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レビュー

概要

『書くだけで人生が変わる自己肯定感ノート』は、自己肯定感を理屈で学ぶ本というより、書く行為を通して心の扱い方を整えていく実践書だ。自己啓発書の中には「もっと前向きに」「自分を好きになろう」と結論だけを急ぐものも多いが、本書はそこを飛ばさない。今の気分、考え方の癖、うまくいったこと、しんどかったことを紙に出すことで、頭の中で膨らみ続けていた自己否定を少しずつ整理していく。

特徴は、書く内容を難しくしすぎないところにある。長文の日記を書く力は要らないし、立派な結論も必要ない。今日の感情、できたこと、引っかかった言葉を短く書くだけでも意味がある、という立場を取るので、自己肯定感という言葉に身構えてしまう人でも入りやすい。実際、自己肯定感が低いときほど、自分を深く分析するより先に「今の自分を雑に責めすぎていないか」を見直すほうが効く。本書はその入口としてかなり使いやすい。

読みどころ

読みどころは、書くことを単なる感情の吐き出しで終わらせず、見方を変える装置として使っている点だ。落ち込んだ出来事をただ反すうするのではなく、「何が起きたか」「自分はどう受け取ったか」「本当はどう声をかけたいか」を順番に整理すると、感情と事実が少しずつ分かれてくる。この切り分けができるだけでも、自己否定の勢いはかなり弱まる。

また、本書は自己肯定感を大きな達成で作るものとして扱わない。むしろ、小さくできたこと、助かったこと、安心できた瞬間を拾う習慣を作る。自己評価が不安定な人は、うまくいかなかった一件でその日全体を失敗扱いしがちだ。本書のように「今日ちゃんとできたこと」を書いて残すやり方は、そうした極端な見方を和らげるのに向いている。

ノート形式の本として見ても、使い方の自由度が高い点は良い。毎日全部埋める必要はなく、気になる問いだけ使ってもいい。こうした余白があるので、三日坊主になりやすい人でも再開しやすい。完璧に続けることより、途中でやめてもまた戻れることのほうが、こういう本では大事だと思う。

さらに、本書は「書くことそのものが自己対話になる」という感覚を掴ませてくれる。誰かに励まされるのを待つのではなく、自分で自分の状態を確認し、少しずつ言葉を整えていく。その過程が積み重なることで、外からの評価に揺れすぎない土台ができていく。ノートを使う意味がそこまで落とし込まれているのは大きい。

類書との比較

自己肯定感についての本は多いが、読むだけで終わりやすい本も少なくない。その点、本書は「分かった気になる」で止まりにくい。ノートに書くという行動が必ず挟まるので、読後に何をすればいいかが明確だ。理論中心の本より取りかかりやすく、ワークブックほど窮屈でもない。この中間の距離感が使いやすい。

また、ポジティブ思考の本と比べると、無理に明るくなる方向へ持っていかないのも特徴だ。「落ち込まない人になる」より、「落ち込んだときの扱い方を覚える」に近い。だから、前向きな言葉にかえって疲れてしまう人にも合いやすい。自己肯定感本としては、勢いより継続性を重視した一冊だと思う。

似たテーマの本の中には、理想の自分像を先に掲げてそこへ近づく方法を説くものもある。本書はむしろ逆で、今の自分の状態を見つめるところから始める。この順番の違いは大きい。土台が不安定なまま理想像を積み上げるのではなく、まず足場を作るので、読み終えたあとに無理が残りにくい。

こんな人におすすめ

  • 自分を責める癖が強く、考えが頭の中で堂々巡りしやすい人
  • 自己肯定感の本を読んでも、実際に何をすればいいか分からなかった人
  • 日記やメモを心の整理に使いたいが、自由すぎると続かない人
  • 大きく変わるより、毎日の見方を少しずつ整えたい人

感想

この本を読んでいちばん良かったのは、「自己肯定感を高くしなきゃ」という焦りを弱めてくれるところだ。自己肯定感が低いと感じている時期は、それ自体がすでにプレッシャーになっていることが多い。本書は、まず今の自分の状態をそのまま書いてみることから始めるので、読みながら息苦しさが少ない。

書くことで見えてくるのは、立派な自己分析ではなく、自分がどこで無駄に厳しくなっているかだと思う。少し失敗しただけで全部だめだったと決めつける、自分にはできていないことばかり数える、他人の反応を必要以上に悪く受け取る。そういう癖は、頭の中だけではなかなか捕まえにくい。紙に出すと、思っていた以上に極端なことを自分に言っていたと気づける。本書の効き目はそこにある。

もちろん、この一冊で劇的に性格が変わるわけではない。ただ、落ち込んだ日の回復が少し早くなる、できたことを見つける視点が育つ、という変化は十分期待できる。自己肯定感を高める本というより、自分を雑に扱わない練習をする本として読むとしっくりくる。

仕事や人間関係で消耗しやすい人ほど、こういう小さな整理の習慣が効く。読むだけで元気になる本ではないが、書きながら少しずつ土台を作る本として、かなり実用的だった。

特に、他人から見れば十分やれているのに、自分の中ではいつも減点方式になってしまう人には相性がいい。頭の中だけで反省会を続けていると、自分にかける言葉はどんどん荒くなる。本書のように紙に出して整理すると、その荒さに自分で気づける。そこから見え方が変わる、という意味で効果の出方が静かだが確かだ。

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