『週刊東洋経済 2025年9/13 20合併号(最高値相場で勝ち抜く株)』レビュー
著者: 週刊東洋経済編集部
出版社: 東洋経済新報社
¥880 Kindle価格
著者: 週刊東洋経済編集部
出版社: 東洋経済新報社
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『週刊東洋経済 2025年9/13・20合併号(最高値相場で勝ち抜く株)』は、相場が盛り上がっている時ほど役立つタイプの特集です。日経平均が史上最高値を更新し、日本株への期待が高まっている、という前提から入ります。ただし、テンションを上げるだけでは終わりません。紹介文に並んでいるのは、「最高値相場で勝ち抜く」というテーマに対して、どうやって銘柄候補を絞り、どんな条件で点検するか、という実務寄りの材料です。
この号の核は、『会社四季報』秋号の独自予想を先取りしつつ、ランキングで“拾い方”を提示している点です。上方修正、進捗率、減配なし高配当、キャッシュリッチで割安、設備投資を増やして増収が続く企業、といった切り口が用意されています。相場の勢いに乗りたい人がやりがちな失敗は、話題だけで飛びついて、根拠が薄いまま握ってしまうことです。ランキングがあると、まずは候補を「理由つき」で並べられる。その上で、自分のリスク許容度に合わせて落としていけます。
また、「秋号で見つけた有望テーマ株70」といった形で、テーマという入口も用意されているのが良いです。個別銘柄の分析は時間がかかります。テーマを先に押さえると、ニュースで見た材料が“点”で終わりにくい。さらに、ストラテジストの分析として「日本株は持続か、調整か」といった視点や、9月FOMCの読み方が入るので、銘柄選びがマクロと切り離されにくくなっています。
個人的に好きなのは、親子上場の解消に関する論点が入っている点です。市場改革の流れは、ニュースとしては知っていても、投資判断に落としにくいテーマです。こういう“制度側の変化”は、銘柄の成長性とは別のところで株価に効くことがあります。週刊誌フォーマットで追えるのは、強みだと思います。
紹介文には、個人投資家の視点として「億り人のkenmoさんが今注目する10銘柄」も載っています。さらに、「『株式ウイークリー』編集長が注目する『上昇率50%』を目指す厳選4銘柄」もあります。
ここは、読み手の受け取り方が分かれるところです。銘柄名だけを拾うと、結局は“誰かの推し”へ乗っかってしまいます。一方で、背景にある条件や考え方を抜き出せば学びになります。たとえば「上方修正額」「進捗率」「減配なし」といった条件のどれを重視しているかを見て、自分のルールと照らす。そうやって読むと、特集の寿命が伸びます。
「利下げ局面は成長株を狙え」といった米国市場の見立ても、最高値相場のメンタル管理に効きます。日本株だけを見ていると、どうしても国内ニュースに感情が引っ張られます。米国の金融政策と市場の空気を並べると、目線が一段引ける。最高値圏で必要なのは、興奮より俯瞰です。この号は、その俯瞰の材料が多いと感じました。
第2特集の「本当にすごいNPO」や、深層リポートの「ウナギの悲鳴」も、この雑誌の価値を底上げしています。投資特集だけだと、どうしても目が“利回り”に寄りがちです。でも社会課題や規制の話を同じ号で読むと、経済の見方が一段立体になります。株の情報だけを摂取するより、判断の軸が育ちます。
第2特集は、現場で奮闘するNPOの実像に加えて、収入規模、助成金、寄付+会費、事業収益などのランキングがある、と書かれています。NPOを知る時にありがちな罠は、「良いことをしている」という感情だけで理解した気になることです。資金の流れを見ると、活動の持続性が見えてきます。経済誌の切り口でNPOを読むと、社会貢献と経営の両面がつながって理解しやすいです。
深層リポートのウナギも同じで、単なる食の話では終わらないはずです。調達、規制、国際条約、行政判断。こうした要素が絡むテーマは、投資にも間接的に効きます。読む対象を株式だけに限定しないほうが、結果として投資の精度が上がる。そういう雑誌の使い方ができる号です。
投資の類書には、月刊の投資誌や、投資スタイルを解説する本があります。月刊は腰を据えた解説が強い一方で、相場の転換点に対する即応性は落ちます。投資本は普遍性が強い反面、銘柄選定の入口は自分で作らないといけません。
本号は、その中間にあります。週刊らしく、直近の相場環境を前提にしつつ、ランキングとテーマで入口を用意する。つまり、「今、何を点検すべきか」を提示してくれます。最高値圏の怖さは、買う理由が“上がっているから”になりやすいところです。この号は、買う理由を言い換える材料が多い。そこが類書との差です。
一方で、週刊の弱点もあります。情報の鮮度が高い分、読み終えた瞬間から古くなる部分が出ます。だからこそ、ランキングを眺めて終わりにせず、「どういう条件で候補を出しているか」を自分のチェックリストに移すと、価値が長持ちします。
相場が強い時期ほど、言い訳で売買が荒くなります。この号は、言い訳を減らして判断を整えるための“道具箱”として使える特集だと感じました。