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レビュー

概要

『生命とは何か-物理的にみた生細胞』は、量子力学を打ち立てた物理学者シュレーディンガーが、「生命」を物理の言葉で捉え直そうとする古典です。
岩波文庫版は7章+エピローグ構成で、「遺伝のしくみ」「突然変異」「秩序とエントロピー」などを軸に、当時の科学の地平から生命の本質へ迫ります。

この本の面白さは、生命を神秘で逃がさないのに、乱暴に単純化もしないところです。
物理学の枠組みで語ろうとするほど、むしろ「生き物は情報をどう扱っているのか?」が際立ってきます。

読みどころ

1) 章立てが、そのまま思考の階段になっている

第1章は「古典物理学者はどう近づくか?」という入り口で、いきなり結論を言いません。
そこから「遺伝のしくみ」「突然変異」を経て、第4章で「量子力学によりはじめて明らかにされること」へ進みます。

この段取りがあるから、読者も置いていかれにくいです。
難しいのに、読み進めるほど論点が整理されます。1回で全部理解できなくても、何を考えている本なのかは掴めます。

2) 「秩序、無秩序、エントロピー」の章が、現代でも刺さる

第6章のテーマは、秩序とエントロピーです。
生命はどうやって秩序を保つのか、という問いが立ち上がると、ダイエットや健康の話とは違う意味で「体って何だろう」と考えたくなります。

この本は、生命が“物理法則に従っているのか”という直球の問いも投げます(第7章)。
読んでいると、科学の話なのに、哲学っぽい空気が濃くなっていきます。

3) エピローグが、科学の本なのにやけに人間くさい

最後に「決定論と自由意思について」が置かれているのが面白いです。
生命を物理で語りながら、最終的に人間の意志の話へ触れる。この飛び方が、むしろ誠実だと感じました。

科学は、説明できるものを増やします。
でも説明が増えるほど、「じゃあ、私たちはどう生きるのか?」の問いも増える。エピローグは、その余韻を残します。

章のテーマをざっくり押さえる(読みながら迷子にならない)

章タイトルが、かなり親切です。
内容も、見出しに沿って読めば筋道を追えます。

  • 第1章:古典物理学のアプローチ
  • 第2章:遺伝のしくみ
  • 第3章:突然変異
  • 第4章:量子力学で見えること
  • 第5章:デルブリュックの模型の検討
  • 第6章:秩序・無秩序・エントロピー
  • 第7章:生命は物理法則に支配されるか
  • エピローグ:決定論と自由意思

「遺伝」から「量子力学」へ、さらに「秩序とエントロピー」へ進む流れが、生命を“物質と情報”として見る視点につながります。
この流れが腑に落ちると、1冊の中で話題が飛んでいるように見えて、実は同じ問いを別角度から掘っていることが分かってきます。

この本の読み方(難しいけど、面白さは逃げない)

正直、文庫で読むには密度が高いです。
ただ、難しさの多くは「言葉の硬さ」と「前提知識」にあります。章タイトルに沿って「今は遺伝の話」「次はエントロピーの話」と位置づけながら読むと、迷子になりにくいです。

そして、この本は“今の常識”を教える教科書ではありません。
当時の科学の枠で、生命をどう捉えようとしたか。その試み自体が価値です。読めば読むほど、科学の面白さが「正解」ではなく「問い」にあると分かります。

「名著」と呼ばれる理由(生命を“情報”として見せた)

この本は、今読むと古い前提もあります。
それでも読み継がれるのは、「生命を物理で説明する」という無茶な挑戦が、結果的に“情報”の視点を強く浮かび上がらせたからだと思います。

遺伝の章を読んだあとに、第4章で量子力学の話へ行くと、急にスケールが変わります。
でもここで言いたいのは、生命が不思議だから量子、と短絡することではありません。物質の安定性や変化の確率の話が、遺伝の話へつながっていく。そのつなぎ方が、この本の面白さです。

第6章のエントロピーの話も、読後に残ります。
生命が秩序を維持するために何をしているのか、という問いは、現代でも色あせません。読んだあと、体や環境を見る目が少し変わります。

こんな人におすすめ

  • 生命科学の入口を、物理の視点から覗いてみたい人
  • 「エントロピー」や「秩序」という言葉にピンとくる人
  • 1冊で知識より思考の刺激が欲しい人

感想

この本は、読み終わった瞬間にスッキリするタイプではありません。
むしろ「分かったようで分からない」が残ります。でも、その残り方が気持ちいい。生命の話を読んでいるのに、自分の頭の使い方が変わっていく感覚があります。

章立てが明確なので、気になるところから読み返しやすいのも助かりました。
古典なのに、問いの立て方が今っぽい。そういう意味で、長く読み継がれる理由が分かる1冊です。

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    佐々木 健太

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