『骨格筋肥大のサイエンスとトレーニングへの応用』レビュー
出版社: ナップ
¥5,821 Kindle価格
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Brad Schoenfeldの『骨格筋肥大のサイエンスとトレーニングへの応用』は、筋肉の発達に関する分子レベルの研究から実践的なトレーニングプログラムまでを一冊でつなげる構成です。科学的エビデンスを丁寧に整理し、それを日本語で再構築した後藤勝正による翻訳/解説の文脈も加わることで、理論を自分のトレーニングに落とし込めるようになっています。
本書の骨格は、筋肥大に関する研究を「キーポイント」として章ごとに要約し、トレーニング実践に直結するアクションに落とし込んだ点です。例えば「筋肥大の原理」を語る章では、筋繊維の損傷・炎症・修復というプロセスを順を追って説明し、その後に「どこまで追い込むべきか」「筋肉が回復するまでの食事・休息の組み立て方」を提示します。
各章の最後には「キーポイント」と題した要点があり、科学的根拠をまとめた上で指導者・実践者へのアドバイスへと誘導する構成は、段階的に知識を重ねていける仕掛けになっています。筋肥大のプランニングでは、体格・経験・疲労度を入力できるチェックリストを用いて適切な負荷設定やレップレンジを選ぶよう促します。
同じ筋トレ領域で評判の高い『科学的トレーニングの極意』はエビデンス重視の解説をする点で共通しますが、こちらはプログラム設計に焦点を合わせるため、理論からの転回がやや急です。それに対し本書は、分子から実践への橋渡しに時間をかけ、キーポイントとアプリケーションを繰り返す構成によって、筋肥大がなぜ成り立つのかという納得感を高めます。また、Schoenfeldの著作の中でも肉体改造に至るまでの「なぜ筋肉は大きくなるのか」への掘り下げが深いところに特徴があり、現場で俗説の選別をしながら指導するうえでも頼れる材料を提供します。
Schoenfeldが何度も繰り返す「肥大は単なる重量の問題ではない」というメッセージは、読者のプログラム考案能力を育てるうえで好都合です。章末に設けられたキーフレーズのリピートと、練習問題のような短い設問が集中力を高め、膨大な理論量にありがちな読了後の脱力感を抑えています。翻訳も自然で、後藤氏が日本国内のトレーナーとして使える実例も付随しているので、国内クライアントへの説明にもそのまま使えるほど実用性が高いです。