子ども向けですが、話によっては「思ったより怖い」「後味が苦い」と感じる子もいます。その場合は、無理に読み進めず、次のどれかで調整するのがおすすめです。
- 昼間に読む(夜の不安を増やしにくい)
- 1話の途中で止めない(気になる場面で切らない)
- 読後に“安心の一言”を置く(例:「大丈夫、これはお話だよ」)
怖さを避けるより、怖さを扱える形にするほうが、長い目ではプラスになります。
感想
この本を読んで印象に残ったのは、紅子が子どもを裁かないところです。駄菓子を渡すときに条件は出すけれど、最後に決めるのは本人。だから、読み終えた子どもも「自分で選ぶ」感覚を持ち帰れます。
教育は、正しいことを教えるだけではなく、選択の結果を想像できるようにすることだと思います。『銭天堂』は、その練習を“説教なし”でやってくれる。親としては、それがいちばん助かります。
読書が苦手な子でも入りやすいので、家庭の本棚に1冊置いておくと、ふとしたタイミングで開いてくれる本です。まずは1話、そこからで十分だと思います。
もし親子で読み始めるなら、最初は「面白かったところを1つ言う」だけで十分です。深い反省や教訓は、続いたあとに自然と出てきます。