レビュー
概要
『東京卍リベンジャーズ』1巻は、人生がうまくいかない26歳の花垣武道(タケミチ)が、ある事故をきっかけに中学時代へタイムリープし、かつての恋人・橘日向(ヒナタ)の死を変えようとする導入巻です。
ヤンキー漫画の熱さと、サスペンスの緊張が同居していて、読み始めから「この先どうなるの?」が止まりません。
1巻の良さは、主人公が最初から強くないことです。
むしろ弱い。ビビる。殴られる。逃げたい。でも、逃げたままだと誰かが死ぬ。その状況へ追い込まれたとき、情けないまま踏ん張る姿が、物語の推進力になります。
読みどころ
1) タイムリープの条件が、ドラマを生む
ただ過去に戻れるだけなら、やり直しは簡単に見えます。
でも本作は、現代と過去が“つながっている”感覚が強いです。過去での小さな行動が、現代の結果に直結する。しかも、戻った先の過去は自分のトラウマど真ん中。だからこそ、1回の選択が重いです。
2) 「日向を救う」が、具体的な目標として立つ
タイムリープものは、目的がぼやけると急に冷めます。
でも1巻は、ヒナタの死という一点がはっきりしているので、読者の感情が迷いません。恋愛の甘さより、失ったものの大きさが先に来る。その順番が、導入として強いです。
3) 東卍のトップ層が、圧倒的に“怖いのに魅力的”
佐野万次郎(マイキー)と龍宮寺堅(ドラケン)。
この2人の登場で、作品の空気が一段変わります。暴力の世界にいるのに、カリスマがある。優しさと危うさが同時に見える。タケミチが「この人たちと関われば未来が変わる」と直感するのも納得できます。
1巻の具体的な面白さ(弱さが、覚悟に変わる瞬間)
タケミチは、いわゆる“主人公補正”で勝ちません。
1巻の段階では、殴られて泣いて終わりそうな場面が何度もあります。それでも、「ここで引いたらまた同じだ」という気持ちが立ち上がってくる。負け癖を持った人間が、負け癖のまま一歩踏む。その描き方がリアルで刺さります。
さらに、過去に戻ったことで、かつての仲間たちの関係も見え方が変わります。
当時はただのヤンチャだったはずの空気が、未来では悲劇につながっている。そのギャップが、読者にだけ見える恐怖になります。1巻はその恐怖を、丁寧に積み上げます。
導入としての強さ(「戻った先」が最悪の思い出)
タケミチが戻るのは、キラキラした青春ではありません。
中学の頃に味わった屈辱、暴力、上下関係。そこへもう一度放り込まれて、「今度こそ変える」と言われても、普通は無理です。だからこそ、読者の側も「うまくいく」と信じ切れない。その疑いが、サスペンスとして効いてきます。
そして、助けたい相手が“恋人”であるのもポイントです。
家族や友人ではなく、過去の恋人。距離があるからこそ、失ったときの後悔が強い。1巻は、タケミチの後悔をきれいに美化しません。情けなさと執着の両方がある。その混ざり方がリアルです。
先が気になる理由(敵が強いより、状況が怖い)
1巻を読んで怖いのは、敵の強さだけではありません。
誰が何をきっかけに狂うのか、まだ見えないところです。未来の悲劇は、派手な悪意だけで起きない。小さな選択の積み重ねで起きる。そういう嫌な現実が、タイムリープ設定と相性が良すぎます。
1巻の“武器”は、強さじゃなく「諦めない」こと
タケミチにあるのは、腕力や頭脳ではありません。
それでも、未来を知ってしまった以上、放っておけない。日向の弟・直人と手を組むことで、過去と現代の情報がつながり、行動の精度が少しずつ上がっていきます。1巻はその“組み方”の入口を見せてくれるので、続きを追う理由がきれいに残ります。
そして、やり直しは気持ちいいだけではないと分かるのも良いです。
過去に戻るほど、過去の自分の弱さも見える。だからこそ、覚悟が生まれる。1巻は、タイムリープものの甘さを最初から削ってくる導入でした。
こんな人におすすめ
- タイムリープものが好きで、サスペンスも欲しい人
- 強くない主人公が、泥臭く成長する話が好きな人
- ヤンキー漫画の熱量と人間ドラマを両方味わいたい人
感想
1巻は、作品の“痛みの基準”を読者に教える巻だと思いました。
この世界では、選択を間違えると人が死ぬ。その重さがあるから、タケミチの小さな勇気が大きく見えます。
読み終えたあとに残るのは、「次は勝てるのか」より、「次は踏ん張れるのか」です。
強さより覚悟を見たくなる。1巻は、その見守りたさを作る導入として、かなりうまいスタートでした。
タイムリープ設定があるのに、読後の後味が甘くないのも好きです。
過去へ戻るほど、取り返しのつかない現実が積み上がる。だから「救う」と言うのが簡単じゃない。1巻の時点で、その難しさをきちんと見せてくれるのが信頼できます。