レビュー
概要
トロントの肥満ホルモン研究で世界的な注目を集めるジェイソン・ファン医師が、「体重の設定値」が高いから太るという最新の仮説を示す日本語版。肥満ホルモン(インスリン)と食事の頻度に焦点を当て、血糖が上りっぱなしのライフスタイルを変えることで「太らないカラダ」を取り戻すという主張を、具体的なケースと統計とともに脈絡立てて説明する。
読みどころ
「食事の回数を減らすこと」が、量や内容よりも重要という提起から本書が始まる。インスリンが分泌されるたびに体は脂肪を蓄える状態になるため、常に満腹状態に近い現代人はホルモンの設定値を高めてしまい、リセットが効かなくなるという。ファン医師は「太らない睡眠時間」「太りにくいおやつ」「枝豆で糖を排出」など、日常の小さな行動を具体的に示しながら、長年の患者データをもとに減量成功のモデルを提示する。特に、朝食を抜いて夕食を少し早くするなど、無理なく食事回数を減らすステップや、インターミッテント・ファスティングにおける「飢えの波」を乗り切るときの心得が説得力をもって伝わる。
類書との比較
マイケル・モズリー『The Fast Diet』や『Delay, Don’t Deny』が断食の時間枠を紹介する中で、本書は肥満ホルモンの生理学を丁寧に解説し、「設定値を下げる」という概念を加えた点で独特。『Losing Weight Is Killing You』のような低脂質一辺倒と違い、糖質制限をしなくても食事の間隔を空けるだけでインスリン濃度を下げることができることを示し、同じジェイソン・ファンの『The Obesity Code』と合わせて読むと相乗効果がある。
こんな人におすすめ
ダイエットジプシーに終止符を打ちたい人、食事の内容は改善できないが時間帯だけなら調整できる人にとって実践しやすい。特に「軽く間食しておけばいい」と思っている人は、インスリンが常に高い状態となりやすいことに気づかされるだろう。ただし、持病などで断食が難しい人は医師と相談しながらステップを踏むべきである。
感想
「食べることを我慢しろ」ではなく、ホルモンの時間を設計することで自然に体重が下がっていくという視点が新鮮だった。臨床例も交えつつ、日本人の食卓に合わせた食事回数のマネジメントを提示しているため、理論書にありがちな一般論に終わらず現場感がある。眠気やイライラとの付き合い方、飲み会の過ごし方のような日常的な工夫が多く、結果的に習慣が変わることで体重の設定値が下がり、リバウンドの恐怖から解放されやすくなる。